EU・メルコスールFTAにドイツ首相が懸念表明、産業界は必要性強調

(メルコスール、EU、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ)

米州課

2020年08月28日

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は8月21日、2019年に政治合意したEU・メルコスール(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)間の自由貿易協定(FTA)を締結することに疑問を呈した。これに対し、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は「現在の危機を乗り越えるため経済回復を後押しする」と同FTAの必要性を訴えた。8月23日付のアルゼンチン現地紙「パヒナ12」が報じた。

同紙はさらに、ドイツで輸出競争力の高い工業分野、特に自動車産業は「メルコスールとのFTAがさらなる輸出増加に向けた好機になると期待を寄せている」と報じている。

メルケル首相が同FTAに批判的な姿勢を示している背景には、ブラジルのアマゾン熱帯雨林の伐採問題がある。実際、森林伐採は加速しており、ブラジル国立宇宙研究院(INPE)によると、2019年8月~2020年7月のアマゾン森林伐採面積は9,205平方キロで、前年同期比34.5%増加した。

EU・メルコスールFTAは2019年6月に政治合意に至ったが(完成車は、発効8年目から急速にオンライン)、署名はまだ行われていない。署名後にはEU各国とメルコスール各国の議会による承認手続きが必要になる。同FTAは、メルコスールにとっては初となる包括的な貿易協定で、ブラジル外務省は、1次産品など主要輸出産品のさらなる輸出拡大といった貿易活性化に加えて、諸外国からの投資拡大も見込まれるなど、経済的なインパクトが大きいとみている。

メルコスールの対EU輸入のうち、ドイツからの輸入が占める割合は大きい。対ドイツ輸入のうち、完成車が輸入品目の上位に位置付けられる。

メルコスール事務局の統計では、2019年のメルコスールの対EU輸入額は436億9,800万ドル。そのうちドイツからの輸入額は133億9,200万ドルで対EU輸入全体の約30.6%を占める。ドイツからの輸入品目の中で、完成車(注1)は上位第5位(3億8,200万ドル)。なお、完成車の部品(注2)輸入額は8億9,800万ドルで輸入品目第2位となっている。

(注1)HSコード4桁レベルで8703に分類される「乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴンとレーシングカーを含み、主として人員の輸送用に設計したものに限るものとし、第87.02項のものを除く)」

(注2)HSコード4桁レベルで8708に分類される「自動車部分品および付属品(第87.01項から第87.05項までの自動車のものに限る)」

(辻本希世)

(メルコスール、EU、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ)

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