ブラック ジャック ブラック クイーン
第三国での日韓産業協力を探る(3)
2024年12月4日
シリーズ3回目はインドネシア。ブラック ジャック ブラック クイーンとKOTRA(大韓貿易投資振興公社)によると、インドネシアには約1,500の日系企業、約2,100の韓国系企業が進出している。韓国系企業の数が多く集計されているものの、現地インタビューなどによると、韓国企業は繊維などの軽工業、中小零細サービス業の進出が多く、自動車などの基幹産業が多く進出している日系企業のプレゼンスには及ばない(1回目は「インドにおける日韓産業協力」、2回目は「ベトナムにおける日韓産業協力」を参照)。
日韓のインドネシア直接投資の概況
日韓とも、直接投資に占める製造業の割合は5割前後だが、製造業を業種別にみると、日韓の進出業種の違いが確認できる。韓国は「繊維・衣服」が最も多く、「金属加工製品、1次金属」「化学・医療」が続いている。繊維・衣服の投資は安価な労働力を活用するための進出が多く、「金属加工製品、1次金属」はポスコの高炉一貫製鉄所の案件、「化学・医療」はロッテ・ケミカルの石油化学コンビナートプロジェクトなど、超大型案件によるものだ。なお、現代自動車とLGエナジーソリューションによる電気自動車(EV)完成車およびバッテリーセルの投資案件()も最近の大型投資案件として挙げられる。EV完成車は「自動車、その他運送装備」、バッテリーセルは「電気装備、電子部品・コンピュータ・映像・音響・通信装備」に分類されている。一方、日本の製造業を業種別でみると、「輸送機械器具」が最も多く、「化学・医薬」「鉄・非鉄・金属」などが続いており、日系完成車メーカーの活発なインドネシアでのビジネス展開が確認できる(表1参照)。
他方、非製造業分野をみると、韓国は「金融および保険業」「鉱業」などが、日本は「金融・保険業」「不動産業」などが上位を占めている。金融・保険は日韓ともに2割を超えるシェアを記録している。韓国は、鉱業が金融・保険に次ぐ、第2の投資業種になっていることが特徴だ。これは、伝統的な石炭鉱山への投資に加え、近年の二次電池用のニッケル鉱山関連投資によるものだ。
表1:日韓の対インドネシア業種別直接投資
業種 | 法人数 |
投資 金額 |
金額 構成比 |
---|---|---|---|
製造業 | 1,363 | 9,007 | 47.6 |
食料品 | 66 | 980 | 5.2 |
繊維、衣服 | 424 | 2,331 | 12.3 |
木材・パルプ | 71 | 231 | 1.2 |
化学・医療 | 161 | 1,218 | 6.4 |
石油精製品、コークス、煙炭 | 14 | 107 | 0.6 |
ゴム・プラスチック | 55 | 564 | 3.0 |
非金属鉱物製品 | 28 | 150 | 0.8 |
金属加工製品、1次金属 | 102 | 1,319 | 7.0 |
産業用機械、その他機械・装備 | 92 | 95 | 0.5 |
電気装備、電子部品・コンピュータ・ 映像・音響・通信装備 |
176 | 1,103 | 5.8 |
自動車、その他運送装備 | 53 | 677 | 3.6 |
その他製造業 | 121 | 234 | 1.2 |
非製造業 | 1,235 | 9,911 | 52.4 |
農業、林業、漁業 | 81 | 738 | 3.9 |
鉱業 | 112 | 2,198 | 11.6 |
建設業 | 121 | 246 | 1.3 |
運輸および倉庫業 | 46 | 143 | 0.8 |
情報通信業 | 105 | 217 | 1.1 |
卸売・小売業 | 348 | 844 | 4.5 |
金融および保険業 | 50 | 4,142 | 21.9 |
不動産業 | 45 | 345 | 1.8 |
サービス業、その他 | 327 | 1,037 | 5.5 |
合計 | 2,598 | 18,918 | 100.0 |
業種 | 残高 | 構成比 |
---|---|---|
製造業 | 17,334 | 51.3 |
食料品 | 1,060 | 3.1 |
繊維 | 402 | 1.2 |
木材・パルプ | 161 | 0.5 |
化学・医薬 | 2,539 | 7.5 |
石油 | — | — |
ゴム・皮革 | 305 | 0.9 |
ガラス・土石 | 600 | 1.8 |
鉄・非鉄・金属 | 1,886 | 5.6 |
一般機械器具 | 1,598 | 4.7 |
