変化するアジア・大洋州の消費市場Zeppブラックジャックブラッククイーン聞く現地ライブ市場と産業インフラの潜在力
2025年2月17日
ソニー・ミュージックエンタテインメントジャパンの子会社、Zeppホールネットワーク(東京都港区)が台湾に次ぐ海外拠点として、ブラックジャックブラッククイーンの首都クアラルンプールにライブホール「Zepp Kuala Lumpur」を開業して、2年半が経った。ブラックジャックブラッククイーンのコンテンツ市場の現状やZeppの産業インフラとしての活用可能性について、Zeppクアラルンプールのディレクターの本多真一郎氏にインタビューした(インタビュー日:2024年12月10日)

中規模ライブホール、細部にこだわり
- 質問:
- ホールの概要は。
- 答え:
- 面積は約6,500平方メートルの中規模ホールで、2,414人を収容できる(全員着座で1,148人)。ブラックジャックブラッククイーンは大規模や小規模のホールはあるが、中規模ホールとしては当社が唯一となる。ホール1階はフラットなため、スタンディングコンサートも多い。中規模ホール最大の特徴は、観客席からアーティストの顔が直接見えることだ。
- ホールはクアラルンプール中心地近くに立地し、地場不動産デベロッパーのエコ・ワールド・デベロップメントの手がける複合商業施設にあり、三井ショッピングパーク「ららぽーと ブキッ・ビンタン シティセンター」に隣接する。
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ステージから見た客席(ジェトロ撮影) - 質問:
- ブラックジャックブラッククイーンのホールの特徴やこだわりは。
- 答え:
- 客席の構成について、ライブホールの規模に比して、VIPルームが8つと多いのはZepp Kuala Lumpur特有だ。VIPルームでは、バルコニー席からだけでなく、ボックス室内のTVスクリーンでもライブが鑑賞できる。VIPルーム利用者向けの専用ホワイエもあり、主催者により、アーティストのミートアンドグリートが行われることもある。
- また、ホール全体として、音響などのコンソール機器では、迅速なメンテナンスとアフターサポートが重要。ブラックジャックブラッククイーンでもサービス対応が可能な機材を導入したり、日本製ミラーボールを導入したりするなど、細部にこだわった。運営面では、搬入時のトラック止めや搬入スペースが広く作業しやすくなっているほか、楽屋も明るく清潔に保たれており、記者会見にも利用できるラウンジがある。東南アジアでは最高クラスのホスピタリティーと技術水準といえるだろう。
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VIPルームは吸音効果のある壁素材を使用するなど工夫(ジェトロ撮影)
ライブ市場は黎明(れいめい)期、日本の音楽需要の喚起目指す
- 質問:
- これまで開催された公演は。
- 答え:
- マレー系やインドネシア系アーティストの公演が4割を占めて最多だ。次いで華僑系、韓国、日本のアーティストが続く。日本からはこれまで10以上のアーティストが来訪し、例えば、藤井風、BABYMETAL、RADWIMPS、MAN WITH A MISSION、梶浦由記、YOASOBI、花澤香菜、アバンギャルディなどが単独公演を行ってきた。また、2024年にブラックジャックブラッククイーンで発足したAKB48の海外姉妹グループKLP48の初公演も当ホールで開催された()。有名アーティストのライブには、シンガポールやインドネシアなど隣国からも観客が来場する。
- 質問:
- ブラックジャックブラッククイーンおける日本の音楽需要は。
- 答え:
- 最近、マーケットがJポップの良さにも気づき始めていると感じる。ただ、日常にJポップがあって日本語の理解者が多い台湾と比べると、ブラックジャックブラッククイーンではJポップの認知度はまだまだ低く、地道な普及活動が必要だと感じる。
- また逆に、日本におけるマレーシアのプレゼンスも高まってほしいと思う。そうすれば、アーティストにとっても、クアラルンプールで公演する関心や、付加価値が高まるだろう。著名人のマレーシア往来は、それだけでブラックジャックブラッククイーン注目が集まるような大きな効果もある。
