UAEで燃料価格が上昇、他の湾岸諸国は補助金で価格据え置き
(アラブ首長国連邦、湾岸協力会議(GCC)、カタール、オマーン、クウェート、バーレーン、サウジアラビア)
ドバイ発
2022年08月02日
アラブ首長国連邦(UAE)の燃料価格委員会は6月30日、7月の燃料公定価格を発表した。「Special 95」(レギュラーガソリンに相当)の価格は1リットル4.52ディルハム(約163円、AED、1AED=約36円)だった。2022年に入って燃料価格は毎月上昇を続けており、年初の価格から約79%の値上げとなった。
UAEでは、燃料の小売価格に対する規制を2015年8月から撤廃し、国際価格と連動する変動制に移行した。以降は、内閣が設置した燃料価格委員会が毎月の公定価格を発表している。今回の燃料価格上昇はウクライナ情勢などを受けた世界的な原油価格高騰の影響を受けたものとみられる。
燃料価格にとどまらず、急激な物価上昇を受けて、UAE政府は7月4日、低所得層の自国民に対して補助金を支出する社会保障プログラムを発表した(関連ブラック ジャック 無料)。このプログラムには燃料費補助金の支給が含まれ、世帯収入の月額合計が2万5,000ディルハムに満たない自国民には、1カ月1世帯当たり最大500リットル(注1)を上限に、1リットル2.1ディルハムを超えた額の85%について後から補助を受けられる。
湾岸協力会議(GCC)諸国の中では、カタールはUAEと同様に、変動制の燃料小売価格に移行している。変動制のUAEとカタールを含め、GCC全ての国で燃料の公定価格を設定しているが、UAE以外の国では、石油会社やガソリン販売会社などの販売元に補助金を充てることによって、燃料価格の変動を根元から抑え込んでいる(添付資料図、表1、2参照)。
このような燃料価格の維持は、国内居住者の不満を抑制できる一方、国家財政を圧迫するリスクもはらんでいる。ただし、UAEも結果的に補助金の導入に踏み切ったが、他のGCC諸国のような販売元への補助金とは異なり、補助対象が国内人口の約1割程度を占める自国民のみとなっていることから、国庫への負担は比較的軽いとみられる。
一方で、UAEに居住する外国人は値上げの影響を真正面から受けている格好だ。5月には、フードデリバリー事業を行うスタートアップのデリバルーとタラバットのドライバー(注2)が待遇改善を求めてストライキを決行するなど、一部の労働市場にも影響が出始めている。
(注1)世帯主に対して300リットル、仕事に就いている配偶者に対して200リットル、世帯主のみが就業している場合は400リットルが上限となる。
(注2)ドライバーの多くが南アジア出身の外国人労働者。UAEのドライバーの多くがデリバリーに使用するバイクのガソリン代は自己負担の契約とされる。
(山村千晴)
(アラブ首長国連邦、湾岸協力会議(GCC)、カタール、オマーン、クウェート、バーレーン、サウジアラビア)
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