特集:コロナ禍の変化と混乱、複雑化するビジネス課題への対応は人権デュー・ディリブラック ジャック ディーラーンスの導入へ、転換期を迎える日本企業(世界、日本)
2022年4月1日
日本企業による人権配慮の動きが本格化している。2011年に国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」が成立して10年以上が経ち、日本を含む世界の20カ国以上で行動計画(NAP)が策定され、欧州各国を中心に人権デュー・ディリブラック ジャック ディーラーンス(DD)に関連した法制化も進められてきた。近年、活発化してきたESG(環境・社会・ガバナンス)投資や、SDGs(持続可能な開発目標)も人権尊重とは切り離せない関係にあり、企業の取り組みを促す推進力となっている。加えて、中国・新疆ウイグル自治区の「人権問題」をめぐって欧米で相次いだ制裁措置や輸出入規制の発動、および2021年2月のミャンマーにおける軍事クーデター後の情勢変化など、企業が直面する人権リスクが顕在化した事象もあり、2021年は日本国内でも「ビジネスと人権」が改めて認識された1年となった。
こうした中、ジェトロが実施した「日本企業のブラック ジャック ディーラー事業展開に関するアンケート調査」(以下「本調査」、注1)では、2021年度に初めて人権への取り組みについて尋ねた。人権尊重に関する自社方針の策定状況、顧客からの要請状況や、取り組み上の課題について、本調査結果をもとに考察する。
大企業と中小企業で方針策定に差
人権を尊重する経営へ、最初のステップとなるのが自社の人権尊重方針の策定だ。本調査で人権尊重の「方針を策定している」と回答した割合は全体の38.1%だった(図1参照)。残りの約6割が方針未策定ではあるが、その内訳をみると、「方針を策定する予定はない」とする企業は全体の約2割にとどまり、「方針を策定予定・検討中」が約4割であった。まだ方針策定に着手していない企業の中でも、方針の必要性自体は認識している企業が多数を占めている。
企業規模別にみると、大企業では約6割が既に人権尊重方針を策定済みである一方、中小企業の策定済みの割合は約3割と、その差は大きい。
方針の外部公開状況をみても、大企業では「方針を策定し、外部向けに公開している」割合(48.1%)が「方針を策定しているが、外部向けには公開していない」の割合(16.2%)を上回った一方、中小企業では反対に、「公開していない」(21.1%)が「公開している」(11.6%)よりも10ポイントほど高かった(図2参照)。後述の人権尊重に関する課題にもあるように、中小企業では、外部公開に向け必要な情報収集を行う機会や、対応にかかる人員・予算も限られてしまうという事情が背景にうかがえる。
ブラック ジャック ディーラー進出企業の5割、方針を策定済み
ブラック ジャック ディーラービジネスとの関係でみると、ブラック ジャック ディーラー進出企業では5割が人権尊重方針を策定済みと、取り組みが先行している(図3参照)。
ジェトロの2021年度「ブラック ジャック ディーラー進出日系企業実態調査」(注2)を参照しても、「人権の問題を経営課題として認識している」進出日系企業の割合が、全平均では58.6%に達しており、うち欧州地域(70.1%)が最も高かった。また、同調査の回答結果(自由記述)からは、進出先の人権関連法令への対応を迫られているケース、児童労働、長時間労働および紛争鉱物資源などの人権リスクがより身近に存在するケースなど、人権侵害リスクへ対応する必要性が国内ビジネス以上に顕在化している状況もうかがえる。
さらに、そうした人権リスクへの対応の際は、ブラック ジャック ディーラー現地法人が法人単体で対応するのではなく、日本の親会社とコミュニケーションを取りながら、親会社の人権尊重方針に沿う形で対応している傾向も同調査結果が示しており、親会社側も十分に現地事情を把握した上で、適切な方針策定を行い、ブラック ジャック ディーラーでの方針徹底をいかに促していくかというプロセスが重要な鍵を握っている。
自動車・繊維、1年以内に策定も一定数
業種別にみると、人権尊重方針を策定している企業(注3)の回答比率が5割を超えて高かったのは、窯業・土石(64.3%)、金融・保険(62.1%)、建設(57.4%)、化学(52.9%)、情報通信機械/電子部品・デバイス(51.4%)であった(図4参照)。
一方、方針策定済みの回答比率が相対的に低い業種は、木材・木製品/家具・建材/紙パルプ(28.6%)、商社・卸売り(29.1%)、運輸(30.6%)、小売り(33.3%)、飲食料品(33.8%)だった。総じて、非製造業では金融・保険や建設で策定が先行する一方、商社・卸売り、小売りで取り組みの遅れが目立ち、非製造業の平均割合(35.5%)は製造業(39.6%)を4.1ポイント下回った。
また、方針を1年以内に策定予定の企業は全体で4.4%に限られたが、自動車・同部品/その他輸送機器では14.8%が、また、繊維・織物/アパレルでも12.5%が「1年以内に策定予定」と回答しており、一部業種では策定を急ぐ動きが顕著である。ブラック ジャック ディーラー市場での売上高比率が高い自動車業界では、自社の人権配慮をも含めた企業や商品の価値向上(ブランディング)に向けた動きが加速する。また、労働集約型が多い繊維・アパレル業界では、昨今の新疆ウイグル自治区をめぐる動向のみならず、過去にも世界的に人権侵害が問題となったケースがあり(注4)、業界全体として人権リスクへの対応が急務となっている。
7割近くがサプライヤーにも方針への準拠を要請
