米主要港、9月の小売業者向け輸入コンテナ量は前月比3.5%増も、年内の貨物取扱量は減少の見通し
(米国)
ニューヨーク発
2023年11月13日
全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」(11月8日)によると、9月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は前月比3.5%増、前年同月比で0.2%減の203万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった。NRFが10月時点で予測した194万TEU(米主要港、ブラック ジャック ランキング)を上回り、2022年10月以来初めて200万台TEUに達した。一方で、既に年末商戦に必要な輸入貨物は既に到着済みとして、2023年1月~12月の貨物取扱量の予測は下方修正された。
今回の発表の中で、NRFのサプライチェーン・税関担当バイスプレジデントのジョナサン・ゴールド氏は「小売業者は2023年の年末商戦で記録的な売上高を見込んでおり(注2)、店舗でもオンライン注文に対応する配送拠点でも、需要に見合った在庫を確保している」「年初に懸念されていた港湾、鉄道、配送サービスの労働契約の問題も一段落し、サプライチェーンは順調に稼動している」とし、年末商戦に向けた取り組みが順調に進んでいるとの見方を示した。
また、ハケット・アソシエイツの創設者ベン・ハケット氏は、貨物の輸入が減少しているとはいえ、米国の経済状況は欧州やアジアよりも良好だと述べた。同氏によると、両地域では景気後退がもたらした消費需要の減退により、海運会社はここ数年の貨物急増に対応して建造された新造船の船腹量を余らせた状況となっている。ただ、同氏は「米国の消費者は雇用と賃金伸びの恩恵を受け続けており、新型コロナ禍の間に蓄えた貯蓄を切り崩しているため、世界経済の中で際立っている」としながらも、「世界的な貨物貿易の後退が、サプライチェーンに影響を与える可能性がある」との懸念を示した。
このように、年末商戦に向けた見通しは比較的楽観的だが、グローバル・ポート・トラッカーの見通しでは、国内の主要港における輸入コンテナ量は10月に前年同月比4.2%減の192万TEU、11月には5.8%減の188万TEUになると推定している。2023年通年では、NRFは、前年比13.5%減の2,210万TEUと予測しており、徐々に個人消費が減速する兆しも示唆されている。
(注1)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。
(注2)2023年の年末商戦の小売売上高は前年同期比3~4%増の9,573億~9,666億ドルの見通し(2023年11月6日記事参照)。
(樫葉さくら)
(米国)
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