特集:中東・アフリカの新型コロナの影響と展望カカオ輸出に打撃、医療用品の国内生産で工業化促進(ガーナ)

2020年7月31日

2020年7月13日時点で、ガーナにおける新型コロナウイルスの感染者数は2万4,518人となっている(Our World in Data)。ピーター・クォーティー・ガーナ大学統計社会経済研究所(ISSER)教授・経済学部長・経済政策管理プログラム長に、ガーナ経済への影響や政府の取り組み、新たな産業の動きなどについて聞いた(2020年7月1日)。

質問:
短期的な経済・産業への影響は。
答え:
ガーナ経済への影響は年間で950億セディ(約1兆8,050億円、1セディ=約19円)と推定しており、医療対策費の負担や税収減、企業や家計の減収などが影響している。財政赤字は、2020年末までに当初見込みの189億セディ(GDP比4.7%)から302億セディ(修正後GDP比7.8%)に増加すると予想される。第1次所得収支は、28億セディ(GDP比0.7%)の黒字から56億セディ(GDP比1.4%)の赤字へ悪化すると予想される。2020年3月にケン・オフォリ=アタ財務相は、114億セディの歳入不足(修正後GDP比2.9%)を埋めるためには革新的な戦略や思考が必要だ、とした。
2020年第1四半期のGDP成長率は4.9%となり、2019年の6.7%に比べ鈍化した。サービス部門が9.5%の高い成長率を記録し、農業は2.8%となった。サービス部門は、過去10年間のICT(ブラック ジャック web通信技術)産業の拡大のおかげで、非常に好調であった。コロナ禍においても、移動制限によって多くの世帯が家にとどまり、多くのオンラインサービスや通信機器が利用された。
ホスピタリティ業界などでは、深刻な影響が見られた。ホテルやゲストハウスなどの稼働率がコロナ禍以前の70%から30%に低下したと推定され、2020年3月のレストランの利用客はコロナ禍以前より60%近く減少し、ロックダウンによりさらに悪化が予想される。
農業部門は、農薬や種子などの輸入と流通が影響を受けた場合、生産水準、価格や消費に影響する可能性があることから注意が必要である。
ガーナで主食の多くは地元で栽培されているものの、多くの食品も輸入されており、買いだめなどの影響で、2020年第1四半期に価格が上昇した。ガーナが大量に輸入しているコメなどは、世界的なバリューチェーンが混乱すれば、ガーナの食糧安全保障を脅かす可能性がある。消費者物価指数は、食品およびノンアルコール飲料が2020年4月に14.4%と前月の8.4%から大きく上昇した。非食品は7.4%から7.7%へとわずかな上昇だった。
一方、製造業などの産業部門は、1.5%の成長率にとどまった。中間財の輸入が減少し、建設などの部門でマイナス6.9%となった。輸入関税徴収額は、予算目標を3割程度下回っているペースだ。2020年に入ってから、外国直接投資が減少したことなども背景にある。
原油価格の下落は失業につながる可能性があり、また2020年第1四半期の石油収入は見込額の17.3%にとどまった。一方で、金はコロナ禍で安全な投資先と見なされ、世界的な需要が増加し、年初から現在まで価格が約27%上昇した。
質問:
再興に向けた政府の各種支援策などは。
答え:
コロナウイルス救済プログラム(CAP)が、コロナの影響を強く受けている企業に財政的支援を提供する。対象となる企業は、保健、教育、ホスピタリティ、その他の中小企業(MSME)だ。CAPのスキームでは、金利3%、最長1年間の猶予期間と2年間の返済期間が設けられる。支援策の総額は10億セディで運営され、2020年のGDPの0.15%、税収予算額の1.22%に相当する。
財務省は7月中旬までに、新たな政府の経済回復政策の概要を説明する予定だ。貿易産業省は、コロナ後の産業回復に焦点を当てた国家産業政策を今後、実施するとしている。
質問:
現地の主要な産業を担う企業の動きは。
答え:
主要産品のカカオは、輸出先港での封鎖や、輸出と販売の鈍化により、経済的な影響を受けている。カカオ取引価格の下落により、10億ドルの損失とされる。
鉱業はロックダウンから除外され、金採掘はすべての鉱山が中断することなく稼働している。多くの鉱山会社は、2020年の生産目標を達成できる見込み、と伝えられている。一方で、これまで4つの鉱山でコロナ感染が報告されており、ある鉱山では60人の労働者を隔離する必要があり、生産に影響したとされる。
コロナ対策として、4月に政府はガーナ企業4社の個人防護具製造を認め、さらに地域のバリューチェーン強化のため、個人防護具の主な材料をガーナ企業3社から調達するよう要請するなど、現地生産強化の動きがでている。工業化の促進につながるとの狙いもあるだろう。
ブラック ジャック web
執筆者紹介
ブラック ジャック web・アクラ事務所長
関根 広亮(せきね ひろあき)
2003年、ブラック ジャック web入構。ものづくり産業課、ブラック ジャック web・ニューデリー事務所、ブラック ジャック web地方事務所などを経て、2020年3月から現職。

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