地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向在トルコ日系企業に聞く
ブラック ジャック 必勝 法1)

2024年9月26日

2023年11月以降、紅海でイエメンのフーシ派による船舶への攻撃、いわゆる紅海危機によって、同航路を回避して南アフリカ共和国の喜望峰を迂回する動きが拡大している。これを受けて、ジェトロは、在トルコ日系企業への影響とサプライチェーンの現状について、物流A社と製造業B社、C社に話を聞いた。(取材日:物流A社:2024年7月18日、製造業2社:2024年7月23日、24日)。

質問:
紅海危機後、トルコの物流状況や、コストなどへの影響は。
答え:
(物流A社)トランジットタイムが長期化した。アジア、日本からトルコへの海上輸送は45日前後だったが、喜望峰ルートへの迂回と渋滞が起こっていることで、60日から70日かかっている。さらに、人件費などのコストも上昇した。2024年1月、2月にコストが一時的に低下したが、4月ごろから再び上昇している。週次で到着していた船舶が遅延して到着する一方、需要は減らないため、船舶やコンテナ、スペースの取り合いとなり、再びコストが上昇してきている。往復90日の航海が130日に延びたことで、コンテナとスペースが確保できない事例がアジアを中心に見られる。というのも、日本あるいはトルコへの輸送で、トランジットポートでの積み替えで先の船の出発に前の船の到着が間に合わず、トランジットポートで停留し、次の船を待たなければいけないという混乱が発生し、さらにリードタイムが延びている。
(製造業B社)日本からの供給部品が紅海事案で約1カ月強、リードタイムが延びた。その影響で、非稼働日の日程を少し前倒しした。
(製造業C社)中国から一部完成品を輸入している。喜望峰経由のため、通常より長い時間を要するようになり、物流コストも上乗せされている。
質問:
スエズ運河を通過するトルコ船籍への攻撃はないと聞いているが、海運ルートの変更などはあるか。
答え:
(物流A社)確かにルートを変更せず、スエズ運河を引き続き通過する船舶会社があると聞いてはいるが、リスクが高いため、迂回ルートを使っている。スエズ運河を使うことはない。
(製造業B社)スエズ運河を回避する迂回ルートを利用した生産活動を継続している。
(製造業C社)アラブ首長国連邦(UAE)のドバイやサウジアラビア経由で持って来られないかを検討したが、現状は喜望峰経由以外に選択肢がない状況にある。
質問:
中央回廊(注)を利用するルートを選択することはあるか。
答え:
(物流A社)列車での中央アジアルート利用を試みたことはあるが、需要逼迫で空きが無い、あるいは逆に需要が無く欠航になるなどの状況から輸送実施には至らず。一方で極稀ながらも、トラック輸送のみで中国からトルコへ輸送手配した実例はある。ロシアルートは、ポーランドに向かうルートは積み替えが多いため、時間がかかり、また、積み替えが増えると、問題が発生しやすくなるため、使えていない。結果として、海上の迂回ルートを使っている。
質問:
空路の利用は増えたか。
答え:
(物流A社)紅海危機の発生当初、第1波として、貨物が届かずにパニックが起こり、空路の需要が一時的に増加した。一方で、ルートを喜望峰廻りに切り換えてからは、海上輸送が戻り始めた。また、第2波として、コンテナ不足の問題が発生しているように思う。
質問:
どの国からのどの製品が一番打撃を受けているように思うか。
答え:
(物流A社)自社で取り扱いの多いタイ発や日本発が最も影響を受けているように思う。製品としては機械関連の部品だ。
(製造業B社)日本からの供給部品に影響はあったが、生産活動への影響はない。
質問:
サプライチェーンの変更などはあるように思うか。
答え:
(物流A社)顧客側の問題なので詳しくはわからないが、各社は品質を一定に保つ必要から、それぞれスタンダードがあるため、代替品への切り替えは難しいとみられ、そこまでサプライチェーンの変更があったようには思わない。
(製造業B社)現在はほぼ安定した状態で生産活動をしている。
(製造業C社)品質重視の方針から、トルコ産の部品調達はほとんど行っていない。社内でトルコでの現地調達も検討はしているようだが、実現していない。

注:
中央回廊:トルコ、ジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタンを経由して欧州と中国とつなぐカスピ海横断国際輸送ルート。
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執筆者紹介
ジェトロ・イスタンブール事務所
井口 南(いぐち みなみ)
日系銀行などを経て、2018年からジェトロ・イスタンブール事務所勤務。