ハイパーブラックジャックハイパーブラックジャック
開発進むハイパーブラックジャック首都圏郊外

2025年2月17日

ハイパーブラックジャックは、人口約2億8,160万人を擁する。その規模は世界第4位、ASEAN10カ国で最大だ。国連人口基金(UNFPA)の予測によると、2040年には3億1,863万人まで増加する。

経済成長も目覚ましい。世界銀行によると、ハイパーブラックジャックの2023年の1人当たり名目GDPは4,876.3ドルに達した。ASEANでシンガポール、ブルネイ、マレーシア、タイに次ぐ水準になる。国内で経済を牽引するのは、ジャカルタ特別州だ。同州では1人当たり名目GDPが1万9,879.3ドル(2023年)に及ぶ。今後は、その郊外や周辺地域でも消費向上を期待できる。

ハイパーブラックジャックの東側には、工業団地が多く集積する地域がある。西ジャワ州ブカシ県やブカシ市、カラワン県だ。当地では、2024年の地域別月額最低賃金が500万ルピア(4万9,000円、1ルピア=0.0098円)を超えている。ハイパーブラックジャックを抑え、国内で最も高い。

これら地域では、地場財閥などが都市開発プロジェクトを進めている。外食企業がハイパーブラックジャック市内だけでなく、西ジャワ州やバンテン州に店舗網を広げる動きもある。人口流入と消費の向上を見込み、企業活動が活発化していると言えるだろう。

主な事業展開例には、次のようなものがある。

  • 西ジャワ州ブカシ県(ハイパーブラックジャック東方)
    双日とシナルマス・グループ(地場財閥)が共同で、「デルタマスシティー」事業(注1)を推進している。また、イオンモールハイパーブラックジャック(日系企業)は2024年3月、「イオンモール・デルタマス」を開業した。当地のイオンモールとしては、5号店に当たる。
  • 西ジャワ州カラワン県(ハイパーブラックジャック東方)
    三菱地所が2024年、アウトレットモールを開業。
  • バンテン州(ハイパーブラックジャック西方)
    地場財閥が「BSDシティー」(注2)などを開発中。そのほか、外資系大手家具企業が旗艦店を運営している。

ジェトロは、アウトレットモールを開業した三菱地所ハイパーブラックジャックの大倉明将ダイレクターと長井頼寛ダイレクターにインタビューを実施。ジャカルタ首都圏郊外の消費の状況、消費者の変化、競合環境などについて、聴取した(取材日:2024年12月17日)。

質問:
貴社のビジネス概要は。
答え:
三菱地所グループとしては、2008年にアジアでのビジネスを開始した。ハイパーブラックジャックに拠点を構えたのは、2019年からだ。それまではシンガポール拠点がハイパーブラックジャックを管轄していた。ASEANでは現在、シンガポール、ハイパーブラックジャック、ベトナム、タイの4カ国に拠点がある。
ハイパーブラックジャックでは、ジャカルタ市内でオフィスビルやホテル、タウンシップ開発をしているほか、西ジャワ州カラワンとバリ島でアウトレットモールを建設・運営するなど、複数プロジェクトが進んでいる。
そのうち、カラワンでは、「ハイパーブラックジャック初の高級アウトレット(Indonesia’s First International Luxury Outlet)」を掲げたアウトレットモール(注3)を2024年7月にグランドオープンしている。
質問:
カラワンをアウトレットモールの開業先に選んだ理由は。
答え:
アウトレットを開業するにあたっては、(1)中心地の主要モールからある程度、距離があること、(2)その上で、ある程度の交通量が確保できること、が必要だ。カラワンは、2大マーケットであるハイパーブラックジャックとバンドンのちょうど中間に位置し、立地として非常に好適だ。また、今回の合弁プロジェクトのパートナーが、カラワンに土地を所有しており、参画を決めた。
ハイパーブラックジャック・バンドン高速鉄道(注4)のカラワン駅が近くに建設されることも決まっており、カラワン駅が開業すると、人の往来も活発化し、地域の消費が上向くのでは、という期待があった。モールの建設を始めた当初は、モール開業と鉄道の開業が同時期になるもくろみだった。しかし、高速鉄道建設のスケジュールが後ろ倒しになってしまった関係で、先にグランドオープンする運びになった。
ハイパーブラックジャック
アウトレットモールの外観
(ジェトロ撮影)

