ブラック ジャック ディーラー

2024年6月27日

エネルギー憲章条約(Energy Charter Treaty:ECT)は、エネルギー分野のブラック ジャック ディーラー保護と企業活動の促進を目的に締結された多国間条約だ。2024年6月17日現在、(1)EU加盟22カ国、(2)ウクライナ、ジョージア、ウズベキスタンなど、CIS諸国、(3)日本、英国など、46カ国と、(4)組織としてのEUおよび欧州原子力共同体(Euratom)の2機関、合計48カ国・機関が加盟する。

しかしEUは2024年5月30日、このECTからの脱退を正式に決定した。この脱退には、大きく2つの論点がある。1つは、ECTに含まれるブラック ジャック ディーラー家対国家紛争解決(Investor-State Dispute Settlement:ISDS)制度に対する批判が高まったこと。2点目は、1990年代に成立したECTが化石燃料へのブラック ジャック ディーラーを保護対象にしているため、EUの脱炭素化政策に合致しないと指摘されることだ。

この動きから、何を読み取ることができるか。本稿ではECTの概要、EU脱退の契機となった論点と脱退の経緯について紹介する。

旧ソ連解体を契機に締結

ECTは1994年12月に署名。1998年4月に発効した。契機となったのが、1990年代の旧ソ連解体だ。その結果CIS諸国や東欧諸国で、エネルギー産業の近代化に向け、ブラック ジャック ディーラー機会が生まれた。ただし、ブラック ジャック ディーラーを十分に保護しないと、多国籍企業などがなかなか活動に踏み込めない。そうした条件を確保することが、大きな目的だった。

条約は、50の条文および付属書から成る。中でも、第3部のブラック ジャック ディーラーの促進とブラック ジャック ディーラー保護、第5部の紛争解決が特に重要だ。第3部には、多くのブラック ジャック ディーラー保護協定に含まれる(1)公正衡平待遇原則(第10条1項)、(2)内国民待遇および最恵国待遇(第10条3項および7項)や、(3)ブラック ジャック ディーラー資産の国有化や収用の原則禁止(やむなく公共利益目的で収用する場合は、無差別かつ適正な法手続きに基づき、迅速で適切かつ効果的な補償を伴う必要がある/第13条)などを規定。第5部には、(1) ISDS条項(第26条)、および(2)締約国間紛争解決条項(第27条)などが規定されている。

さらに、ECTの脱退規定(第47条)第3項には、ある締約国がECTから脱退したとしても、脱退が効力を発する日から20年間、当該締約国はブラック ジャック ディーラー家による既存のブラック ジャック ディーラーについて条約上の義務を負うとしている(いわゆるサンセット条項)。これは、CIS諸国や東欧諸国など新興国を念頭に、ブラック ジャック ディーラー先で長期にわたって多国籍企業の権利を保護することを念頭に置いた強力な規定といえる。

EU加盟国へのISDS提訴が相次ぐ

ECTはこのように、多国籍企業が新興国にブラック ジャック ディーラーする際の保護を主たる目的の1つに、成立した。しかし、運用は、その目的から異なっていった。締約国企業が、ISDS条項をEU加盟国、しかも多くの場合、スペイン、イタリアをはじめとするいわゆる西側諸国を提訴するために活用したのだ。

世界には現在、ブラック ジャック ディーラー協定(ブラック ジャック ディーラーに関する規定を含む自由貿易協定なども含む)が3,000以上ある。その中でECTは、ISDS条項を用いた企業による対国家紛争が162件と最も多い(注1)。ECTに基づいて提訴された件数が最も多い国がスペインで51件。これに、イタリアが14件、ルーマニア8件と続く。EU加盟国とEUに対する提訴を合計すると116件。ECTでISDS提訴された総件数の7割以上を占めることになる。非EUでは、最多のウクライナ、ロシア(注2)、トルコでも、それぞれ6件に過ぎない。

