欧州委、AIに関する方針を発表
(EU)
ブリュッセル発
2018年04月27日
欧州委員会は4月25日、人工知能(AI)に関して、投資促進とAIがもたらす社会変化に対する対応、倫理ガイドラインの策定の3点から成る方針を発表した。欧州委は、欧州には世界トップクラスのAI研究者や研究機関、スタートアップ企業があり、AIの活用が期待されるロボットや運輸、医療、製造業にも秀でていると指摘。しかし、激しいAI開発の国際競争で勝ち残るには、EUとして協調した取り組みが必要だと強調した。発表の主なポイントは次のとおり。
- 欧州委は、AIの研究開発促進に向けて、2020年までに官民で少なくとも200億ユーロの投資拡大が必要と指摘。研究開発支援枠組み「ホライズン2020」の下での2018~2020年のAIへの出資を15億ユーロに拡大し、官民からの関連研究開発への投資拡大を図る。また、欧州戦略投資基金(EFSI)を利用し、スタートアップ企業などのAI分野への投資を支援する。加えて、AI技術の「原材料」であるデータの再利用やデータシェアリングをより容易にするための法整備を進め、投資促進のための環境を整備する。
- AIの導入により、雇用創出が期待される一方で、喪失される雇用や業務内容の変化も予想される。欧州委は、AI関連人材をEUに引き付け、また、とどめるための産業界と教育機関の連携を支援し、欧州社会基金を利用したAIに関する訓練制度の設立などに取り組む意向だ。また、EUの2021年以降の次期中期予算枠組みに、AIを含む先進的なデジタル・スキルの訓練への支援強化を盛り込む方針だ。
- AIの導入により、法的責任の所在など、新たな倫理的・法的な問題が生じ得る。欧州委は、個人データ保護や透明性などの基本原則を考慮した、EU基本権憲章に基づくAI開発に関する倫理ガイドラインを2018年末までに発表する方針だ。また、2019年半ばをめどに、技術の進展に合わせた製造物責任に関する指令の解釈ガイドラインを作成する予定だ。
(村岡有)
(EU)
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