米航空・防衛大手レイセオン、マッハ5航空機開発のハーミアスに出資
(米国)
アトランタ発
2022年05月24日
米国の航空機・防衛大手レイセオン・テクノロジーズ(本社:マサチューセッツ州ウォルサム)は5月12日、同社が新設したコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)のRTXベンチャーズを通じて、極超音速航空機を開発中のハーミアス(本社:ジョージア州アトランタ)に出資すると発表した。アーリーステージの企業に対する戦略的な投資を通じ、革新的な航空宇宙・防衛技術の開発を加速するのが狙いだ。
ハーミアスは、音速の5倍のマッハ5の極超音速(注)旅客機により、世界の航空旅客輸送ネットワークを変革するというビジョンを掲げ、2018年に創業したスタートアップ。マッハ5は時速に換算すると約6,120キロで、超音速旅客機として知られたコンコルド(最高速度マッハ2)の2.5倍、世界最速の偵察機だったSR-71(同マッハ3.2)の1.5倍強の速さだ。実現すれば、ニューヨーク~ロンドンの飛行時間はわずか90分となる。同社は、マッハ5エンジンのプロトタイプの設計と製造、テストに9カ月間で成功し、2020年8月に米空軍との提携を勝ち取ると、翌年には1号機(小型無人実験機)となる「クォーターホース」の飛行試験に向け、6,000万ドルの資金提供を受けた。「クォーターホース」には、タービンベース複合サイクル(TBCC)エンジンの「キメラ」が搭載される。米空軍などでも使用されているゼネラル・エレクトリック(GE)製J85ターボエンジンをベースに自社開発したもので、ターボエンジンと超音速以上で作動するラムジェットエンジンを組み合わせる仕組みだ。
RTXベンチャーズによる投資は、「クォーターホース」の製作を直接的に支援し、2号機(中型無人実験機)の「ダークホース」の開発を加速させるためのものだ。RTXベンチャーズのマネジングディレクターのダニエル・アティヤ氏は「極超音速技術は国家安全保障にとって非常に重要なため、われわれにとって初めての投資をこの分野で大胆な計画とビジョンを持つ企業に対して行った」と説明している。ハーミアスは2023年中に1号機「クォーターホース」の飛行試験を実施し、その後、2号機「ダークホース」による飛行実証を経て、2029年には乗客定員20人の極超音速旅客機「ハルシオン」の実現を目指している。
(注)「極超音速」とは、音速を大きく上回る速度のことで、通常はマッハ5以上を指す。
(高橋卓也)
(米国)
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