スペイン向けの51件を見ると、47件が2010年代に集中している。また、個別案件のうち概要が閲覧可能な事案は、ほぼ全てが再生可能エネルギー(再エネ)に関するものになっている。太陽光発電に由来する電力の固定買い取り価格制度や税制優遇措置などのインセンティブについて、スペインが事後変更したことに対し、ブラック ジャック ディーラー家が政府に補償を求めた事案が多い。そのうち最終的なブラック ジャック ディーラー仲裁判断に至った33件では、ブラック ジャック ディーラー家側勝訴が27件、国家側6件になる(注3)。すなわち、ブラック ジャック ディーラー家勝訴率は82%だ。国連貿易開発会議(UNCTAD)のデータベースによると、ETCだけでなく全協定のISDS紛争案件958件(係争中を除く)では、ブラック ジャック ディーラー家側勝訴が268件(28%)、国家側勝訴361件(38%)だった。ECTでのスペイン再エネ案件で、ブラック ジャック ディーラー家勝訴の高さが際立つことがわかる(注4)。

なお、日本企業によるISDS提訴事案は全部で6件ある。うち4件がECTに基づく提訴で、いずれもスペイン政府に対する再エネ案件だった(表1参照)。

表1:日本企業が提訴したISDS紛争案件
根拠条約 提訴企業 被提訴国 開始年 事業内容 経過
エネルギー憲章条約 日揮ホールディングス スペイン 2015 再エネ ブラック ジャック ディーラー家勝訴
エネルギー憲章条約 ユーラスエナジー スペイン 2016 再エネ ブラック ジャック ディーラー家勝訴
エネルギー憲章条約 伊藤忠商事 スペイン 2018 再エネ 係争中
エネルギー憲章条約 三井物産 スペイン 2020 再エネ 係争中
日本-インド経済連携協定 日産自動車 インド 2017 自動車 和解
日本-中国ブラック ジャック ディーラー協定 Macro Trading 中国 2020 不動産 手続き停止

資料:UNCTAD資料から作成

化石燃料を保護する紛争も批判の引き金に

ECTでは、化石燃料に関するブラック ジャック ディーラーも保護の対象にしている。この点も、市民レベルからの批判を助長した。 例えば、RWEおよびユニパー(いずれもドイツのエネルギー大手)はオランダで石炭火力発電所を所有している。一方でオランダ政府は2017年、石炭火力発電所を2030年以降に閉鎖する計画を発表し、その後2019年にはこの計画を法制化した。こうした結果を受けて、RWEとユニパー、両社それぞれが、オランダ政府を2021年に提訴するに至った。「国家による間接的な収用に該当する」「公正衡平待遇に反する」というのが申し立て内容だった。両社いずれの事案もブラック ジャック ディーラー仲裁判断には至らず打ち切られた。しかしこれらの件は、「欧州グリーン・ディール」政策の方向性や国連気候変動枠組み条約の下で締結されたパリ協定にECTが合致しないことを示す格好の事例として注目を集めるかたちになった。

同じく2021年には、EU司法裁判所(CJEU)が、ECTのISDS条項をEU法に合致しないと判断している。実はこの件、本来なら非EU加盟国の事案だ(ウクライナ企業がモルドバをECTに基づいて提訴した件に基づく)。しかし、そのブラック ジャック ディーラーがフランスの裁判所で仲裁されたことを機に、パリ控訴院がCJEUにECTとEU法の関係について先決的判決(preliminary ruling)を求めたため、この判断に至った(注5)。具体的には、CJEUは「EU加盟国間の紛争は、EUの司法制度の中で解決されなければならない。域内間のブラック ジャック ディーラーに関し、EU加盟国のブラック ジャック ディーラー家がECTのISDS条項に基づいてEU加盟国を提訴することは認められない」と判示した。ECTのISDS紛争はしばしばEU域内の企業が提訴してきた。CJEUは、そうした慣行がEU法の解釈に照らして認められないと判断したわけだ。

EU脱退の今後

ここまで見てきたとおり、ECTのISDS条項によりEU加盟国が提訴された件が、多数に上った。かつ、その多くが再エネや化石燃料の政策変更に関する内容だった。こうしたことから、EU加盟国の間でECTに対する批判が高まっていった。