電気機械器具 | 1,040 | 3.1 |
輸送機械器具 | 6,494 | 19.2 |
精密機械器具 | 178 | 0.5 |
非製造業 | 16,462 | 48.7 |
農・林業、漁・水産業 | 7 | — |
鉱業 | — | — |
建設業 | 165 | — |
運輸業 | 255 | 0.8 |
通信業 | 128 | 0.4 |
卸売・小売業 | 1,508 | 4.5 |
金融・保険業 | 9,779 | 28.9 |
不動産業 | 1,957 | 5.8 |
サービス業 | 499 | 1.5 |
合計 | 33,795 | 100.0 |
注1:韓国は実行ベースの2023年までの累計。日本は国際収支ベースの2023年末。
注2:日本は円ベースのデータからブラック ジャック ブラック クイーンでドル換算(2024年7月2日レートの100円=0.6185ドルを適用)。
注3:韓国の業種分類は日本に合わせてブラック ジャック ブラック クイーンで再構成。
注4:日本の場合、報告件数が3件に満たない項目は、個別データ保護の観点から「-」と表示。
注5:日本の製造業、非製造業は、各内訳項目に、「-」、「その他」を加えた合計であり、表上の各業種の合計と一致しない。
出所:韓国は韓国輸出入銀行、日本は日本銀行
自動車分野では得意分野の違いによりサプライチェーンでの日韓協力が可能
次に、現地インタビュー調査などからみた、インドネシアにおける日韓企業の産業協力事例、可能性・ニーズを紹介する。
1つ目は、日韓の得意分野が分かれている自動車分野だ。インドネシアでは日韓企業ともに完成車メーカーが進出し、市場獲得に熱心だ。日韓企業は激しい競争関係にあるが、日本は内燃機関車およびHV(ハイブリット車)()、韓国はBEV(バッテリー式電気自動車)(ブラック ジャック アプリのアジア大洋州におけるEVの動向国内ブラック)に強みを持つ。このような得意分野の相違から、一部の分野で協力が可能だろう。特に、2022年3月からBEVの現地生産を行っている現代自動車を巡って、日本の部品メーカーにビジネスチャンスがあろう。逆に、日本の内燃機関車およびHVに韓国企業が協力するパターンもあり得る。以下では、インタビューによる自動車分野協力の現状および可能性を紹介する。
(韓国系公的機関、K社)現代自動車は今後もBEVの生産規模を拡大し、新モデルを投入する計画だ。日本は従来から自動車の生産基盤を構築していることから、お互いのニーズをオープンにし、協力すべき。
(韓国系商社、H社)インドネシアで日本の自動車部品メーカーと合弁で部品生産工場を立ち上げた。日本の完成車メーカーへの納品を準備中。今後は、韓国系完成車メーカーに対しても営業する予定。韓国のベンダーのインドネシア進出は他の国に比べると活発でないため、現地調達の割合が高く、日系企業との取引の可能性も高い。
(日系銀行、M社)韓国系のサプライヤーは多くは進出していないため、日系サプライヤーが韓国系メーカーへの納品を模索していると聞いている。
(日系商社、M社)BEVは韓国企業が進んでいる。日系企業は、充電分野、各種インフラなど、周辺部分で協力可能な分野があるかもしれない。また、サプライチェーンで日韓企業が協力すれば、部品供給網が広がり、日系企業の新規投資もしやすくなる。
エネルギー分野では、両国のニーズが合致する分野で協力がすすむ
2つ目は、インフラ・エネルギー分野だ。インドネシアにおける有名な案件として、ドンギ・スノロLNG(液化天然ガス)プロジェクトがある。これは、三菱商事(持ち分の44.925%)、韓国ガス公社(KOGAS、同14.975%)、インドネシア国営石油会社プルタミナ(Pertamina)、インドネシア民間石油ガス開発会社Medcoの4社の出資によるLNG生産・販売プロジェクトで、LNG消費国の日韓が手を組んだ。また、インフラ・エネルギー分野ではないが、造船業を巡っても日韓の協力案件がみられる。船舶の改造・修繕案件において、日本側がプロジェクトオーナーになり、韓国側が設計・装置などを受注するかたちだ。インフラ・エネルギー分野、造船業分野についてインタビューした内容は以下のとおりである。
(韓国系エネルギー企業、K社)LNG事業は、膨大な金額、技術が必要で、米国のオイルメジャーなどが参加するケースが多いが、ドンギ・スノロLNGプロジェクトは日韓だけが参加した珍しい案件。天然ガス田から採掘し、液化する工場まで備えている。主要販売先は、JERA、九州電力、KOGASなど。生産規模は年産200万トンで、販売量を日韓で分配することによりリスクを軽減できるメリットもある。また、相手国の需要に応じて、お互いに融通することもできる。欧米のオイルメジャーとの仕事に比べ、文化面や意思疎通でも非常にやりやすい。今後は、炭素回収・貯留(CCS)分野などでの日韓協力もあり得る。