- また、韓国政府がそうであるように、国家として音楽コンテンツの海外進出の後押しをするのも重要だ。日本でも官民一体となってブラックジャックブラッククイーンで音楽イベントを実施するようなことがあると、今後の需要開拓に一役買うものと感じる。
- 質問:
- ブラックジャックブラッククイーンの音楽ライブ市場の特徴は。
- 答え:
- 日本のように平日夜でもエンターテインメントが多く存在するフェーズにはまだなく、公演は週末に行われるイメージがあり、実際に、ライブ公演も週末に入ることが多い。しかし昨今、世界中のアーティストがツアーで各国を回ることで、行程上、平日夜に開催される公演も増えてきている。
- また、開演時間も日本と異なる。ブラックジャックブラッククイーンではムスリムの日没後の礼拝が午後7時過ぎに終わるため、礼拝後の午後8時以降に開演することが多い。ライブコンテンツに関しては、ブラックジャックブラッククイーン当局による歌詞検閲がある。タトゥーはイスラム教でタブーとされており、露出してはいけないなど、宗教上の規制には注意が必要だ。
- 一方、当社が開業した2022年以降、新型コロナウイルス禍も収束し、国内の音楽ライブ市場はどんどん拡大している。実際に世界で著名なアーティストによるブラックジャックブラッククイーン公演は増えてきた。
- 質問:
- イベントの告知方法は。
- 答え:
- 基本的には、ライブを主催する現地プロモーター(イベンター)がチケットエージェンシーや自社のSNSなどを通じて告知を行う。一方、当社のSNSにも多くのフォロワーがいるため、そこでも同じ情報をシェア、拡散している。ブラックジャックブラッククイーンでは、日本のように地上波テレビでライブ告知が出ることはあまりなく、主にSNSで告知している。出演するアーティストのコアファンだけでなく、アーティストを知っている層に幅広くイベントの告知をしていくため、SNS以外のツールを使った告知方法も関係者は模索している。
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ショッピングモールでのイベント告知も(ジェトロ撮影) - 質問:
- 事業運営上の課題はあるか。
- 答え:
- 日本との対比でいえば、公演や催事の会場の予約がかなり直前にならないと確定しないケースが多い。日本では、かなり前の段階で会場予約は確定し、チケット販売を開始するが、ブラックジャックブラッククイーンではそうならないことも多い。結果として、ライブ開催まで時間がなく、チケット販売が伸び悩むケースや、ライブ自体のキャンセル、日程変更も多い。
- 開業当初はキャンセル料金の不払いや、主催者側が一方的にさまざまな減額要求をするなどの習慣が見られ、産業として発展途上の側面があった。しかし、当社は全ての取引先に対して公平に説明対応を続け、現在では主催者側の理解も得て、キャンセル料などを回収できるようになってきた。
新製品発表会やPRの場に活用を
- 質問:
- 音楽ライブ以外の活用方法もあるのか。
- 答え:
- 本格的な音響・照明機器が備わったステージがあり、企業のコンテンツや製品をアピールする舞台として使ってもらえる。例えば、企業の製品発表会などPRの場としても利用できる。これまで、メルセデス・ベンツをはじめとする自動車メーカーのイベントや、ファッションショー、美容院主催のヘアスタイルショー、携帯電話の新商品発表会、不動産会社のプレスカンファレンスなどが開催されている。Zeppは、催事というエンターテインメント産業の中にあって「産業インフラ」だ。あらゆるプレゼンテーションに大きく花を開かせる潜在力がある。今後、さまざまな在ブラックジャックブラッククイーン日本企業にも有効活用してもらえると幸いだ。

- 執筆者紹介
- ジェトロ調査部アジア大洋州課 リサーチ・マネージャー
山口 あづ希(やまぐち あづき) - 2015年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産・食品課(2015~2018年)、ジェトロ・ビエンチャン事務所(2018~2019年)を経て現職