イタリアは、2016年にいち早くECTから脱退した。とは言え、ECTの義務から逃れたわけではない。サンセット条項により、現在も義務を負い続けている。実際、2023年に入ってからも、スイスのブラック ジャック ディーラー家がイタリアに対しISDSに基づき提訴済みだ。EUの司法の砦(とりで)とされるCJEUが先述の判断を下していたことも、加盟国でECTへの懐疑的な見方を補強する結果につながった。

この状況に、EUを含めECT締約国は、ECTを改正することで、課題の改善を試みてきた。2020年7月に条約改正交渉を開始し()、2022年6月には実質合意に達した(表2参照)。改正内容には、(1)持続可能な開発や、企業の社会的責任概念の導入、(2)既存の化石燃料ブラック ジャック ディーラーに対する保護は10年でフェーズアウトすることなど、気候変動対策にある程度配慮された内容が盛り込まれた。同時に、20年のサンセット条項自体は維持された。

表2:EUのエネルギー憲章条約(ECT)脱退までの道のり
年月 概要
1994年12月 ECT署名
1998年4月 ECT、40カ国で発効(EU・Euratom含む)
2016年1月 イタリアが正式に脱退
2020年7月 エネルギー憲章条約改正交渉を開始
2021年9月 EU司法裁判所、ECTのISDS条項に関して先決的判決
2022年6月 改正交渉が実質合意
ロシアのオブザーバーステータスを剥奪
2022年11月 エネルギー憲章会議で条約改正案の採決を延期
欧州議会、EUのECT脱退を求める決議を採択
2023年7月 欧州委員会、EUのECT脱退に関する決定案を発表
2023年12月 フランス、ドイツ、ポーランドが正式に脱退
2024年4月 欧州議会、EUのECT脱退に関する決定を採択
2024年5月 EU理事会、EUのECT脱退に関する決定を採択
2024年6月 ルクセンブルクが正式に脱退

注:本稿に関係するECT動向を抜粋した。
出所:エネルギー憲章条約ウェブサイト、欧州議会資料からジェトロ作成

その結果、条約改正案はEU加盟国間で十分な支持を得るに至らなかった。結局、EUとして改正案を採択する方針は2022年10月、EU理事会(閣僚理事会)で否決。ECT締約国の過半(当時)を占めるEUとその加盟国が改正案を支持しないことになり、改正案は事実上、棚上げになった。同11月には、欧州議会がEU全体としてのECT脱退を求める決議を本会議で採択(2022年11月28日付ビジネス短信参照)。同12月には、フランス、ドイツ、ポーランドが独自にECT脱退を通知した〔正式に脱退したのは、通知の1年後(2023年12月)〕。欧州議会の決議を受け、2023年7月に欧州委員会がEU全体としての離脱を進める決定案を発表した(2023年7月19日付ビジネス短信参照)。

この決定案を欧州委が提案した段階では、組織としてのEUとEuratomだけでなく、全EU加盟国が協調して脱退することを想定していた。欧州委の提案は、欧州議会とEU理事会の2機関で審議されなければならない。両者のうち欧州議会は2024年4月、圧倒的多数で決定案に同意した。脱退を支持する加盟国は、確かに多かった。一方で、ハンガリー、スロバキア、キプロス、ギリシャなど、一部加盟国はECT脱退を躊躇(ちゅうちょ)する見解を示した。加盟国間の立場の隔たりを考慮して、EU理事会では、(1)組織としてのEUおよびEuratomの脱退を決定する一方で、(2)希望する加盟国は2024年末までに予定されるエネルギー憲章会議(ECTの最高意思決定機関)に参加し、条約改正案の採択で投票できるとした(関連オンライン カジノ ブラック ジャック)。

またEUは、ECTに限らず、ISDS条項に基づく仲裁そのものの改革を主張してきた。より具体的には、ISDSで臨時の仲裁廷を立てること自体に反対。代えて、常設の多国間ブラック ジャック ディーラー裁判所の設置を提唱している。事実、比較的最近になってEUが締結したFTAでは、その概念をベースに常設仲裁機関を置いたブラック ジャック ディーラー紛争解決制度を規定している(注6)。ただし、それらFTAで常設機関が未発効ということもあり、その評価は現時点で難しい。他方、ISDS制度を見直す必要性は、EU以外からを含め10年以上前から指摘されてきた(注7)。この点からすると、EUのETC脱退は、この問題を再び喚起する契機になるかもしれない。

