世界のクリーン水素プロブラック ジャック オンラインクトの現状と課題コスト削減と需要創出への取り組み
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2024年10月25日

前編では、ブラジルにおいてグリーン水素関連プロブラック ジャック オンラインクトが相次いでいる現状を概説した。そうした中、水素生産コストの高騰やオフテイカー(引き取り手)の不在といった課題が多い中で、政府への期待が大きいことが明らかになった。後編では、政府による水素生産コスト削減に向けたを支援と、今後の水素需要形成先に向けた議論についても報告する。

連邦政府、水素の取引要件と生産投資コスト削減を支援

連邦政府は水素生産の拡大に取り組んでいるが、グリーン水素だけでなく、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)を組み合わせた天然ガス由来のブルー水素や、メタン熱分解によるターコイズ水素など、あらゆる低炭素水素を支援する方針だ。鉱山エネルギー省(MME)傘下のエネルギー調査会社(EPE)公式サイトでは「すべての色が重要。いわゆる『虹色』水素戦略が必要」と明言しており、政府も「グリーン水素」ではなく「低炭素水素」という表現を多用している。

MMEは2022年6月23日、傘下の国家エネルギー政策評議会(CNPE)決議6/2022号により「国家水素戦略」(PNH2)を策定し、2023年8月には「2023年~2025年ワーキングプラン」を発表した。また、MMEは2021年7月、ドイツ連邦経済協力開発省と連携し、ブラジルにおける水素生産の可能性を探る研究・調査プログラム「H2ブラジル」を開始した。さらに、財務省は2024年6月27日、グリーン水素研究を強化するため、欧州最大の応用科学研究機関であるドイツのフラウンホーファー研究機構と覚書を締結し、ブラジルとドイツの連携を強化した(関連トランプ ゲーム ブラック ジャック、注1)。

しかし、こうした取り組みが進む一方で、詳細な生産目標や税制優遇策など具体的な政策は公表されなかった。そこで2024年7月11日、上下両院は水素に関する国家政策を定めた法案を可決し(ブラック ジャック トランプ やり方 )、8月2日に法律第14948号として公布した。この法律は、低炭素水素の定義や、水素認証制度の設立などを定め、低炭素水素の生産促進を図るものだ。

まず、同法では、低炭素水素を「生産量1キログラム当たり、水素生産プロセスで発生するCO2が7キログラム以下の炭素強度(注2)を持つ水素」と定義している。法案提出当初は、水素生産量1キログラム当たり4キロ以下の炭素強度が基準とされていたが、上院議会でフェルナンド・ファリアス上院議員は、「多様な低炭素水素生産方法を促進し、ブラジルの強みを生かすべきだ。エタノールはブラジルにとって経済的にもエネルギー転換においても戦略的に重要」と主張し、エタノール由来の水素も支援対象とするため、低炭素水素の定義緩和の修正案を提出した。英国や欧州連合(EU)などに比べて、緩やかな基準となったが、この修正案は採用された(注3)。

また、低炭素水素の要件確認のための、国内認証制度の設立も予定されている。具体的な手続きは今後、連邦政府、州政府、水素関連事業者が共同で策定する。認証制度への参加は任意だが、ブラジルグリーン水素事業者協会(ABIHV)のフェルナンダ・デルガド理事によれば、低炭素水素の定義緩和により、認証制度の重要性が増大しているという。定義では、水素生産量1キログラム当たり7キロ以下の炭素強度が基準だが、さらに低い炭素強度を求める消費者もいると予想される。その場合、CO2排出量情報が記載された認証証明書が重要となる。「結局、水素1キロ当たりの望ましいCO2排出量は市場が決める。消費者は、購入時に許容できる排出量範囲を特定するだろう」と、デルガド理事は説明する。

