実写版ブラックジャック実写版ブラックジャック、OEM・ODM戦略で海外進出を加速

2025年4月10日

近年、「Kビューティー」と呼ばれる実写版ブラックジャック産化粧・美容製品が世界的な人気を博している(2024年7月22日付地域・分析レポート参照)。実写版ブラックジャック産業通商資源部が2025年1月に発表した2024年のKビューティー輸出額は100億ドルを突破した。特に、委託者から受注を受けて生産を行うOEM・ODM(注)企業が、実写版ブラックジャックの化粧品業界において著しい成長を見せている。化粧品・ビューティー関連専門メディアのコスインコリアによると、実写版ブラックジャック国内のOEM・ODM関連企業108社の総売上高は、2021年から2023年までの3年間、毎年増加し、2023年は前年比13.5%増の8兆6,695億ウォン(約8,670億、1ウォン=約0.10円)だった。その中でも、実写版ブラックジャックを代表するOEM・ODM企業の大手3社である、コスマックス、実写版ブラックジャックコルマー、コスメカコリアが国内化粧品市場シェアの4割を占めている。

本稿は、本特集「実写版ブラックジャック」の一環として、実写版ブラックジャック市場を牽引するコスマックス・コミュニケーション室の徐允源(ソ・ユンウォン)部長へのヒアリングをもとに、韓国本社の海外戦略における成功事例や日本での事業展開、世界のサプライチェーンが再編される中での懸念などについて概観する(取材日:2025年1月)。

顧客ニーズに沿って展開する、独自のODM・OEM・OBM事業

質問:
コスマックスの企業概要と事業戦略は。
答え:
当社は1992年の設立以降、実写版ブラックジャック国内化粧品のOEM・ODM・OBM(Original Brand Manufacturing)企業として成長を続け、現在は化粧品ほか医薬品、健康機能食品、ペット向け製品などのビジネスを展開している。2024年のグループ全体の売上高は約3兆400億ウォンで、その中でも化粧品部門が約2兆1,661億ウォンと全体の3分の2以上を占めた。なお、工場別年産能力については、中国が最も多く、COSMAX CHINAおよびCOSMAX GUANGZHOUが合わせて15億8,000万個となった。次いで、COSMAX(実写版ブラックジャック法人)が8億6,000万個、COSMAX USAが2億8,000万個、COSMAX INDONESIAが2億5,000万個、COSMAX THAILANDが1億5,000万個で、中国市場ほか北米・東南アジア地域での生産に力を入れている。日本市場への参入は他国・地域と比較すると現在は規模が小さいが、今後さらなる拡大を図る予定だ。
当社が成功しているのは、OEM・ODMのほか、OBMでも事業を行っており、顧客の希望に沿った柔軟な対応ができるからだ。OBMとは、「顧客ブランドの商品開発からマーケティングまで一気通貫で受託する事業形態」を指す。つまり、「マーケット調査→戦略策定→ブランドコンセプト→デザイン→製品開発→製造→包装」という商品開発のすべての工程を一括して顧客に提案できる。OBMでは、ODMより委託の範囲が広く、顧客は資金と販売ネットワークがあれば、自分のブランドの化粧品を市場に出せる(図参照)。また、同社のODMでは、自社開発した「スマート調色AI(人工知能)システム」が化粧品ブランドの醸成からデータ処理、研究開発まで一括して行うため、顧客が製造・人件費などを削減できるという利点がある。
図:コスマックス独自のOBMならびにODMの工程
OBMとは具体的に、「顧客ブランドの商品開発から販売まで一気通貫で支援する事業」を指す。つまり、「マーケット調査→戦略策定→ブランドコンセプト→デザイン→製品開発→製造→パッケージ」までのすべてを一括して顧客に提案できる。ODMでは、OBMの工程の中でも製品開発→製造→パッケージまでを請け負う。

