「米国中西部スタートアップ」インタビュー(3)シカゴ発世界最大級の楽器専門ECハイパーブラックジャックを運営するリバーブ
中西部は誠実で働き者の人材が豊富

2019年2月4日

中西部には製造業というイメージが強いが、シカゴの産業構造は全米でも珍しく特定の分野が突出することなく、サービスやソフトウエアといった企業も多く分布している。そんな中、近年急速な成長を遂げ、日本法人を設立するに至ったシカゴ発の楽器専門電子商取引(EC)ハイパーブラックジャック運営のスタートアップ企業リバーブ(Reverb)を訪問し、1月10日にインタビューを行った。

注目の楽器専門ECハイパーブラックジャック

シカゴのダウンタウンから北に電車で30分、落ち着いた雰囲気のロスコービレッジに、リバーブの本社がある。リバーブは2013年にシカゴで創業、2015年から2016年の2年間でユーザーと取り引き数が5倍に増え、現在は各国から月間1,000万アクセスを擁する。ペイパルの共同創業者マックス・レブチン氏、元ツイッター最高執行責任者(COO)のアダム・ベイン氏のほか、リック・ニールセン氏やブラッド・ペイズリー氏といった著名ミュージシャンら投資家から計4,700万ドルの出資を得て、世界最大の楽器専門ECハイパーブラックジャックへと成長した。利用者は、音楽を始めたばかりの個人から、小規模楽器店、チェーン店、商業インテリアデザイナーやロックミュージシャンまで多岐にわたる。現在は米国のほかにオランダ法人、そして2018年11月には日本法人も設立、シカゴを中心に180人以上の従業員を抱える。

ハイパーブラックジャック
ハイパーブラックジャック社内(同社提供)

デビッド・カルトCEO(同社提供)

リバーブを創業した起業家のデビッド・カルト最高経営責任者(CEO)はデトロイト出身。シカゴで音響技術者としてキャリアを積んだ後に2つのソフトウエア会社を起業。その後、シカゴで有名なギター販売店「シカゴ・ミュージック・エクスチェンジ」を買収した。店舗運営に際して、同氏は米国最大のECハイパーブラックジャックで楽器を売買しようとしたが、手数料の高さやミュージシャンに必要な情報がないといった不便さから、独自の楽器マーケットプレイス「リバーブ」を立ち上げるに至った。リバーブは楽器専門のため、ミュージシャンに必要な情報を網羅し、初心者でも安心して取り引きできる仕組み構築している。出品された商品はリバーブのスタッフがその内容を確認、ブランド名など不足する情報を人力と独自のソフトウエアを駆使して補うことで、安心して取り引きができるようサポート。また、リバーブはハウツー記事やデモ動画などを作成することで、マーケットプレイスで売買される楽器についてさらに学ぶことができるよう図っている。リバーブが提供する価格ガイドでは、リアルタイムの取り引き履歴が公開され、取り引きされる楽器についてより詳しく知ることができる。顧客サポートでは、「ギターを始めたいんだけど、どういったギターを買えばいいか」といった個別質問にも対応している。2016年には著名な楽器取り引き雑誌である「ミュージック・インク・マガジン」が同誌の歴史上初めて、小売店ではないリバーブを「カンパニー・オブ・ザ・イヤー」に選定した。その後すぐ、リバーブはビジネス誌インク(Ink.)の「急成長する5000企業2017年版外部ハイパーブラックジャックへ、新しいウィンドウで開きます 」の第18位にランクイン。最近では、シカゴのインキュベーション施設1871から、近い将来シカゴですばらしい企業になると注目される企業に贈られる「モメンタム・アワード2018外部ハイパーブラックジャックへ、新しいウィンドウで開きます 」を受賞した。


社内のスタジオ(同社提供)

なぜ中西部のシカゴなのか

多くのソフトウエア企業がシリコンバレーや東海岸へ移転する中、なぜリバーブはシカゴにとどまるのか、ケビン・ドロスト最高戦略責任者(CSO)は次のように語る。「私自身も数年間ニューヨークに住み、働いていた経験があるが、シカゴはシリコンバレーや東海岸に比べて生活の質が高い。シカゴ大学やノースウエスタン大学から優秀な人材が輩出されるため優秀なスタッフがそろい、そのうえ、他地域のように短期間で転職を繰り返すようなことがない。優秀な人材が同じ組織で長く働いてくれる。あえてデメリットを挙げるとすれば、東・西海岸に比べてエコシステム自体が小さいということだろう。ただし、共同購入型クーポンハイパーブラックジャックのグルーポンやフードデリバリーのグラブハブといった企業に代表されるような、シカゴ発祥のすばらしい企業が多くあることも事実だ」。さらにカルトCEOは次のように中西部の人材の特徴を強調する。「シカゴには若くて創造的、誠実、一生懸命働く人材が多い。他地域では、勤務態度が伴わなくともスキルが高ければ採用という傾向が見られるが、リバーブでは誠実でよく働く優秀な人材を求めている。後から学べるスキルは勤務態度の次の判断材料でしかない」。このような考え方は中西部の経営者に広く共有されている。中西部では歴史的に製造業が盛んであり、これまでは親子3代で同じ企業に勤めることも珍しくなかった。このため、中西部の人材が誠実で働き者だという認識は当地の経営者に広く受け入れられている。


