エネルギー大手2社、発電所向け水素利用の具体化で協力
(ドイツ)
デュッセルドルフ発
2022年11月29日
ドイツのエネルギー大手EnBWとシーメンス・エナジーは11月17日、環境にやさしい燃料であるグリーン水素(注1)の発電用燃料としての利用促進に両社が共同して取り組むと発表した。
重要なパイロットプロジェクトの1つには、バーデン・ビュルテンベルク州シュツットガルト市にあるEnBWの地域熱供給プラントで実施するものがある。同プラントでは3年後をめどに、燃料を石炭から天然ガスに切り替える予定だが、切り替えに際しては、全ての設備をいずれ天然ガスから100%水素に変更できるように建設する(注2)。建設で中核となるのは、シーメンス・エナジーの最先端のガスタービン2基だ。
同タービンの出力はそれぞれ62メガワット。現在の石炭だきボイラー3基を置き換える。EnBWはグリーン水素が利用可能になるのは10~12年後と見込んでいるが、シーメンス・エナジーは2024年の同タービンの納入時から水素を最大75%混入、いずれ水素100%で燃焼できるとする予定。建設許可の取得後、2023年第1四半期(1~3月)に新設備の建設が開始される。シュツットガルト市近郊にはもう1カ所、地域熱供給プラントがあり、同発電所の燃料を石炭から天然ガスに切り替えた後には、同市周辺では発電や熱供給に石炭は使われなくなる。これは2026年頃の見込みだ。
EnBWのゲオルク・スタマテロプロス取締役は「同プラントの石炭から天然ガスへの燃料切り替えは、今後数年間、引き続き十分な発電量を確保するには重要だ。再生可能エネルギーの拡大に向けた唯一の方法」と強調した。また「中期的には、化石燃料の天然ガスを水素に切り替えることで、当社の二酸化炭素(CO2)排出量の大幅な削減や2035年以降に当社が掲げている気候中立の目標にも貢献する」とした。
シーメンス・エナジーのティム・ホルト取締役は「水素火力発電所は将来のエネルギーミックスで重要な役割を果たす。水素を利用すれば、風力・太陽光発電所で発電した電力の貯蔵や輸送、後日の電気への転換やエネルギーが必要とされている場所での利用ができる」と述べた。
(注1)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程でCO2を排出しない。
(注2)ドイツの現在の連立政権は、発足時の2021年11月の連立協定書で「再生可能エネルギー移行までの過渡期で天然ガスは欠かせないため、ガス火力発電所を建設するが、水素など気候中立的なガス利用に対応可能な発電設備とする」としている(2021年11月26日記事参照)。
(ベアナデット・マイヤー)
(ドイツ)
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