企業のニーズに合わせた人材育成
モロッコの航空産業と人材育成(3)
2024年7月19日
航空機産業には他の製造業よりも高度なスキルが求められる。航空機部品の精度は自動車などとは大きく異なるため、航空機関連製造には、高度なスキルを持つ人材の育成機関が欠かせない。モロッコのヌアサー航空産業フリーゾーン(ミッドパーク)に隣接するISMALAやIMAは、公的資金の投入された職業訓練機関である。企業のニーズに合わせた人材の育成やリスキリングを提供し、モロッコの航空機産業を支え、産業集積に大きな役割をはたしている。
ISMALA
1974年、モロッコは主要産業において人材開発・育成を担う職業訓練・労働斡旋(あっせん)所OFPPT(L'Office de la formation professionnelle et de la promotion du travail)を設立した。2013年、OFPPTは新たに、航空機産業に特化した人材育成を目的としたInstitut Spécialisé des Métiers de l'Aéronautique et la Logistique Aéroportuaire(航空および航空物流専門学校、以下、ISMALA)を開設した。認可済みトレーニングプログラム・コース責任者のヘドゥアン・ザー(Redouane ZHAR)氏の案内で、ISMALAを取材した(取材日:2024年2月27日)。
- 質問:
- ISMALAの主な事業内容は。
- 答え:
- ISMALAは、モロッコの航空機関連工場で多様な作業に従事する人材を育成している。インターンは、1クラス8人を上限にグループに編成され、時限ごとに異なる技術を学ぶ(時間割参照)。講師陣は、ロイヤル・エア・マロック(Royal Air Maroc)でエンジニアとして勤めていた者が多い。インターンは入校1年目で、一通りの航空機部品製造の基礎技術を身に付ける。2年目には、電子回路の整備、保守・点検、修理・分解整備(MRO: Maintenance and Repair Overhaul)など幅広く学ぶ。
ISMALAの時間割
- 月~木曜日
- 1時間目:8時30分~10時25分
- 2時間目:10時40分~12時30分
- 3時間目:13時30分~15時25分
- 4時間目:15時40分~17時30分
- 金曜日
- 1時間目:8時30分~10時25分
- 2時間目:10時40分~12時30分
- 3時間目:14時15分~17時30分
- 質問:
- ISMALAでのトレーニングの所感は。
- 答え:
- (インターン2人の回答)トレーニングでは、使用されなくなった小型機を使う。今は、MROの授業で、翼部に空いた穴を修復するトレーニングを受けているところだ。MROでは、バードストライクのへこみを直す作業が得意だ。作業のために必要な図面も自ら書く。技術を習得していく作業はやりがいがあり、専門知識を持つことに誇りを感じる。
IMA
1999年にモロッコへ進出したフランスのサフラングループの支援の下、2006年に、モロッコ航空宇宙産業工業会(GIMAS)が設立された(オンライン カジノ ブラック ジャック調査レポート:欧州航空機産業調査【フランス】参照(3.1MB))。2011年には、GIMASは、宇宙航空産業における人材育成をさらに加速させるため、モロッコ航空機産業人材育成センター(IMA、2024年5月2日付地域・分析レポート参照)を設立した。IMAのジェネラルディレクター、ブルーノ・イグノウネン(Bruno IGOUNENC)氏、GIMASのパートナーコーディネーション担当のライラ・ハダッド(Laila HADDAD)氏、アエロスペースモロッコクラスター(AMC)イノベーション長のファティマアザハラ・ドリオウアチ(Fatima-Azzahra DRIOUACH)氏に、オンライン カジノ ブラック ジャック育成について聞いた(取材日:2024年2月27日)。
- 質問:
- IMAの事業概要は。
- 答え:
- IMA は、モロッコ航空宇宙産業工業会(GIMAS)、教育省、産業省、財務省、金属産業職連合(UIMM)の官民パートナーシップから生まれた宇宙航空産業に特化した職業訓練センターだ。センターの使命は、モロッコの航空宇宙産業の工場労働者、技術者、中間管理者に、入社前トレーニングおよび勤務中トレーニングコース(技術リスキリング)を提供することだ。
- 入社前トレーニングの場合、50%の時間を所属予定企業で働き、残りの時間をIMAでトレーニングを受ける。会社のリクエストに応じて訓練を組み、会社のニーズに合わせたプログラムを変遷する。6~32週で1つのトレーニングプログラムを設定できる。
- 2011年の設立以来、合計で1万3,000人以上へ訓練を提供した。
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- 資格取得と雇用につながる分野:4,200 人
- 既存従業員の継続的な育成:7,900人
- 中等教育学校の生徒 (航空機製造の卒業証書プログラム):530人
- 2020~2021年の再研修プログラム:590人
- IMAでは、次の7つのスキル領域でトレーニングメニューを現在運用している。
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- 部品およびサブ部品の組み立て
- 板金加工
- 複合材(立体裁断、調整・取り付け、修理)
- 電気システム、電子機器、配線
- 機械加工とツーリング
- 航空機の塗装
- 航空機溶接
- IMAには国の資金(GIMASなど)も入っており、安定した資金を基に民間のやり方で柔軟性ある運営をしている。いくつかの地方にも採用拠点を設けてリクルーティングを行っており、IMAのインターンは、出身地、宗教、ジェンダーの多様性がある。地方出身のインターンが多く、彼らはIMA敷地内の寮で生活し、食費もIMAが負担している。
- トレーニングの開始時期も、企業のニーズに合わせ対応している。例えば、年度途中でも、人材の新規募集や既に工場で働いている従業員のリスキリングを請け負う。企業が求めるトレーニングプランをカスタマイズし、直近で工場が必要とする作業技術をトレーニングできる。IMAで教えていない技術であっても、機材を新たに調達し、新規コースとして講師陣をトレーニングする用意もある。
- モロッコ産の部品を搭載しない航空機がないのは、モロッコが航空機産業のエコシステム〔エンジニアリング、自動相互接続系統(EWIS)、組み立て、エンジン、MRO、複合材料〕を網羅している証しである。IMAはすべてのエコシステムに対し、それぞれのトレーニング施設が用意してある。
- モロッコではIMA、ISMALAなどが毎年2万4,000人のエンジニアと技術者を訓練している。
- 質問:
- 今後のオンライン カジノ ブラック ジャック開発の戦略は。
- 答え:
- モロッコは、研究開発分野(R&D)における人材育成にも取り組んでいる。多数の欧州の大学が、アフリカへのゲートウエーであるモロッコに学校を開設しており、パリ政治学院やマサチューセッツ工科大学(MIT)もモロッコに分校を持っている。これからは、新設の理工系大学であるモハメッド6世工科大学(UM6P)も研究者の輩出に貢献するだろう。
- 今後は、欠けているエコシステム、すなわち宇宙産業、航空機内装、着陸ギアなどにチャンスがある。人材の確保・育成についてはIMAがサポートできる。日本はじめ諸外国企業に投資してほしい。
モロッコの航空産業と人材育成
- 執筆者紹介
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オンライン カジノ ブラック ジャック調査部中東アフリカ課
吉川 菜穂(よしかわ なほ) - 2023年、オンライン カジノ ブラック ジャック入構。中東アフリカ課でアフリカ関係の調査を担当。
- 執筆者紹介
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オンライン カジノ ブラック ジャック・ラバト事務所
ファティマザハラ・ベルビシュ - 2017年からオンライン カジノ ブラック ジャック・ラバト事務所に勤務。経済・産業・市場調査、商談会業務などを担当。