1月の米小売売上高は前月比0.8%減、寒波など季節的要因も影響
(米国)
ニューヨーク発
2024年02月16日
米国商務省の速報(2月15日付)によると、2024年1月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.8%減の7,003億ドル(添付資料表参照)となり、ブルームバーグ(2月15日)がまとめた市場予想(0.2%減)を下回った。2023年3月(0.9%減)以来、10カ月ぶりの大幅な減少幅となった。なお、2023年12月の売上高は、前月比0.6%増(速報値)(2024年1月19日記事参照)から0.4%増に、11月の売上高は、前月比0.3%増から増減なしの0.0%にそれぞれ下方修正された。
自動車・同部品、建材・園芸用品、無店舗小売りなどが押し下げ要因に
売上高の減少は13業種中9業種と広範囲にわたった。業種別にみると、自動車・同部品が前月比1.7%減の1,324億ドル(寄与度:マイナス0.32ポイント)と全体を最も押し下げた。次いで、建材・園芸用品が4.1%減の397億ドル(マイナス0.24ポイント)、無店舗小売りが0.8%減の1,184億ドル(マイナス0.14ポイント)と減少に寄与した。一方、フードサービスは0.7%増の951億ドル(プラス0.09ポイント)と増加した。
今回の結果を受け、海軍連邦信用組合のコーポレートエコノミスト、ロバート・フリック氏は「12月は年末商戦で支出が多かったが、1月はそれらの支出項目が落ち込み、さらに極寒の天候と不利な季節調整もあった」と述べ、先行きについては「今年の個人消費は芳しくないだろうが、実質賃金の上昇と雇用の増加により、景気拡大を維持するのに十分な効果があるはずだ」と、今後も消費を支えるプラス要因もあるとの見方を指摘した(CNBC2月15日)。他方で、ブルームバーグのエコノミスト、エステル・オウ氏は「消費者は年末商戦後と寒波の影響で支出を減らしたが、おおむね予想どおりだった。ただ、消費の弱さは金利の影響を受けやすい分野に集中しているものの、借り入れコストの上昇やクレジットカードローンの延滞(2023年第4四半期の米家計債務、ブラック)を背景に消費者が引き締めに転じた」ことが広範な減少に寄与したと述べており、消費行動の変化に言及する声もあった(ブルームバーグ2月15日)。
1月の小売統計は比較的大きな減少となったが、消費者のマインドは堅調だ。民間調査会社コンファレンスボードが1月30日に発表した1月の消費者信頼感指数は114.8と、(12月:108.0)より6.8ポイント上昇し、2021年12月以来(115.2)の高水準となった(添付資料図参照)。内訳をみると、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は161.3(12月:147.2)で14.1ポイント上昇した。また、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は83.8(12月:81.9)で1.9ポイント上昇した。今後1年間で米国が景気後退に陥るとの可能性は1月も徐々に低下し、景気後退リスクの高まりを示唆するベンチマークとなる80の水準を2カ月連続で上回った。
同社のチーフエコノミストのダナ・ピーターソン氏は、今回の結果について「1月の消費者信頼感の上昇は、インフレ率の鈍化、今後の金利低下への期待、そして企業が労働力をため込み続けているため雇用情勢が全般的に良好であることを反映しているとみられる」と指摘した。また、同氏によると、「1月の自由記述回答では、インフレ期待は3年ぶりの低水準に落ち込んだものの、消費者は依然として物価上昇を懸念していることが明らかになった」とした。一方で、「購買計画は1月に落ち込んだが、消費者は現在と今後6カ月の収入と家計について引き続き好意的な見方を示した」とも付け加えた。
(樫葉さくら)
(米国)
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