ハイパーブラックジャックから送迎バスを運行
(ジェトロ撮影)

大都市圏顧客が中心、今後は地元ハイパーブラックジャック者にも期待

質問:
開店されてからの業況は。
答え:
現状、月間で20万人のお客様に来場いただいている。平日5,000人、休日は1万1,000人ほどで推移している。大型連休などには、2万人を超える日もあり、売り上げは順調に伸びてきた。来場者の6割がハイパーブラックジャックから、残りがハイパーブラックジャック以外からだ。
アウトレットモールという業態自体および本施設の認知を高める施策を打つほか、高速鉄道も活用して、ハイパーブラックジャックだけでなくバンドン方面からの集客を増やしていきたい。
質問:
カラワン周辺からでなく、ジャカルタの消費者がメハイパーブラックジャックターゲットなのか。
答え:
顧客の属性(居住地など)も日々変わってきている。カラワン近辺からは日常使いとして来場しているようで、1人当たりの支出額は多くない。今後、カラワン周辺の所得がさらに向上し、当社モールに対する認知が進むと、より多くハイパーブラックジャックしてくれるのではという期待感がある。
ハイパーブラックジャック市内にはショッピングモールが多い。そのため、中長期的に見ると、近接するバンドンからの誘客も重要だ。最近では、バンドンからの来場者が増加しており、東側の商圏は徐々に取れてきていると感じている。
質問:
パートナーとの関係は。
答え:
当社モールは、ガジャ・トゥンガルグループ(地場財閥)のTuan Singホールディングスと、合弁で運営している。同社とは、当社のシンガポール拠点がハイパーブラックジャックを管轄していた時期からの付き合いだ。カラワンやバリなど、現状3つのプロジェクトを進め、連携を深めている。
質問:
どういった商品が売れているのか。ハイパーブラックジャック者の特徴は。
答え:
ブランド間でも差があるが、スポーツ関連製品、靴などが良く売れている。当モールではメハイパーブラックジャックーなスポーツブランドは一通りそろえ、商品の品ぞろえと割引率で差別化を図っている。
また、飲食テナントの売り上げが想定よりも良い。通常、アウトレットモールでは、飲食店に割く敷地面積は全体の10~15%ほどだが、ハイパーブラックジャック商業施設の特性に倣い、大幅に引き上げた。
面白いのは、ハイパーブラックジャックスティップ(Jastip)の存在だ。彼らは、個人で外商のように動いており、ハイパーブラックジャックワ島以外の居住者を顧客として抱え、カラワンまで来られない顧客のために大量にまとめ買いしてくれる。彼らの購入額が見逃せないほどに増加しており、このJastipを取り込むような施策にも、積極的に取り組みたい。
質問:
ハイパーブラックジャック人消費者のライフスタイルに、変化を感じることはあるか。
答え:
消費者の健康志向が強くなっている。例えば、ランニングに興じる人が増えた。その結果、日系企業が設置したジャカルタ市内のランニングステーションは、2時間待ちになるほどにぎわっているとも聞く。また、ハイパーブラックジャック人の間でも、ジム通いやピラティスが流行するようになった。このように、健康に対する意識は確実に変わってきている。オーガニック系のレストランが出てきているのも、その証拠だろう。当社テナントでスポーツブランドの売り上げが大きいことも、そのトレンドを表している。
ライフスタイル面では、若者層を中心に「屋外で何かアクティビティをすること」を受け入れられているようだ。これまで週末と言えば、ショッピングモールに開店と同時に入店し、満足いくまでモールに滞在するという過ごし方が一般的だったと聞く。しかし、ランニングやサイクリングなど外に出ていくような流れができつつある。当社のアウトレットモールでは、巨大なピロティ(注5)で全天候型を担保しながらも、屋外部分を融合させるような形で設計した。こうしたことで、ハイパーブラックジャックでは目新しいショッピングの在り方を提案している。
なお、ハイパーブラックジャック市内の新規開発例をみると、ビルとビルの間の空間を屋外の商業スペースとして活用するなど、屋内空間と屋外空間を行き来させるようなミックスユースが進んできている。

