9月の米小売売上高は前月比0.7%増と市場予想上回るも、識者は今後の消費失速を予測

(米国)

ニューヨーク発

2023年10月18日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(10月17日付)によると、9月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.7%増の7,049億ドル(添付資料表参照)と6カ月連続の増加になり、ブルームバーグがまとめた市場予想(0.3%増)を大幅に上回った。8月の売上高は、前月比0.6%増(速報値)から0.8%増に上方修正された(関連ブラック ジャック やり方)。

自動車・同部品、無店舗小売り、フードサービスなどが押し上げ要因に

業種別にみると、自動車・同部品が前月比1.0%増の1,352億ドル(寄与度:0.20ポイント)と全体を最も押し上げた。大手自動車メーカー3社に対する全米自動車労働組合(UAW)のストライキが継続する中でも(全米自動車労組(UAW)、ブラック)、2022年に比べて新車の在庫状況が改善されたことなどが売り上げ増に寄与したとみられる。2022年は半導体チップなどの部品不足で新車の供給が限られ、販売価格が記録的な水準まで上昇していた(CNNビジネス10月3日)。次いで、無店舗小売りが1.1%増の1,180億ドル(0.18ポイント)、フードサービスが0.9%増の919億ドル(0.12ポイント)と増加に寄与した。前月の主たる押し上げ要因となっていたガソリンスタンドは、0.9%増の567億ドル(0.07ポイント)と伸びは鈍化したものの、ガソリン価格の上昇に伴い引き続き増加している。一方、衣料は0.8%減の260億ドル(マイナス0.03ポイント)、建材・園芸用品は0.2%減の416億ドル(マイナス0.01ポイント)、家電は0.8%減の77億ドル(マイナス0.01ポイント)と減少した。

今回の結果について、識者からは、個人消費の底堅さに反し、複数の景気の下振れ要因から今後、消費は勢いを失うとの見方が示された。ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミストのイライザ・ウィンガー氏は「9月の堅調な小売売上高は、消費者の回復力の度合いを誇張している。第3四半期の個人消費は確かに非常に好調に見えるが、それは活動の一時的な急増によるもので、持続不可能だ」と指摘した(ブルームバーグ10月17日)。また、コメリカ銀行(本社:テキサス州ダラス市)のチーフエコノミスト、ビル・アダムス氏は「雇用は高水準で、賃金上昇率はインフレ率を上回り、景気後退の懸念も沈静化する中、個人消費は伸び、経済を前進させている」としつつも、「学生ローン返済の再開、UAWやハリウッド俳優組合によるストライキ、イスラエルとハマスの衝突、政府閉鎖の可能性によるテールリスク(注)などの逆風を受け、第4半期の経済成長は鈍化する可能性が高い」と指摘した(CNNビジネス10月17日)。

また、民間調査会社コンファレンスボードが9月26日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした9月の消費者信頼感指数は103.0と、8月(108.7)より5.7ポイント減少し、5月以来(102.5)、4カ月ぶりの低水準となった。内訳をみると、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は147.1(8月:146.7)で0.4ポイント増と小幅に上昇した。一方で、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は73.7(8月:83.3)で9.6ポイント減少し、2021年8月の11.0ポイント減少以来2年1カ月ぶりの大幅な下げ幅となった。

同社のチーフエコノミストのダナ・ピーターソン氏は、今回の結果について「消費者は引き続き全般的な物価上昇、特に食料品やガソリンの価格に頭を悩ませている」「政治情勢や金利上昇に対する懸念も示された」と述べた。また先行きについて、「今後6カ月間の見通し(期待指数)は、景気後退の基準である80を下回り、今後の景況感や雇用の確保、所得に対する信頼感が低下していることが反映された」と付け加えた。

(注)株式市場や金融市場において、発生確率が低い想定外の暴騰・暴落が実際に起きるリスクを指す。

(樫葉さくら)

(米国)

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