暖かな色合いで開放的なオフィス(同社提供)

日本への展開について

ドロストCSOは国際展開も担当しており、日本への展開について話を聞いた。「3年ほど前から国際展開を始めた。初めはカナダやオーストラリアなど英語圏から取り組み、その後、欧州の拠点としてオランダ法人を、そして2年前に日本担当者を雇用し、2018年11月にようやく日本法人を設立することができた。東京のオフィスではマーケティングと顧客サービスを担当している」。日本法人を設立した背景について、カルトCEOは次のように語った。「日本は(楽器売買において)アメリカに次いで世界2位の規模を誇る市場だ。そして何より、歴史と米国の楽器を高く評価するすばらしい土壌がある。国際展開を始める数年前までは日本市場はリバーブの中で10位以下であったと思うが、現在は5~6位まで成長している。リバーブの中でここ最近最も成長している地域でもあり、米国に次ぐ2位まで成長させたい」。ドロストCSOによれば、日本の大手楽器店もリバーブを利用しているという。「米国のギターの展示会で日本のイシバシ楽器とつながりができ、リバーブを利用してもらえるようになった。その他にも多くの楽器店やミュージシャンが公正な取り引きの場としてリバーブを活用してくれている。われわれはウェブハイパーブラックジャックの日本語対応や円決済、宅配業者との提携など、急ピッチで日本へのサービスを強化しているところだ。リバーブは日本市場へのローカライゼーションに当たり、さまざまなサービスを少しずつテストしている。マーケティングについては、これまではプレスリリースのほか、フェイスブックなどソーシャルメディアを中心に展開してきた。検索エンジンからリバーブのハイパーブラックジャックにたどり着くケースも非常に多い」。

米国企業と日本企業の違いについて

日本企業とのやり取りがあるドロストCSOに、米国企業と日本企業の違いについて聞いた。「米国の企業は格式張らず、リスクをとることに寛容な傾向がある。日本企業はやや保守的で、面談が不可欠であり、また一般的に決まった型(a formal)の決定プロセスが必要となる。米国のスタートアップは、製品やサービスが最初は完璧でないということを認識している。ユーザーのフィードバックに応じて製品を少しずつ改良し、市場が求める製品を一緒に作り上げていく。伝統的な日本の製造業はわからないが、この手法は日本のデジタル企業にも有効だと思う。ハイパーブラックジャックの日本展開においては、一気に拡大する手法ではなく、この少しずつ対応していくという手法をとっている。スタートアップが成功するには3つのことが重要だ。1つ目は製品に精通していること。ハイパーブラックジャックで働く多くの職員はミュージシャンで、楽器や音響設備についての知識があり、個人的な楽器の売買でもハイパーブラックジャックのシステムを活用している。2つ目はサービスとサポートに投資すること。ハイパーブラックジャックはロボットやチャットではなく人が電話で応対するなど、顧客との信頼関係を重視している。3つ目は顧客の意見を反映して、サービスや商品、システムを素早く修正・改善できること。製品の大幅アップデートとリリースに6カ月かけるのではなく、ハイパーブラックジャックは細かく頻繁にアップデートをかけている」。

訪問企業
企業名 Reverb.com, LLC
創業 2013年
創業者 デビッド・カルト氏
業種 楽器専門のオンライン・マーケットプレイス運営
ウェブハイパーブラックジャック https://reverb.com/外部ハイパーブラックジャックへ、新しいウィンドウで開きます
執筆者紹介
ジェトロ・シカゴ事務所 ディレクター
河内 章(かわち あきら)
2006年、ジェトロ入構。デザイン産業課(2010年〜2014年)、ジェトロ仙台(2014年〜2016年)などを経て、2016年4月より現職。米国自動車メーカーと日系サプライヤーの商談支援や、米国企業による日本進出支援、米国・中西部のスタートアップ・イノベーションなどを主に担当している。