米主要港、8月小売業者向け輸入コンテナ量は東海岸港湾スト見越して増、今後は平年並みに

(米国)

ニューヨーク発

2024年10月10日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社ハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(10月8日)によると、8月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は前月比0.9%増、前年同月比で19.3%増の234万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった(注2)。9月時点の予想(2024年9月12日記事参照)を下回ったが、単月の貨物量としては2022年5月(240万TEU)以来の高水準に達した。

今後については、9月は前年同月比12.9%増の229万TEUと、米国東海岸での港湾ストの影響に備えた駆け込みが続く見通しとしている。その後は10月が同3.1%増の212万TEUで、堅調ながらも伸びは低下し、11月は同0.9%増の191万TEU、12月は同0.2%増の188万TEU、2025年1月は同0.8%増の198万TEUと、ほぼ前年並みに落ち着く見通し。なお、2月はアジア各国での旧正月で工場の操業停止時期が1月に前倒しとなるため、前年同月比11.2%減の174万TEUと見込んでいる。ハケット・アソシエイツ創設者のベン・ハケット氏は「ここ数カ月の輸入増は、急激な需要増というより、東海岸とメキシコ湾岸の港湾ストを見越した卸売業者、小売業者、工業企業による不測の事態に備えた輸入の結果であることは明らかだ」と述べ、このところの取扱量の増加は一時的なものという見方を示した。

また、発表では、米国東海岸の港湾ストの影響に関しても言及している。NRFのサプライチェーン・税関担当副社長のジョナサン・ゴールド氏は、ストが短期間で終結したことは「米国経済にとって大きな救いだった」とした上で、「影響を受けた港が回復するには数週間かかるだろうが、国内の港湾が需要に応えるため懸命に働いており、年末商戦への影響はない見込みなので、安心できる」と述べた。ハケット氏も同様に「西海岸では短期的な混雑が見られるかもしれないが、それほど大きなものではなく、東海岸での遅延は限定的なものになるだろう」との見方を示した。

米国東海岸港湾の労使交渉を巡っては、雇用者側の米国海運連合(USMX)と労働者側の国際港湾労働者協会(ILA)の間で、港湾労働者の賃上げやターミナルでの自動化などで対立し、3日間のストを経て、10月3日に暫定合意に達している。同合意では、現行の基本契約は2025年1月15日まで延長され、ターミナルでのコンテナ荷揚げの自動化などに係る論点など、未解決の問題について交渉の場に戻ることで合意した()。

(注1)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトル、タコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミ、ジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。

(注2)発表されている貨物量のTEUと前年同月比の数値は端数処理の関係で一致しない場合がある。

(樫葉さくら)

(米国)

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