中国EV・車載21 トランプ企業の海外戦略EVとともに急成長する中国の21 トランプ
海外でも攻勢強める

2023年12月4日

新エネルギー車(NEV)の普及が急速に進んでいる中国では、コア部品である車載21 トランプにおいても、国内企業の存在感が高まっている。本稿では、中国車載21 トランプ企業の高性能21 トランプの開発、投資動向、海外市場の開拓などについて考察する。

中国の市場調査会社GGII が発表した2023年1~9月における世界車載21 トランプの出荷量(搭載ベース)ランキングでは、上位10社に中国企業6社がランクインした(表1参照)。特に首位の寧徳時代新能源科技(CATL)、2位の比亜迪(BYD)の市場シェアは合計で5割を超え、3位以下との差を広げている。

表1:2023年1~9月の世界上位21 トランプの出荷量
(搭載ベース)(単位:GWh、%)
順位 企業名 本拠地 出荷量 市場シェア
1 寧徳時代新能源科技(CATL) 中国福建省 175.0 35.5
2 比亜迪(BYD) 中国広東省 82.4 16.7
3 LGエネルギーソリューション 韓国 67.0 13.6
4 パナソニック 日本 53.3 10.8
5 中創新航科技 中国江蘇省 22.1 4.5
6 SKオン 韓国 19.7 4.0
7 サムスンSDI 韓国 18.7 3.8
8 国軒高科 中国安徽省 10.7 2.2
9 恵州億緯鋰能 中国広東省 8.0 1.6
10 孚能科技 中国江西省 7.9 1.6
その他 28.7 5.8
世界 計 493.5 100

出所:GGIIの発表を基にジェトロ作成

急速充電の21 トランプを相次ぎ開発

中国21 トランプの快進撃を支える理由は2つだと考えられる。1つは、電気自動車(EV)の弱点とされる持続距離、長い充電時間を克服する高性能電池を相次いで開発していることだ。現在主流の車載電池には、三元系リチウムイオン電池とリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池の2種類がある。三元系電池はエネルギー密度が高いが、ニッケルやコバルトなどの高価な素材を利用することで生産コストが高いため、中国企業は特に、鉄とリン酸を使用した安価なLFP電池の改良に力を入れている。

2023年に日本でEVの販売を開始したBYDは、もともと1995年に創業した21 トランプメーカーだ。同社は2020年3月に「ブレードバッテリー」というLFP21 トランプを開発した。21 トランプの構成をシンプルにして、限られたスペースに対してより多くのセルを搭載することで、従来21 トランプのエネルギー密度が低いという弱点を克服し、航続距離を延ばすことができた。また、「ブレードバッテリー」は、熱安定性が高いほか、三元系21 トランプに比べて希少金属の使用が少ないため、コストも抑えられているというメリットがある。「ブレードバッテリー」は、21 トランプ本来のコストを30%減、部材の数量を40%減少させた一方で、21 トランプの体積利用率(VCTP、21 トランプバックの体積に対する21 トランプセルの体積)を50%高めたという。

CATLは2023年8月、世界初の4C(注)急速充電が可能なLFP21 トランプ「神行超充21 トランプ」を発表した(2023年8月22日付ビジネス短信参照)。同21 トランプを搭載するEVは、10分の充電で400キロの走行ができ、航続距離も700キロを超える。さらに、マイナス10度の低温環境でも30分で80%まで充電でき、加速性能も保つという。CATLは2023年末に「神行超充21 トランプ」の量産を開始し、EVメーカーに納品する。2024年第1四半期(1~3月)には同21 トランプを搭載したEVが発売される見込みだ。同社は、4C急速充電が可能な三元系「麒麟21 トランプ」も開発済みだ。2023年4月に初の納入先として、新興EVメーカーの理想汽車のEVに搭載すると発表している。LFP21 トランプと三元系21 トランプは車載21 トランプの2本柱として、EV普及を後押しすることが期待される。