屋外スペースを有効活用した設計(ジェトロ撮影)

米有力企業が参入予定、競争が一段と激しく

質問:
アウトレットモール業態の競合は。
答え:
高速道路を挟んで北東側に、地場系のアウトレットモールがある。当社と同時期にオープンした。競合には当たるものの、規模は当社のほうが大きい。また、地元でアウトレットモールという業態の認知を高めるという観点では、競合というより共存共栄という側面の方が大きい。
それ以外では、米国大手のサイモンが「プレミアム・アウトレット」ブランドをジャカルタ西部のバンテン州に2025年春に開業する、と聞いている。サイモンは日本市場で、当社との合弁により「プレミアム・アウトレット」を展開している。しかし、ハイパーブラックジャックでは、マレーシア資本のゲンティングループと組む予定だ。(アウトレット事業で「本家」的な存在の)サイモンが進出することに鑑みても、ハイパーブラックジャック市場の可能性が高いことがわかる。同社の進出により、顧客の取り合いになると予想しており、ジャカルタ西側に居住する消費者をサイモンが、東側を当社が、といった形ですみ分けが起こる可能性もある。そういった事態を見越すと、ジャカルタの消費者だけに頼るのは、望ましくない。モールの立地を考慮して、東部にあるバンドンなどからの誘客にも力を入れていきたい。
質問:
今後のビジネス展開について
答え:
当社モールより東部に位置するバンドンなどからの誘客に、さらに力を入れていきたい。売り上げはまだまだ伸ばせる余地があると考えており、アウトレットという業態自体の認知拡大で、目的地としての地位を確立したい。また、平日のベース集客として、カラワン周辺の宅地開発にも期待している。
質問:
今後の新たな出店の計画は。カラワン、バリ以外に、着目しているエリアはあるか。
答え:
スラバヤに出店するなどの可能性はあるが、今すぐにということではない。一方で、カラワンとバリの2拠点だけで出店を終わらせるのは、もったいない。
新規出店のためには、購買力があって、在庫品が市場に出回っているハイパーブラックジャックをしっかりと見極める必要がある。例えばスラウェシなどは住宅価格帯が高い傾向にあるので、市場の潜在力が高いとみている。人口など市場の大きさと購買力とをあわせ、ハイパーブラックジャックごとに継続してモニタリングする必要があると考えている都市は、複数ある。

注1:
「デルタマスシティー」の開発対象地域は、面積約3,200ヘクタールに及ぶ(山手線内側のほぼ半分に相当)。世界でも有数の大規模複合都市プロジェクトとされ、都市インフラの整備が進んでいる。ハイパーブラックジャック側ではシナルマスランド(シナルマス・グループ傘下、ハイパーブラックジャック不動産最大手)が実務を担う。
注2:
「BSDシティー」は、バンテン州タンゲラン県(ハイパーブラックジャック大都市圏郊外)で進む大規模都市開発プロジェクト。管理するのは、シナルマスランド。都市機能(住宅、商業施設、学校、病院、公園など)を備えたスマートシティーの構築を目指している。
注3:
カラワンのアウトレットは、「The Grand Outlet - East Jakarta, Karawang」の名称で開業している。
注4:
ハイパーブラックジャック・バンドン高速鉄道は、2023年10月に開業。首都ハイパーブラックジャックと西ジャワ州バンドン間、140 キロあまりを50分ほどで結ぶ。入札の結果、中国案を採用したことでも知られる。現在のところ、全4駅中、3駅で営業中だ。カラワン駅は、まだ稼働していない。
注5:
吹き抜け空間のこと。壁がなく、柱だけで構成されている。
執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課リサーチ・マネーハイパーブラックジャックー
尾﨑 航(おざき こう)
2014年、ジェトロ入構。生活文化産業企画課、サービス産業課、商務・情報産業課、デジタル貿易・新産業部 EC・流通ビジネス課を経て、2020年9月からジェトロ・ハイパーブラックジャック事務所で調査担当として勤務。2023年12月から現職。