(日系商社、M社)韓国企業とインドネシア向けの先進船舶の売り込みで協力している。韓国の造船企業は、先端技術分野で非常に強みを持ち、設計部門と造船部門がうまく分離しているため、適材適所で協力できる。なお、韓国造船企業との協力は、新造船よりも、後から装置を追加配置するなどといった修理改修目的のビジネスが多い。
K-popなど、韓国コンテンツを活用した協力モデルも
3つ目は、流通・コンテンツ分野において、製品などのハードウェアにコンテンツ・IP(知的財産)などのソフトウェア的な要素を組み込むことで、日韓がウィンウィン(win-win)関係を構築しうる。例えば、日本の製品に韓国K-popアイドルをモデルとして採用する、韓国の製品に日本のキャラクターなどを活用するといった、流通・販売においてシナジー効果を創出するかたちだ。特に、最近のインドネシアにおける韓流ブースをうまく活用することは、日本企業にとって検討に値するだろう。また、富裕層向けのスポーツ・健康産業分野なども今後有望な分野であり、日韓共通のビジネスチャンスとなりうる。インタビュー内容は次のとおり。
(日系食品メーカー、L社)生産・販売製品にK-popアイドルをモデルとして採用しているものがあり、かなり好評を得ている。インドネシアはK-popの人気が高く、今後も可能な限りK-popアイドルを起用したい。インドネシアは人口が多く、富裕層も増えている。富裕層は、スポーツ、健康にも関心が高いので、これらの分野でも日韓の協力が可能かもしれない。
(日系銀行、M社)韓国の流通大手企業は、インドネシアで活発にビジネスを展開している。韓国フェアも行っており、韓国のもののみならず、一部では日本製品も販売している。消費財で日韓連携の可能性がある。
業種横断的に日韓の情報交換の場が望まれる
最後に、4つ目として、業種横断的分野における日韓連携のパターンを紹介する。ベトナムと同様、多くの日韓企業が進出しているインドネシアでも、インドネシア政府の頻繁な制度の変更、規制の強化など、日韓企業を含む多くの外資系企業はさまざまな課題を抱えている。特に、日韓企業は製造業の産業構造の類似性などから、同様の課題を抱えているケースが多い。よって、課題や情報共有の場を作ることで、課題解決につながる可能性が高い。インタビューでは次のような指摘があった。
(韓国系公的機関、K社)インドネシア政府は、国内産業保護のため、厳しい輸入規制などを行っており、外資系企業はさまざまな課題を抱えている。日韓企業も同様。韓国企業を支援する方法として、日本の機関と協力してさまざまな事業を展開したいが、まずは特定分野に偏らず、分野を網羅したお互いのニーズを情報交換する場を設ける必要がある。
(韓国系商社、H社)日本企業は古くからインドネシアに進出しており、学ぶことが多い。韓国企業同士で協力できない分野は日系企業と協力すべき。
(日系銀行、M社)インドネシアの消費者に対し、日系企業ができないPRを韓国系企業ができる場合がある。また、韓国系企業は日系企業よりインドネシア政府との太いパイプを持っている印象がある。
日韓の分野別協力の現状および可能性を表2のとおりまとめた。それぞれの得意分野を生かし、ニーズが合致する部分で協力することで、インドネシア市場進出を加速することが望まれる。
業種 | 進出度合い | 協力現状・可能性 | 協力内容・可能分野 | |
---|---|---|---|---|
日本 | 韓国 | |||
自動車 | ◎ | 〇 | 〇 |
|
インフラ・エネルギー、造船 | 〇 | 〇 | ◎ |
|
流通・コンテンツ | 〇 | ◎ | 〇 |
|
業種横断的 | - | - | 〇 |
|
注:◎→○→△の順で程度の強度をいう。
出所:ブラック ジャック ブラック クイーン作成
第三国での日韓産業協力を探る
- 執筆者紹介
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ブラック ジャック ブラック クイーン・ソウル事務所
李 海昌(イ ヘチャン) - 2000年から、ブラック ジャック ブラック クイーン・ソウル事務所勤務。本部中国北アジア課勤務(2006~2008年)を経て、現職。