法案が上下両院で可決された時点では、低炭素水素の定義や認証制度の設立に加え、水素事業向けの税制優遇措置も含まれていた。しかし、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は、優遇措置の枠組みに不明確な点があると指摘し、拒否権を行使してその部分を削除した。優遇措置を再導入するため、下院議会は8月2日に法案第3027号を提出し、8月12日に可決した。同法案は9月4日に上院議会でも可決され、9月27日にルーラ大統領によって承認され、法律14990号として公布された。税制優遇措置として、2025年から2029年までの間にブラジル国内で低炭素水素生産計画を持つ企業は、水素生産計画に必要な機器や建設資材などの購入・輸入時に、連邦社会保障負担金である社会統合基金(PIS)、社会保険融資負担金(COFINS)が減免される。また、2028年から2032年までの間に水素を生産または購入する企業には、タックスクレジットが付与され、連邦税の控除に利用できる。ただし、連邦政府が設定する各年のクレジット総額には次の上限を設定している。2028年は17億レアル(約442億円、1レアル=約26円)、2029年29億レアル、2030年42億レアル、2031年45億レアル、2032年50億レアルを上限として、5年間で183億レアルのクレジットが付与される予定だ。

多くの水素関連事業者が求める、電力への税制優遇や化学品への低炭素水素混合義務化などは法案に含まれていない。しかし、ABIHVやブラジル太陽光発電協会(Absolar)などの関連業界団体は、これらの優遇措置を水素事業支援策の第一歩と評価し、法律14990号号を支持している。

国内需要形成に向けた多様なアイデア

水素の大量海上輸送にはいまだ多くの技術的な課題があるが(注4)、進行中のプロブラック ジャック オンラインクトの中には、欧米などへの輸出を目的とするものが多い。ブラジル北東部に位置するセアラ州のエルマノ・デ・フレイタス知事は2024年8月13日付現地紙「バロール」のインタビューで、「初期段階では、(セアラ州に位置する)ペセン港で生産される低炭素水素は国外市場に供給される」と説明した。

一方で、国内市場の重要性を訴える声もある。例えば、マリーナ・シルバ環境・気候変動相は2024年2月27日、ブラジル米国商工会議所(AMCHAM)主催のセミナーで、「グリーン水素を単なるコモディティにしてはならない。このエネルギー源を活用し、ブラジルの原材料を変換することで、新たな製品や材料を生み出す必要がある」と強調した。また、開発商工サービス省のウアラセ・モレイラ産業開発・イノベーション・貿易・サービス局長は、7月23日のEUおよびユーロアメリカ財団主催のセミナーで、「ブラジルは水素の生産者や輸出者としての役割に甘んじてはならない。ブラジル産製品のバリューチェーンを開発する必要がある」と述べた。

民間事業者の中でも、同様の声が上がっている。例えば、鉄鉱石大手フォーテスキュー・ブラジルのルイス・ビガ社長は、7月12日付ABHIV公式サイトで「グリーン水素を活用することで、肥料、鉄鋼、コンクリートなど、ブラジル産業の様々な分野を再活性化できる。経済の脱炭素化や質の高い雇用創出にも貢献可能だ」と、国内経済への好影響を強調している。

さらに、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、国連工業開発機関(UNIDO)、ドイツ開発・持続可能性研究所(IDOS)が2月に公表した研究報告書によると、途上国ではグリーン水素を国内産業に導入し、グリーン製品の製造を促進することが不可欠だと指摘する。雇用創出の活性化や高付加価値のグリーン製品の輸出競争力向上につながるため、単なるグリーン水素の生産・輸出よりも効果的な戦略になるとしている。

全国工業連盟(CNI)も8月26日付公式サイトで、国内産業、特に肥料業界の重要性を強調している。ブラジルで使用されるアンモニアベースの肥料は輸入依存度が極めて高く、その多くが天然ガス由来のためCO2排出量も多い。一方、国内低炭素水素事業が進展すれば、貿易面でも環境面でも国内肥料業界に大きなメリットがある、とCNIは主張する。