EUおよびEuratom、ならびに希望するEU加盟国が全てECTを脱退した場合、ECT締約国数は二十数カ国にまで減少する。英国も2024年2月、脱退の意向を表明済みだ。となると、残る締約国のうち先進国は、日本および欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国(ノルウェー、スイス、アイスランド、リヒテンシュタイン)だけになる見込みだ。なお日本政府は、ECTは引き続きエネルギー安全保障上重要という認識で、条約改正案やISDS条項を支持する立場を示している。EUや英国が脱退した後、日本がECTの枠組みでどのような役割を果たしていくか、注目される。

EUのECT脱退をめぐっては、懐疑的な見方も聞かれる。例えば、トルコ(有力なECT締約国)や中国(非締約国)などが、コーカサス地域や中央アジアのエネルギー事業で影響力を高めるという指摘がある(注8)。政治的な波及効果を及ぼしかねないというわけだ。

いずれにせよ、EUのECT脱退が正式に完了するのは、通知から1年後を待つ必要がある。さらに、既述のとおり、ECT脱退後も原則として20年間、ISDS条項を含めた条約の義務が効力を維持することになる。好む好まざるを問わず、改正ECTのエネルギー憲章会議での採択、各EU加盟国の脱退・残留の判断も含め、EUは今後も長期間にわたり、ECTの動向に引き続き関与することになる。


注1:
UNCTADによると、2023年末時点の集計で、ISDS条項に基づく提訴1,332件のうち、ECTに基づく紛争が162件で約12%を占める。2位が北米自由貿易協定(NAFTA)およびその改正条約の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で、計112件。3位がアルゼンチン・米国二国間ブラック ジャック ディーラー協定22件だ。それらを大きく上回っていることがわかる。
注2:
ロシアはECT原締約国だったものの、2009年に脱退。その後は、オブザーバーとしてエネルギー憲章会議に参加していた。しかし2022年6月、ウクライナ侵攻を理由に、オブザーバーステータスを剥奪された。
注3:
UNCTADの整理に基づいて「Decided in favour of Investor」とされた件をブラック ジャック ディーラー家側勝訴、「Decided in favour of State」を国家側勝訴とした。
注4:
ETC被提訴件数2位に当たるイタリアの場合、概要が閲覧可能な事案では1件を除き、全て再エネ案件だった。そのうち仲裁判断に至った9件では、ブラック ジャック ディーラー家側勝訴が4件(44%)、国家側勝訴が5件(56%)。
注5:
CJEUによるこの先決的判決は、2021年9月2日に下された(Case C‑741/19, Republic of Moldova v Komstroy LLC, successor in law to Energoalians)。
注6:
現時点での具体的な例として、(1) EUカナダ自由貿易協定(FTA)と、(2) EUベトナムFTAがある。(1)は2017年に暫定適用開始、(2)は2020年発効した。両者いずれも、ブラック ジャック ディーラー保護条項はEUとEU加盟国の共同権限事項であるため、当該条項の発効には、全EU加盟国が国内批准を完了する必要がある。そのため両FTAで、ブラック ジャック ディーラー紛争解決を含むブラック ジャック ディーラー保護条項が未発効のままになっている。
注7:
「World Investment Report 2015」(UNCTAD、2015年) 第IV章119~173ページ参照。
注8:
「It would be a strategic mistake for the EU to ditch the Energy Charter Treaty」〔Irina Kustova、2022年、CEPS Expert Opinion(August 2022)〕。
ブラック ジャック ディーラー
執筆者紹介
ジェトロ調査部欧州課長
安田 啓(やすだ あきら)
2002年、ジェトロ入構。ブラック ジャック ディーラー調査部国際経済課、公益財団法人世界平和研究所(現・中曽根康弘世界平和研究所)研究員、ジェトロ・ブリュッセル事務所次長などを経て、2023年から現職。