7月の米小売売上高は前月比1.0%増と予想上回るも、一時的な要因が寄与

(米国)

ニューヨーク発

2024年08月16日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(8月15日付)によると、2024年7月の小売売上高(季節調整値)は前月比1.0%増の7,097億ドル(添付資料表参照)となり、ブルームバーグがまとめた市場予想(0.4%増)を上回った。なお、5月の売上高は前月比0.3%増から0.2%増に、6月は同横ばい(速報値、2024年7月17日記事参照)から0.2%減に、下方修正された。

自動車・同部品、食品・飲料、総合小売りなどが押し上げ要因に

業種別にみると、大半の業種で売り上げが増加したが、自動車・同部品が前月比3.6%増の1,336億ドル(寄与度:0.66ポイント)と全体を最も押し上げた。2024年6月に自動車販売店が使用するソフトウエア会社がサイバー攻撃(米CDKグローバルへの無料)を受けた影響によるものとみられる。次いで、食品・飲料が0.9%増の837億ドル(0.11ポイント)、総合小売りが0.5%増の758億ドル(0.06ポイント)と増加に寄与した。一方、スポーツ・娯楽品・書籍は、0.7%減の82億ドル(マイナス0.01ポイント)と減少した。

全米小売業協会(NRF)のジャック・クラインヘンズ・チーフエコノミストは、売上高が増加した背景について「真夏の新学期商戦や大学への支出による後押しと、小売業者が提供する特別セールのイベントが明らかに追い風となった」とし、「サービス価格が依然として上昇しているにもかかわらず、家計は支出を計画的に進め、小売価格の下落の恩恵を受けている」と述べた。7月は、アマゾンが実施した有料会員向けの大規模セール「アマゾン・プライムデー」に対抗し、小売り大手のウォルマートやターゲットなどもプライムデーに合わせてセールを実施した。データ分析のアドビ・アナリティクスによると、プライムデーの期間中、米国の主要な小売業者のオンライン売上高は2日間で142億ドルに達し、過去最高の水準となった(ロイター7月18日)。米調査会社ヌメレーターが実施したアンケート調査(注)によると、プライムデー利用者の半数以上(56%)は「割引価格で購入するためにプライムデーを待った」と回答するなど、物価高が続く中で、消費者はセール品を探し、より安価な代替品に切り替える購買傾向が堅調だ。

消費者マインドが示す状況もまちまちだ。民間調査会社コンファレンスボードが7月30日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした7月の消費者信頼感指数は100.3(6月:97.8)と2.5ポイント上昇した。内訳をみると、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は133.6(6月:135.3)と1.7ポイント減少した一方で、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は78.2(6月:72.8)と、景気後退リスクの高まりを示唆するベンチマークとなる80の水準を6カ月連続で下回っている状況だ(添付資料図参照)。

同社のチーフエコノミストのダナ・ピーターソン氏は、現況に対する消費者信頼感指数が低下した背景について「毎月の雇用者数の増加幅の減少により、消費者は現在の雇用・ビジネス環境に対する前向きさを少し失った。依然として非常に堅調ではあるものの、消費者の現在の労働市場に対する評価は、2021年3月以来の低水準に落ち込んだ」と述べた。補足質問では、2024年7月のサービス支出計画は、2023年7月よりも低調だった。6カ月先の支出計画については、個人旅行など多くの裁量的な項目で支出を抑える予定だと回答した。また、映画を観に行く代わりにストリーミングサービスを利用するなど、より安価なサービスを求める消費傾向がみられた。

(注)アンケート調査は7月16日からプライムデー利用者を対象に実施され、1万4,543世帯の支出を追跡した結果。

(樫葉さくら)

(米国)

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