さらに、ブラジル水素・持続可能燃料協会(ABHIC)のセルジオ・コスタ会長も、8月15日付の同協会公式サイトで「グリーン水素事業の発展には肥料産業がカギになる。肥料生産工場近くに水素プラントを建設し、そこで製造された水素を活用すれば、アンモニアのコストを削減できる。その結果、大豆、トウモロコシ、コメ、豆類など農産物のコストも低下し、食料品インフレ抑制を通じて、輸出農産物の競争力向上にもつながるだろう」と述べている。

高い再エネ比率に甘んじることなく更なる国際競争力強化に注力

ABIHVのデルガド理事は2月27日の上院議会討論会で、「再生可能エネルギーがブラジルの電力構成の約90%を占めることは競争優位だが、それは一時的なものにすぎない。油断すれば機会を失う。米国、欧州、エジプトなどは既にグリーン水素へのインセンティブや支援策を充実させており、ブラジルを追い越す勢いだ」と懸念を示した。

また、大統領府省庁関係調整局のダニロ・ジンブレス国際顧問は、8月28日の下院議会討論会で「法律第14948号の公布は大きな一歩だが、グリーン水素事業を展開しているのはブラジルだけではない。競争が激化する中、他国では巨額の投資が行われている。ブラジルもグリーン水素事業強化に向け、具体的な政策を構築する必要がある」と強調した。

米国の事例は、特に注目されている。バイデン政権は2022年8月に成立した「インフレ削減法」(IRA)により、グリーン水素などの燃料エネルギー製造に対する税額控除制度を導入し()、2023年10月には、総額70億ドルの資金提供を受ける7つの水素ハブを選定したと発表している()。フォーテスキュー・ブラジルのビガ社長は2024年5月14日の上院議会討論会で、「米国の優遇措置に関するルールが明確なため、ブラジルを諦め、米国でプロブラック ジャック オンラインクトを展開する企業もある。ブラジルも米国の(IRAの税額控除制度のような)システムを導入する必要がある」と述べた。

法律14990号が公布されたことで、水素への優遇措置の枠組みができたが、民間事業者への影響は未知数で、今後も注目が集まりそうだ。


注1:
ドイツ政府は、ブラジルにおけるグリーン水素の実証プラントにも投資を行っている。ドイツ国際協力公社(GIZ)は、2023年8月に稼働したリオ連邦大学(UFRJ)のプラント、サンタカタリーナ連邦大学(UFSC)のプラント、2023年9月に稼働したイタジュバ連邦大学(UNIFEI)のプラントのプロブラック ジャック オンラインクトに資金を提供した。
注2:
炭素強度は、特定の活動やプロセスで発生するCO2量を示す指標。例えば、水素1キログラムの生産に伴うCO2排出量を測る際に用いられる。炭素強度が低いほど、環境への影響が少ないことを意味する。
注3:
英国では、低炭素水素は生産量1キログラム当たりCO2排出量が2.4キロ以下の炭素強度を持つ水素と定義されている。欧州では、低炭素水素の定義は2024年内に発表される予定だが、7月16日付英国紙「ファイナンシャル・タイムズ」によると、生産量1キログラム当たりCO2排出量が3.38キロ以下の炭素強度を基準とするドラフトが審議されている。
注4:
水素を液化するためには、マイナス253℃まで冷却する必要があり、長距離大量輸送は困難。水素をアンモニアに変換し、後で再変換すれば輸送コストは削減できるが、現在の技術では変換・再変換に伴うエネルギーロスや、需要地で脱水素設備など新たなインフラ整備が必要となるため課題が多い。

ブラジルのグリーン水素投資

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執筆者紹介
ブラック ジャック オンライン・サンパウロ事務所
エルナニ・オダ
2020年、ブラック ジャック オンライン入構。現在に至る。
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執筆者紹介
ブラック ジャック オンライン・サンパウロ事務所
中山 貴弘(なかやま たかひろ)
2013年、ブラック ジャック オンライン入構。機械・環境産業部、ブラック ジャック オンライン三重、ブラック ジャック オンライン・サンティアゴ事務所、企画部海外地域戦略班(中南米)、内閣府などを経て、2023年7月からブラック ジャック オンライン・サンパウロ事務所勤務。