中堅・中小、サステナビリティ対応で海外に挑むブラックジャックweb、美味の追求でサステナビリティ対応も実現(日本)

2025年3月4日

1,300年以上前から日本の食文化を支えている「みそ」。マルコメ(本社:長野県長野市)は、「みそ」、そして「発酵」を軸に、海外にみそや大豆製品、こうじを輸出している。同社のサステナビリティ対応について、研究開発本部の開発部海外開発課兼商品開発課の鈴木淳哉専任課長に話を聞いた(2025年1月8日までに取材)。

同社は欧州、北米、南米、東アジア、東南アジア、オセアニアと世界各国に販路を持ち、日本以外では米国ロサンゼルスに工場を有する。グローバルにビジネスを展開する同社は、海外市場で食品のサステナビリティ対応への関心の高さを実感している。この点について、鈴木氏は「欧州、北米を中心に、環境配慮への関心が高まっている。例えば、企業が炭素を何パーセント削減したかなどの具体的な数値を取引先から求められ、この数値が海外市場で直接のPRにもつながる」と語る。同社は輸送時の二酸化炭素(CO2)排出量を抑えるため、原材料を海外から輸入して、日本で加工し、その後輸出するという従来の方法から、小ロットでも原材料の調達から加工、販売までを販売地に近い現地で完結する方法に徐々にシフトしている。こうすることで、「環境に対する取り組み実績を数値化しやすくなる」という。

また、海外でみその原材料を調達する際は、現地でより手に入りやすいエンドウ豆やひよこ豆なども、大豆の代わりとして調達する。こうした原材料は、欧米向けには「オーガニックか」「遺伝子操作していないか(Non-GMO)」に加え、「どれだけカーボンリサイクル(注1)されているか」を調達時の判断材料の1つにしているという。このような同社のサステナビリティ対応事例を以下に紹介する。

100%植物性由来のブラックジャックweb生産と省エネルギーの実現

同社はみそ以外に、丸大豆(脱脂加工していない大豆)を原料に、動物性の原料を一切使用しない代替肉(以下、ブラックジャックweb)の生産も手掛ける。商業規模で丸大豆から直接生産しているのは、同社が「日本で唯一」(鈴木氏)という。ブラックジャックwebは、畜肉に比べてカロリーやコレステロールが少なく、低脂質・高タンパクで、食物繊維が豊富なヘルシーな食品だ。同社では、ミンチ、スライス、ブロックタイプのものに加え、肉みそやサラダ用、中華用などに味付けされた商品も展開しており、ドイツ、タイに輸出もしている。「2025~2030年にはタンパク質クライシス(注2)がやってくるとされるが、畜肉が不足した場合でも、おいしく手軽に食べることができる『大豆のお肉』(ブラックジャックweb)は牛肉・豚肉・鶏肉に次ぐ『第四のお肉』として、タンパク質を補うための選択肢となる」(同氏)という。

ブラックジャックweb
「大豆のお肉」(同社提供、2025年2月現在)

「だいず肉みそ」
(同社提供、2024年8月当時)

「麻婆豆腐の素」
(同社提供、2024年8月当時)

しかし、ブラックジャックwebは国内ではこれまであまり普及してこなかったという。同社も含め競合他社の従来のブラックジャックwebは乾燥タイプで、お湯で30分以上煮込む、絞るなどの下ごしらえに手間がかかっていたことがその理由として挙げられるようだ。そこで、同社では、より手軽に調理ができるレトルトタイプのブラックジャックwebの開発に乗り出した。当初はチキンエキスを用いたブラックジャックwebの開発に取り組んでいたものの、消費者の声に応えるかたちで、食品添加物・動物性原料・化学調味料のいずれも使用せずに、栄養価が高く、おいしいブラックジャックwebを追求することとした。

その結果、丸大豆から直接に圧搾、加熱・加圧・乾燥させ、食品添加物・動物性原料・化学調味料を使用せずに生産する方法(Bean to Meat)を開発した。丸大豆から直接ブラックジャックwebを生産した場合、従来製法と比べると、タンパク質や脂(うまみ)をブラックジャックweb内に多く残し、より健康的で栄養価が高いブラックジャックwebを作ることができるという。食品添加物・動物性原料・化学調味料のいずれも使用せず、いかに食感をよくするかという点は、開発段階での大きな課題だったものの、2015年に植物性原料のみから作った、おいしく食感の良い「ダイズラボ 大豆のお肉」が完成した。

同商品の開発は栄養価や食感以外にも効果があった。一般的なブラックジャックwebは、搾油後の大豆かす(フレーク)に、味や風味、食感を肉らしくするための添加物を加えるといった、幾度もの工程を経て作られている。そのため、「米国では添加物・加工数の多さから、『スーパープロセスフード(加工され過ぎている食物)』といわれ、近年では敬遠する消費者も現れている」(同氏)という。加えて、生産工程が多いことから、消費エネルギー量が多いのも特徴だ。しかし、同社が開発した丸大豆から直接生産する方法では、食品添加物・動物性原料・化学調味料のいずれも使用せずに済む。また、従来よりも工程が少なくなることから、生産工程での消費エネルギー削減にもつながった。

