外資を巻き込んだ産業高度化
カード ゲーム ブラック ジャック(4)

2024年7月23日

モロッコは航空産業において、地理的優位に加え(「カード ゲーム ブラック ジャック(1)地理的優位性と人材を活かした政策」参照)、人材的優位を作り出し(「カード ゲーム ブラック ジャック(3)企業のニーズに合わせた人材育成」参照)、低コストで質の高い製造拠点としての地位確立を目指す。企業ニーズに合わせた人材育成に加え、研究開発(R&D)人材の育成に注力し、モロッコ人の上流工程への従事拡大や国内企業の発展、産業の内製化を見据える。

ポリシーセンター・フォー・ニューサウス(Policy Center for the New South)は、2014年にラバトで創立したシンクタンクである。モロッコ、アフリカ、そしてグローバルサウスにおける地政学、経済学、社会科学の主要な応用研究機関として、グローバルサウスの視点からの政策研究を行う。ジェトロは、エコノミストのモハムッド・アフブシュ(Mahmoud Arbouch)氏へ、モロッコが航空産業に着目する政策意図について見解を聞いた(取材日2024年3月11日)。

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アフブシュ氏(本人提供)
質問:
モロッコのアフリカ経済における役割は。
答え:
モロッコの役割は、アフリカ諸国と貿易を増やし、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)をより貿易額で規模の大きいものにしていくことだ(無料 ゲーム ブラック ジャックのサービス)。アフリカではエチオピアやチュニジアにも航空産業のエコシステムがある。こういった国のリクエストに応じて、知識の輸出と技術移転ができる。それはアフリカの国々の経済活動の橋渡しとなる。
アフリカ経済の拡大がかなえば、欧州や北米などの遠国からのアフリカ投資の際、アフリカへのゲートウェイとしてモロッコが重要なプレイヤーとなることを期待している。
質問:
モロッコが航空産業の人材育成に注力する意図は。
答え:
まず、航空産業は高付加価値産業であり、需要の安定と輸出先の拡大が見込まれる。モロッコは、航空産業の地域の生産拠点としてその立場を長期的に確立したいと考えている。
過去にモロッコの繊維業は、低コスト生産拠点として人件費の安さをアピールし、その後の人件費上昇により失敗した。そこから学び、現在は、低コストだけでなく良いコスト、つまりコストに対し質が良いことを売りにしていきたいと考えている。これが、モロッコが人材へ投資しようと考えたきっかけだ。
質問:
国が運営する航空産業の人材育成機関はいくつかあるが、そのすみ分けは。
答え:
各教育機関で入学条件や輩出する人材の従事する業務で異なる。
  • 航空及び航空物流専門学校(ISMALA):作業員の育成。学歴の条件はない。
  • モロッコ航空機産業人材育成センター(IMA):作業のオペレーターおよび中間管理職の育成。バカロレア保持が入学条件。
  • モハメッド6世民間航空国際アカデミー(Académie internationale Mohammed VI de l'aviation civile - AIAC Mohamed VI:AIAC): 宇宙工学のエンジニアとマネージャー業務を行えるエンジニアの育成。フランスの教育システムにおける準備学級(Classes préparatoires aux grandes école: CPGE)の2年間での修了が入学条件。
質問:
ISMALA、IMAが地方でのリクルーティングなど積極的に事業を拡大する中で、モロッコが力を入れていきたいとするAIACのような研究機関の進展はどうか。
答え:
技術移転という観点からすると、カード ゲーム ブラック ジャック企業の誘致による技術のくみ取りには限界があるのも事実である。生産拠点として欧米企業を誘致すれば雇用の創出にはなるが、サフランやボーイングなど欧米企業は技術流出に敏感で、根幹となるシステム開発やデザインについての機密性は高い。上流工程でのノウハウや知識をどこまでモロッコ人が欧米企業からくみ取れるかには限界がある。
モロッコは、今後の航空産業におけるR&Dのエコシステムの強化を掲げているが、そのためには、モロッコ国内の研究機関が一定程度の成果を出し、欧州のR&Dと比べてそれなりに対等なプレイヤーとなる必要がある。モロッコは、航空産業のR&Dに従事できる人材創出の重要性に気がつき始めており、今後は、航空産業の人材育成メカニズムの中でもAIACやその他トレーニングセンターの成功が求められてくる。
能力の高い人材をモロッコにとどめる=ブレインドレイン(頭脳流出)を防ぐ、というのも重要な課題になってくる。例えばAIACはモロッコの航空産業において、R&Dの最先端ではあるが、そこで知識や技術を習得した若者の欧州への流出が発生している。そういった面でも、モロッコのR&Dエコシステムの強化というのは難しい。モロッコ政府やモロッコ経団連(CGEM:Confédération Générale des Entreprises Marocaines)は近年、世界のモロッコ系ディアスポラに対し、モロッコへの投資とモロッコへの回帰を訴えている。例えば、モロッコ系ディアスポラのモロッコ企業への投資にインセンティブを提供するという取り組み(注)である。モロッコの航空産業のR&Dの発展には、技術を持った若者がモロッコにとどまることが必要なため、職業訓練施設であるIMAやISMALAに加え、AIACでの研究にも力を入れていく必要がある。

カード ゲーム ブラック ジャック:結論

これまで見てきた通り、伝統的な主要産業である農業から、製造業をはじめとした高付加価値産業への転換を目指し、モロッコの産業高度化プロセスは着実にその歩みを進めている。

航空産業は、このモロッコ経済の成長戦略において、欧米企業の生産拠点誘致による雇用創生、外国企業とともに創る人材育成を通じた知識・技術の国内移転、自国企業・研究機関でのスキル蓄積と教育の内製化へとリレーをつなぐ、その先駆者的産業として政府が期待し、力を入れる新産業である。地元サプライヤーの育成や若手技術者の流出などの課題を抱えながらも、モロッコの地政学的位置づけが、外国資本を成長戦略に巻き込むことを可能にしている。


注:
モロッコ政府は、モロッコ系ディアスポラ(MRE: Marocains Résidant à l’Etranger)によるモロッコへの投資を促進するため、「MDM (Marocains du monde) Invest Fund」という基金を設置している。一定条件を満たしたMREに対し、100万ドル以上の投資を伴うプロジェクトに限り、プロジェクトにおけるMREの出資額10%相当の返済不要の拠出金が〔上限は 500万モロッコ・ディルハム(約7,500万円、MAD、1MAD=約15円)〕給付される。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課
吉川 菜穂(よしかわ なほ)
2023年、ジェトロ入構。中東アフリカ課でアフリカ関係の調査を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・ラバト事務所
ファティマザハラ・ベルビシュ
2017年からジェトロ・ラバト事務所に勤務。経済・産業・市場調査、商談会業務などを担当。