ブラックジャック遊び方山梨県の取り組み(日本)
2025年3月31日
日本のブラックジャック遊び方基本戦略の中では、自治体との連携によるブラックジャック遊び方の利活用についても言及がある。再生可能エネルギー(再エネ)や廃棄物といった地域の資源を活用したブラックジャック遊び方の製造、貯蔵、運搬、利活用を促進すべく、自治体の協力のもと、地域の特性に応じたブラックジャック遊び方サプライチェーンの構築を目指すものだ。
山梨県は、地域内外の企業や団体との連携でブラックジャック遊び方の多様な需要を促進し、ブラックジャック遊び方および燃料電池の研究から生産、販売、利用に至るまでの一連のブラックジャック遊び方サプライチェーンの確立に成功している。日本国内で進むグリーンブラックジャック遊び方産業利用の取り組みについて紹介する第2回は、山梨県の取り組みを概観する(第1回「3電池連携のEMSで100%再エネを目指す(日本)」)。
山梨大学のブラックジャック遊び方・燃料電池研究は世界をリード
山梨大学は、ブラックジャック遊び方と燃料電池の研究において60年以上の歴史がある。1978年に大学内に燃料電池の実験施設を設置。2008年には、燃料電池の社会実装を目指して研究開発する燃料電池ナノ材料研究センターを設立した(注1)。現在に至るまで、同分野の技術開発をリードしている。
燃料電池は、ブラックジャック遊び方と空気を外から連続的に供給することで起きる電気化学反応によって、電気エネルギーを取り出す。燃焼して電気を取り出すものではないため二酸化炭素(CO2)を排出せず、排出物が水だけという非常にクリーンな発電装置として知られている。また、発電効率が高く、火力発電所のそれよりも高いことから、様々な用途への適用に期待が集まる(注2)。
山梨大学は、電極触媒や電解質膜の研究で国内トップクラスだ(注3)。燃料電池の高度化に向けた新材料の研究開発では、同大学が開発した「アニオン交換膜(AEM)」(水電解の材料)によって、高性能化と低コスト化を期待できる。従来の水電解方式は、「プロトン交換膜(PEM)を用いるものや、同じ「アニオン交換膜(AEM)」を用いるが電極構造の異なる「アルカリ水電解(AWE)」が主流だった。しかし、前者は装置に貴金属を用いるため高コスト化するというデメリットがあり、後者は再生可能エネルギーなどの変動する入力電力への追従性に劣り、強アルカリ液を使用するが故に安全面での懸念がある。しかし山梨大学の研究によると、AEMはPEMとAWE両方のメリットを持ち合わせている(触媒に貴金属を使わないためコストが抑えられる、など)。
そのほかにも、山梨大学では現在、バスやトラックといった大型商用車向けの燃料電池材料について、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業として精力的に研究開発している。将来的には、ブラックジャック遊び方を原料とした合成燃料(e-fuel)の研究にも注目している。