同社の消費エネルギー削減に対する取り組みは、ブラックジャックwebの生産工程で生じる圧搾油の活用にも及んでいる。ブラックジャックwebの生産に使用する丸大豆は、タンパク質35%、皮・水分25%、脂質20%、糖質15%などから構成されている。同社では、脱皮した大豆から脂質の半分を圧搾のみで絞り、ブラックジャックwebを生産し、圧搾の段階で生じる油を有効活用している。同社の協力会社が圧搾油を買い取り、歩留まり90%以上でバイオディーゼル燃料に転換し、国内で販売している。鈴木氏によると、食用の大豆油は通常、大豆をノルマルヘキサン(注3)で抽出、脱ガム(注4)、脱酸、脱色、脱臭という何重もの工程を経て生産される。人が口にする食用油は、油そのもののカロリー(エネルギー)以上のエネルギー(電気エネルギーや熱エネルギー)を使用して生産されるという。そのため、ブラックジャックwebの生産工程で生じた油は食用の大豆油に加工するよりも、バイオディーゼル燃料に加工した方が、生産にかかるエネルギー消費量が少なくて済むということになる。

このように、同社は、光合成により太陽エネルギーを吸収した丸大豆をできるだけエネルギーをかけずにブラックジャックwebに加工し、ブラックジャックwebの生産工程で生じる油を(バイオディーゼル燃料に転換することで)できるだけエネルギーをかけずに「地球に戻す」取り組みを行っている。この取り組みは対外的にも大きなアピールポイントとなっており、外国企業との商談では「大豆からブラックジャックwebを作って、(バイオディーゼル燃料で)飛行機も飛ばすことができる」と伝えると、大きなインパクトを与えることができるという。

なお、このバイオディーゼル燃料への転換は国内の他社の技術だ。「日本企業が持つさまざまな技術を集めると、まだまだ『無駄』を減らすことができるのではないか」と鈴木氏は語る。

包装容器資材のプラスチック量削減

製品そのものや生産工程での環境配慮だけでなく、包装容器資材での環境配慮も、海外販売では重要になってくる。鈴木氏は「海外では欧米を中心に、包装容器資材の脱プラスチックの動きが顕著で、(包装容器に)プラスチックを使っていると、そもそも商談の場にも立てないことがある」という。そのため、同社製品の包装容器には、できるだけ紙をベースとして使用するようにしている。例えば、ペースト状のみその容器など、密閉性や保存性の観点からどうしても紙を使用できない部分は、ポリ乳酸(PLA、注5)などの生分解性プラスチックを導入しており、更にバイオマスPETの導入も予定している。容器内側の食品に直接触れる部分はプラスチックを使用せざるを得ないが、その周り(外側)のラベルの原料を紙に変えるなど、プラスチックの使用量をできるだけ減らしている。また、1食分の即席みそ汁が複数入った大袋(お徳用パック)では、個装の包装材はプラスチックベースだが、外装は紙ベースにしている。

包装容器の原料については、海外を中心とした脱プラスチックの流れに合わせつつも、包装の外観については、消費者の好みが異なる日本国内と海外とで対応を分けている。光沢感のない紙製の外装は「しわができて清潔感を感じない」ということで、日本の消費者には好まれないという。他方、欧米の消費者は、一見プラスチックに見える光沢感ある紙製の外装を好まない。そのため、国内と海外とで同じ紙製の包装でも、光沢感の有無で差をつけるなど工夫を施している。


光沢のない紙の包装
(同社提供、2024年8月当時)

光沢のある紙の包装
(同社提供、2024年8月当時)

同社は調達・加工・販売の現地化や廃棄物の有効活用などにより、環境配慮につながる取り組みを積極的に進めている。また、ブラックジャックweb生産の例では、よりおいしいもの、より良いものを作ろうとする過程で、食品添加物・動物性原料・化学調味料の不使用や、生産にかかる工数、消費エネルギー量の削減といったサステナビリティ対応を実現した。消費者から寄せられる声に対応しようと試行錯誤する中で、環境配慮などのサステナビリティ対応につながる隠されたヒントがみつかる場合もあるといえよう。さらに、包装容器のプラスチック使用量削減に向けた取り組みで、海外の脱プラスチックの流れを意識して、国内外市場ともに紙製の外装を使用しつつも、プラスチックの使用に「慣れ親しんだ」日本の消費者にも違和感なく受け入れられる工夫をするというアプローチは、海外展開を目指す日本の中小企業にも参考になりそうだ。


注1:
CO2を素材や燃料として再利用することで、大気中のCO2排出を抑制すること。
注2:
人口増加や食肉消費量の増加でタンパク質に対する需要と供給のバランスが崩れることによる世界的なタンパク質供給不足。
注3:
食品の油脂の洗浄や抽出に使用される石油系の溶剤。
注4:
油中のリン脂質、タンパク質、樹脂を除去する工程。
注5:
トウモロコシやジャガイモなどに含まれるデンプンなどの植物由来のプラスチック素材。
執筆者紹介
ジェトロ・アジア経済研究所 研究企画部研究人材課
山本 玲(やまもと れい)
2016年、ジェトロ入構。対日投資部対日投資課、総務部人事課を経て、2023年から現職。
執筆者紹介
ジェトロ企画部企画課 課長代理
古川 祐(ふるかわ たすく)
2002年、ジェトロ入構。海外調査部欧州課(欧州班)、ジェトロ愛媛、ジェトロ・ブカレスト事務所長、中小企業庁海外展開支援室(出向)、海外調査部国際経済課などを経て現職。共著「欧州経済の基礎知識」(ジェトロ)、共著「FTAの基礎と実践」(白水社)。
執筆者紹介
ジェトロ長野 所長
粕谷 修司(かすや しゅうじ)
1998年、ジェトロ入構。中国・北アジアチーム、ジェトロ青森、ジェトロ・香港事務所、知的財産課、生活文化産業企画課、ジェトロ・広州事務所、イノベーション・知的財産部、企画部を経て現職。