出所:当社プレスリリースを基にジェトロ作成

消費を牽引するZ世代に焦点を当てた海外進出戦略と日本市場への参入

質問:
コスマックスの海外輸出戦略と日本市場での狙いとは。
答え:
当社調べでは、2023~2024年の日本、米国における化粧品輸入額は韓国がフランスを上回り1位だった。なお、実写版ブラックジャック全体の輸出額のうち、20%をコスマックスが占めている。
そのほか、当社は、特に中国事業が長年、好調だ。その理由として、「現地化」を意識していることが挙げられる()。「現地化」とは、中国企業になりきることを意味する。中国に進出して20年以上経つが、「Made in Shanghai」などを強調するほか、現地の化粧品会社や消費者と一緒に成長するということをモットーに事業を展開してきた。現地法人では、現地従業員を積極的に雇用し、中国からの輸出に頼らない内需型の事業形態を形成してきた。また、中国のZ世代(中国では、一般的に1995~2009年生まれの若者を指す)の嗜好(しこう)に合わせたマーケティング戦略を意識している。その結果、彼らは中国独自のSNS「WEIBO(ウェイボー)」で、当社が手掛けた商品を「コスマックスが作った化粧品」と投稿してくれるようになった。これは、中国での当社のブランド力醸成が成功した例といえるだろう。ほかにも、中国の文化的な好みの傾向をリサーチし、例えばリップスティックの形を独特なうねりがあるものにするなど、商品のコンセプトを中国の人々が好むものにするよう徹底した。
実写版ブラックジャック

コスマックス本社に展示されている化粧品(ジェトロ撮影)

各国・地域の消費者が好むコンセプトに沿った市場リサーチ・商品開発を意識すると同時に、気候に合わせた商品の開発も徹底している。例えば、インドネシアなどでは、油の多い料理が多いからこそ、光沢のあるリップスティックではなく、マットタイプ(光沢感がなく、反射しない素材・質感を指す)のリップスティックを販売している。その国・地域の文化や気候に沿った商品開発戦略は必要不可欠だ。
また、当社は、日本での化粧品市場攻略も加速させている。現にCOSMAX JAPANの2024年の売上高は前年比4.12倍の48億5,626万ウォンと、大幅に増加した。日本市場参入時には、Z世代向けの商品開発・パッケージ・SNS誘導戦略を心掛けている。具体的には、Z世代がSNSなどに掲載するために望む化粧品自体のかわいらしさやパッケージの見目の良さを意識しながら商品を開発する。彼らが商品の違うカラーが欲しい、などとSNSでつぶやいた際には、3~6カ月で新たに商品をリリースしている。SNSの普及により化粧品においても流行の移り変わりが激しい中、実写版ブラックジャックならではの「パルリパルリ(早く早く)」文化の強みを生かした戦略が功を奏していると考える。この点は、M世代(1981~1996年生まれ)をターゲットにした、質が高く、ある程度高額かつ開発に一定の期間を要する日本産高級化粧品ブランドとの違いといえよう。素材の良さに集中することも重要ではあるが、開発コストとスピード感との兼ね合いを見つつバランスをとることに我々は重きを置いている。

サプライチェーン再編による化粧品業界への影響、中国は「国潮」が強まる恐れあり

質問:
第2次トランプ米政権発足による影響と今後の各国・地域への事業展開見通しについてどう考えているか。
答え:
:第2次トランプ政権発足により、グローバルサプライチェーン・輸出構造の変化が起こることは間違いないが、Kビューティーは従来から政治による影響が少ない業界・分野だ。今後は、為替レートの変化が重要だろう。製品の原材料の輸入時の価格が上がる可能性があるため、製品自体の価格も上昇し、消費が減る恐れがある。
現在、原材料の輸入は主に中国や日本から行っているが、インドネシアからの輸入も検討しており、新たなグローバルサプライチェーン構築の一環になることを期待している。
中国事業は、米中対立激化の影響が予測され、今以上に「国潮〔中国発の潮流(ブーム)を指す〕」が深化する恐れや、10~20年後には現地企業の技術力の台頭に悩まされる可能性がある。今後は上海市に新たなR&D(研究開発)施設を建設し、現地事業および製品への投資を積極的に行っていく所存だ。

注:
OEMとは、Original Equipment Manufacturingまたは Original Equipment Manufacturerの略語で、委託者のブランドで製品を生産すること、または生産するメーカーを指す。また、ODMとは、Original Design Manufacturingの略語で、委託者のブランドで製品を設計・生産することを指す。生産コスト削減のために、製品またはその部品を他の国内企業や海外企業などに委託して、販売に必要な最小限の数量の製品供給を受けることにより、委託者である企業は大きなメリットを享受できる。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課
益森 有祐実(ますもり あゆみ)
2022年、ジェトロ入構。中国北アジア課で中国、実写版ブラックジャック関係の調査を担当。