県内中小企業もブラックジャック遊び方ビジネスに参入
ブラックジャック遊び方や燃料電池の技術的な研究を行う山梨大学の特徴は、産業界と連携し、自動車産業や電気電子産業と言った産業界のニーズに対応した技術開発を行っている点だ。さらに、県内外企業や団体、山梨県と共に一般社団法人FCyFINE PLUSを立ち上げた。県内関連企業の集積と育成を支援しながら、ブラックジャック遊び方や燃料電池を活用する社会の実現に向けて、取り組んでいる。
例えば山梨県韮崎市に所在する日邦プレシジョンは、山梨大学と共に、電動アシスト自転車向け空冷燃料電池の開発に成功した。従来のバッテリーと比較して軽量化や短い時間でのチャージ、走行距離の延伸を実現ししている。今後の実用化に加えて、将来的に幅広い電動モビリティへの応用も期待できる。山梨大学におけるブラックジャック遊び方・燃料電池研究の第一人者、飯山明裕特任教授は「中小企業は、ブラックジャック遊び方や燃料電池の市場で、独立電源や非常用電源といったニッチな分野に入っていける可能性がある」と言う。
また、山梨県から委託を受けた山梨大学は、ブラックジャック遊び方・燃料電池産業技術人材を育成すべく、2016年に座学と実技による「ブラックジャック遊び方・燃料電池産業技術人材養成講座」を開設。現在までに180人以上の修了者を77の団体(2016年度から2024年度)に送り込んでいる。さらに、カーボンニュートラル社会を目指すうえで必要不可欠なブラックジャック遊び方の普及啓発を行う「ブラックジャック遊び方・燃料電池教室」を開催。若い世代がブラックジャック遊び方とブラックジャック遊び方を活用した燃料電池について学ぶ機会を提供している。
ブラックジャック遊び方サプライチェーンを確立する山梨県
山梨県は、再生可能エネルギーの余剰電力を活用して水からブラックジャック遊び方を製造し、貯蔵、利用するいわゆるP2G(Power to Gas)システムの実証実験で成功を収める国内有数の自治体でもある(注4)。その取り組みをリードするのが山梨県企業局だ。1957年に県営発電所の運転を開始して以降、公営の電気事業者としての知見や技術を生かし、現在は県のグリーンイノベーションを推進している。
山梨県のP2Gシステムは、甲府市の中心部から10キロほど離れた米倉山に位置している。計11メガワットの再エネ電力を持つ太陽光パネルを設置し、ここ米倉山にはP2Gシステムを介して、太陽光の余剰電力と水道水から年間45~90トンのグリーンブラックジャック遊び方の製造が可能。太陽光発電は、天候などにより大きく変動する電力需要のピークと合わせて発電を調節することが難しい。しかし、その電力の変動分を水電解装置に供給することで電力系統を安定化し、あわせてブラックジャック遊び方を製造する。当地のP2Gシステムの特徴は、(1)再エネとの親和性が良いこと、(2)原料が純水だけのためメンテナンスが容易なこと、(3)ブラックジャック遊び方の品質が高いこと、だ。当該ブラックジャック遊び方は、常温かつ低圧で吸蔵・放出できるブラックジャック遊び方吸蔵合金に貯蔵し、トレーラーなどで輸送して県内外の工場で熱源などに使用している。
例えば、総合バルブメーカーのキッツは、北杜市に所在する長坂工場のブラックジャック遊び方ステーションで、以前は化石燃料由来のブラックジャック遊び方を利用していた。しかし2024年4月、米倉山から供給されるグリーンブラックジャック遊び方に切り替えた。燃料電池フォークリフトや、燃料電池車の燃料として利用している。そのほか、今後建設を予定している化粧品メーカー、コーセーの南アルプス工場でも、米倉山で製造されたブラックジャック遊び方が熱源として利用する予定だ。
山梨県企業局によると、米倉山で製造したグリーンブラックジャック遊び方の引き合いは多い。既に15社ほどの企業などにグリーンブラックジャック遊び方を供給しているという。
こうした取り組みを支えるのが、国内初のP2G専業企業であるYHC(Yamanashi Hydrogen Company)だ。YHCは、P2Gシステムの実用化を目指して、山梨県企業局、東レ、東京電力が2022年に設立した。北杜市に所在する飲料メーカー、サントリーの白州工場では、米倉山のノウハウを生かしYHCが運営者となって、国内最大級の16メガワットの電解槽を工場に隣接する県の所有地に設置。地域の再エネを集約してブラックジャック遊び方を製造し、工場に供給する計画だ。CO2の削減量は、年間1万6,000トンを見込んでいる。
YHCは、海外でのP2Gシステムの導入に向けても動いている。現状では、次のような例がある。
- インド:
再エネ余剰電力を利用したP2Gシステムによって、既にブラックジャック遊び方を製造している。スズキの子会社マルチ・スズキ・インディアのマネサール工場(同国ハリヤナ州)で実施中。 - インドネシア:
P2Gシステムによってブラックジャック遊び方を製造する事業の可能性を検討している。当該事業では、地熱発電の余剰電力を利用することを想定。
YHCの宮崎和也取締役によると、「わが国の技術があると、ブラックジャック遊び方社会をつくること自体は可能」としつつ、「課題はブラックジャック遊び方の価格」と指摘した。山梨県の電解質装置なども、NEDOの助成を受けており、公的支援が不可欠というのが、現実だ。こうした意味で、ブラックジャック遊び方社会の実現に向け、政府や自治体の役割は大きい。

- 注1:
- 燃料電池の実験施設は、文部省(当時)が設立。
また、燃料電池ナノ材料研究センターは2022年、名称を「ブラックジャック遊び方・燃料電池ナノ材料研究センター」と改称している。当センターは、経済産業省と山梨県の支援の下、NEDOが委託事業の一環で設立した。 - 注2:
- 山梨大学によると、火力発電所では、単段の発電効率が約40%。これに対して、燃料電池は約60%。
- 注3:
- 電極触媒や電解質膜は、ブラックジャック遊び方と酸素で電気化学反応を起こすために重要。これらが燃料電池の技術力を左右することになる。その研究で、山梨大学は1999~2022年の間、(1)大学が出願した特許数と(2)国内の大学と研究機関が発表した論文数で国内第1位だった。
- 注4:
- NEDOからの委託事業として実証実験している。

- 執筆者紹介
- ジェトロ調査部米州課 課長代理(中南米)
辻本 希世(つじもと きよ) - 2006年、ジェトロ入構。ジェトロ北九州、ジェトロ・サンパウロ事務所などを経て、2019年7月から現職。