8月の米小売売上高は前月比0.6%増、ガソリン価格上昇が主因、消費後退の兆しも

(米国)

ニューヨーク発

2023年09月15日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(9月14日付)によると、8月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.6%増の6,976億ドル(添付資料表参照)と5カ月連続の増加になり、ブルームバーグがまとめた市場予想(0.2%増)を上回った。ただし、ガソリン価格の上昇が全体を押し上げた主因となっており、ガソリンスタンドを除いた売上高は0.2%増にとどまった。なお、7月の売上高は、前月比0.7%増(速報値)から0.5%増に下方修正された(関連カード ゲーム ブラック)。

ガソリンスタンド、自動車・同部品、食品・飲料などが押し上げ要因に

業種別にみると、ガソリンスタンドが前月比5.2%増の553億ドル(寄与度:0.39ポイント)と全体を最も押し上げた。全米自動車協会(AAA)によると、全米のレギュラーガソリン平均価格は1ガロン(約3.8リットル)当たり3.86ドル(9月14日時点)で、直近10カ月で最も高い水準となった。OPECプラスの減産に加え、旺盛な需要、リビアで発生した大洪水による混乱などが原油価格を押し上げている(CNNビジネス9月14日)。次いで、自動車・同部品が0.3%増の1,335億ドル(0.05ポイント)、食品・飲料が0.4%増の823億ドル(0.04ポイント)と増加に寄与した。一方、スポーツ・娯楽品・書籍は1.6%減の86億ドル(マイナス0.02ポイント)と減少した。

今回の結果について、識者からは消費を取り巻く状況に変化が生じつつあるという声が聞かれた。BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミストのサル・グアティエリ氏は「実質賃金が上昇し、富が回復しているにもかかわらず、高金利、燃料費の高騰、余剰貯蓄の薄れ、雇用の伸びの鈍化により、8月の消費の力強さは後退したようだ」と指摘した(ブルームバーグ9月14日)。また、大手格付け会社のフィッチ・レーティングスのシニアディレクターのデービッド・シルバーマン氏は「低失業率とやや低下したインフレ率に支えられ、引き続き消費者は比較的健全だと見ている」と述べた。一方で、「逆風が吹きつつある」とし、その要因として貯蓄の減少や今秋に学生ローンの返済が再開されることを挙げた。

また、民間調査会社コンファレンスボードが8月29日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした8月の消費者信頼感指数は106.1と、7月(114.0)より7.9ポイント減少し、2021年8月の9.90ポイント減少以来、2年ぶりの大幅な下げ幅となった。内訳をみると、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は144.8(7月:153.0)で8.2ポイント減少し、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は80.2(7月:88.0)で7.8ポイント減少した。

同社のチーフエコノミストのダナ・ピーターソン氏は、今回の結果について「消費者が再び全般的な価格上昇、特に食料品とガソリンの価格上昇に頭を悩ませていることを示している」と述べた。同氏は、各指数が減少した背景に「雇用の増加が鈍化し、全体的な賃金の上昇は1年前と比較して緩やかになり、平均失業週数は増加傾向にある」と、雇用情勢を巡る楽観的な見方が後退したことを挙げた。また、先行きについて、「期待指数は、将来の景況感、雇用の確保、収入に対する信頼感が低下したことを反映し、景気後退の基準値である80近くまで後退した」「株価見通しは低下し、12カ月間の平均インフレ予想も上昇した。6カ月後の予想家計状況指標はさらに悪化した」との見方を示した。

(樫葉さくら)

(米国)

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