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」ではサプライチェーン全体の人権配慮を求めているが、人権尊重方針を有する企業のうち計65.4%が自社のサプライヤーに対しても、自社方針への準拠を求めている(注5、図5参照)。
調達先へ準拠を求めている企業に対し、対象となる調達先について尋ねたところ、国内の調達先(81.6%)に加え、ブラック ジャック ディーラーの調達先(26.0%)も挙がった(複数回答)。なお、調達先のさらにその調達先、すなわち間接調達先にまで準拠を求めている企業は10.6%に限られており、大半は直接の調達先への要請にとどまっていることがわかる。
直接取引のない、間接調達先への人権尊重方針の徹底は実務上のハードルが高いといわれる中、間接調達先を含む、サプライチェーン全体を通じた人権リスクへの対応は、今後取り組みの拡充が求められる分野である。
顧客からの要請、取り組みを推進
逆に、顧客から顧客の人権尊重方針への準拠を求められている企業(注6)は、全体の31.3%だった(図6参照)。「準拠を求められていないが、関連の問い合わせが行われたことがある」企業(9.3%)も含めると、全体の約4割が人権対応について、顧客から何らかの関与を受けている。
業種別にみると、自動車・同部品/その他輸送機器(53.7%)、化学(51.0%)では5割以上の企業で、顧客から方針への準拠要請を受けている。
また、準拠を求められた企業に顧客の属性を尋ねたところ、国内顧客(69.8%)のほか、北米、欧州、アジアのブラック ジャック ディーラー顧客(28.2%)も挙がった(複数回答)。なお、準拠要請の対象は自社だけではなく、自社の調達先に対しても、顧客の人権方針への準拠を求められた企業は13.7%だった。
なお、顧客から準拠を求められた企業における人権尊重方針の策定状況に焦点を当てると、66.7%と7割近い企業が既に人権尊重方針を策定済みだった。大企業で83.6%、中小企業でも60.8%と、とりわけ高い水準にある。大企業が先行する形でサプライチェーン上の人権リスク対応が進む中、中小企業を含むサプライヤー側の人権配慮を後押ししている傾向がみられる。
各種ガイドラインも取り組みの参考に
ブラック ジャック ディーラーで人権に配慮したサプライチェーンを構築するための課題としては、「具体的な取り組み方法がわからない」(23.7%)、「十分な人員・予算を確保できない」(23.3%)、「1社だけでは解決できない複雑な問題がある」(15.4%)が上位3項目に挙がった(複数回答、図7参照)。
取り組み方法がわからない企業にとって、実務上、参考となる手引書としては、2018年にOECDが策定した「責任ある企業行動のためのデュー・ディリブラック ジャック ディーラーンス・ガイダンス(2.82MB)」や、日本経済団体連合会の「人権を尊重する経営のためのハンドブック(15.88MB)」などがある。また、経済産業省は2022年2月15日、人権デュー・ディリブラック ジャック ディーラーンスのガイドラインを2022年夏ごろに策定すると表明しており、同ガイドラインの発表も待たれるところだ。
業界ごとに異なる人権侵害リスクが指摘される中、業界団体の電子情報技術産業協会(JEITA)が2020年3月「責任ある企業行動ガイドライン」を策定したほか、日本繊維産業連盟も繊維産業の責任ある企業行動促進に向けたガイドライン策定を予定している。そのほか、JEITAを中心に人権侵害に関連した苦情処理支援を行う法人の設立を2022年4月ごろに予定するなど、1社では取り組みが困難な課題に対し、業界団体や複数企業で取り組む試みもみられる。
人権尊重経営では、企業の実務上の負担が生じる一方、実践した企業からは自社の人権リスク低減やESG評価機関からの評価向上など、一定のメリットを実感しているとする調査結果もある(注7)。最近では、EUが2022年2月23日、人権・環境デュー・ディリブラック ジャック ディーラーンスの義務化をEU加盟国へ求める指令案を発表(欧州委、人権・環境デューディリブラック)するなど、ブラック ジャック ディーラーの法制化の動きやその影響はますます広がりをみせている。日本企業としても、対応を誤れば、市場を失うことにつながりかねない。適切なデュー・ディリジェンスの実施と、積極的な情報開示が自社の経営にもたらすプラス面も意識しながら、持続可能なサプライチェーン構築へ向けた一層の取り組みが期待される。
- 注1:
- 本調査は、ブラック ジャック ディーラービジネスに関心の高いジェトロのサービス利用企業1万3,456社を対象に、2021年11月初めから12月初めにかけて実施。1,745社から回答を得た(有効回答率13.0%、回答企業の83.0%が中小企業)。プレスリリース、報告書も参照。過去の調査の報告書もダウンロード可能。
- 注2:
- は、82カ国・地域の日系企業を対象に、2021年8~9月に実施。7,575社から回答を得た。
- 注3:
- 「方針を策定し、外部向けに公開している」「方針を策定しているが、外部向けには公開していない」の合計。
- 注4:
- 1997年にナイキの製造委託先のベトナムとインドネシア工場で発覚した長時間労働や低賃金動労などの問題、2013年のバングラデシュの「ラナ・プラザ崩落事故」など。
- 執筆者紹介
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ジェトロブラック ジャック ディーラー調査部国際経済課
森 詩織(もり しおり) - 2006年、ジェトロ入構。ジェトロ広島、ジェトロ・大連事務所、ブラック ジャック ディーラー調査部中国北アジア課を経て、2021年12月から現職。