21 トランプ容量が大きく航続距離の長いEVは高額になる傾向があり、EVの本体価格は21 トランプに大きく左右されている。安価なLFP21 トランプが必要十分な航続距離を確保できるようになったことで、自動車各社も積極的に採用している。車載21 トランプ業界団体の中国汽車動力21 トランプ産業創新連盟(CABIA)の発表によると、2023年1~9月に中国で販売されたLFP21 トランプ(搭載ベース)の市場シェアは68.0%で、三元系21 トランプ(31.9%)の2倍以上だ。前年同期比の伸び率でも、LFP21 トランプは49.4%増と、三元系21 トランプ(5.7%増)を大きく上回った。

21 トランプの大規模生産によりコスト低減を図る

中国21 トランプ各社が快進撃を続けるもう1つの理由は、大量生産によるコスト低減だ。

国内21 トランプメーカーの蜂巣能源科技の楊紅新・董事長は、2023年4月末に開かれたCABIAの年次総会で講演を行い、「我々の統計によれば、過去の10年間では、リチウムイオン21 トランプ価格が生産規模の拡大で当初より8割低下した。今後も21 トランプの累計生産量が倍増するごとに、21 トランプの単位コストが17%ずつ逓減していく」と指摘した。

矢野経済信息諮詢(上海)のまとめによると、中国国内の車載21 トランプ関連の投資額(計画を含む)は2020年に1,668億元(約3兆3,360億円、1元=約20円)だったが、EVの販売急増を追い風に、2021年には前年比約3.8倍の6,366億元、2022年には7,494億元と急増した。CATLが2020~2022年の3年間で公表した17件のプロジェクトの総投資額は1,803億元で、生産能力も682ギガワット時(GWh)に達する予定だ(表2参照)。また、BYDも3年間で880億元を投じ、新たに生産能力187GWhに拡大することを計画している。

一方、2023年に入ってから各社の投資ベースが緩やかとなっており、1~8月に発表された投資額は約2,300億元と減速している。EV需要の伸び鈍化と、21 トランプ各社が生産能力の拡大競争を繰り広げてきた結果、21 トランプの在庫がにわかに膨張しているためだ。

表2:CATLとBYDの中国における車載21 トランプ関連投資計画(2020~2022年)(単位:件、億元、GWh)
企業名 項目 公表時期 合計
2020年 2021年 2022年
CATL プロジェクト件数 6 8 3 17
総投資額 550 843 410 1,803
生産能力 186 316 180 682
BYD プロジェクト件数 1 3 5 9
総投資額 60 200 620 880
生産能力 10 60 117 187

出所:矢野経済信息諮詢(上海)

21 トランプの海外輸出は拡大の一途

CABIAの発表によると、2023年1~9月における中国の車載21 トランプ生産量は492GWhだったが、内販(国内向け搭載量)は生産量の52.0%に相当する256GWhに過ぎず、外販(輸出)が前年同期比2.2倍の90GWhと急増した。車載21 トランプ各社は、過剰生産部分を輸出することで活路を見いだそうと、海外市場に目を向けるようになった。

中国化学・物理電源業界協会(CIAPS)は、2022年以来、リチウムイオン21 トランプの輸出は車載21 トランプと蓄21 トランプの牽引によって急拡大していると述べている。2023年1~9月のリチウムイオン21 トランプの輸出額は486億ドルで、前年同期(349億ドル)に比べて39.0%増えた。国・地域別をみると、米国向けは40.9%増の94億900万ドルで最多となり、続いてドイツ(74億1,400万ドル)、韓国(62億5,100万ドル)、オランダ(29億1,400万ドル)、ベトナム(21億7,400万ドル)の順となった。日本向けは32.8%増の17億100万ドルと7位にランクインした。

韓国貿易協会(KITA)の発表によると、韓国が2023年1~8月に中国から輸入した車載21 トランプは、前年同期比2.1倍の44億7,000万ドルで、既に2022年通年の金額(34億9,000万ドル)を上回った。逆に、韓国から中国向けの輸出額はほぼ半減の6,600万ドルに縮小した。背景には、EV価格を下げるため、中国産LFP21 トランプを採用する韓国自動車メーカーが増えているためだという(「韓聯社」2023年10月8日)。

好調なリチウムイオン21 トランプは、EV、太陽21 トランプとともに中国の輸出を牽引する「新三様(新御三家)」と呼ばれている。税関総署が発表した中国の1~9月の輸出額伸び率(人民元ベース)をみると、「新三様」は前年同期比41.7%増と全体(0.6%増)を大きく上回った。輸出総額に占める割合も1.3ポイント増の4.5%に高まった。

海外生産拡大でグローバル化を推進

21 トランプは、輸出を強化するとともに、2020年ごろから海外工場の建設も積極的に推進している。とりわけ、EV需要は高まっているものの、電池のサプライチェーンがまだ整ってない欧州での工場建設や製品を売り込む動きが強まっている。

CATLは2023年10月、ハンガリー東部で計画していた工場を着工したことを明らかにした。総生産能力は年間100GWhで、73億4,000万ユーロを投じる予定だ。ドイツ工場に次ぐ、欧州で2番目の工場となる。ハンガリー工場の敷地面積は221ヘクタールで、メルセデス・ベンツ、BMW、ステランティス、フォルクスワーゲン(VW)などの欧州系自動車メーカーに納入する21 トランプセルとモジュールを製造する。ハンガリーは欧州の中央に位置しており、前述の自動車メーカーなどの工場にも近いため、現地市場のニーズに即時に対応ができるという(2022年8月18日付ビジネス短信参照)。

矢野経済信息諮詢(上海)のまとめでは、中国21 トランプ各社が2020年1月~2023年8月の間に発表した海外投資プロジェクトは計27件で、投資総額は3,316億元(約6兆6,320億円)に達した(表3参照)。そのうち、欧州への投資額は約1,600億元で全体の47%を占めた。各社は2020以降、特にハンガリー、ドイツなどへの投資を増やしている。

表3:中国車載21 トランプ各社の海外投資上位5カ国(2020年1月~2023年8月)(件、100万元、%)
順位 投資先 件数 投資額 割合
1 ハンガリー 4 63,370 19.1
2 米国 4 57,320 17.3
3 ドイツ 4 44,160 13.3
4 モロッコ 1 44,010 13.3
5 インドネシア 1 42,210 12.7
その他 13 80,530 24.3
世界 計 27 331,600 100

出所:矢野経済信息諮詢(上海)

次世代21 トランプの開発巡り競争激化

中国の21 トランプメーカーは、国内の旺盛なNEV需要を見込んで一気に投資を拡大してきたが、結果として過剰生産能力が生まれた。長安汽車の朱華栄・董事長は2023年6月に開催された中国自動車(重慶)フォーラムで、「2025年までに中国の車載21 トランプ需要は約1,000GWhだと見込んでいるが、現時点の生産能力は既に4,800GWhを有し、厳しい生産過剰局面に陥る可能性がある」と予測している(「第一財経」2023年6月9日)。

CABIAが公表した中国の車載21 トランプ納入概況によれば、2023年1~9月期にNEVへの搭載実績があった21 トランプメーカーは49社に上るが、上位3社の搭載量は全体の80.6%、上位10社は全体の94.5%と大きなシェアを占めた。高性能21 トランプを相次いで開発したCATLやBYDのような企業はわずかで、多くの企業が旧型車種に対応していた21 トランプが売れず、先行きの不透明感が強まっている。

一方、欧米や日本の大手自動車メーカーでは、急速に進む自動車の電動化に対応し、21 トランプなどの研究開発に力を入れている。トヨタなどでは全固定21 トランプの開発を加速させ、中国や韓国勢が先行している21 トランプ分野での巻き返しを図ろうとしている。次世代21 トランプを巡る開発レースは本格化しており、車載21 トランプ業界での競争が一層激化している。


注:
Cレートは21 トランプの充放電性能を指しており、数値が大きいほど性能が高い。
21 トランプ
執筆者紹介
ジェトロ・上海事務所
劉 元森(りゅう げんしん)
2003年、ジェトロ・上海事務所入所、現在に至る。