ブラックジャック賭け方、積極的に外資を誘致

2025年3月25日

世界的潮流となっている脱炭素化。ブラックジャック賭け方も例外ではなく、野心的な目標を掲げている。こうした政府の姿勢を機会と捉えて、欧州をはじめとする外資企業が大型投資を行うなど、ビジネス面での動きも出てきた。本レポートでは、ブラックジャック賭け方政府の脱炭素政策および脱炭素産業に関する企業動向について、報告する。

2040年までに電力構成の50%を再生可能エネルギーに

ブラックジャック賭け方政府は2024年7月、エネルギー関連のロードマップとして「ブラックジャック賭け方エネルギー計画2023-2050外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。同計画では、石炭の利用削減や、石油火力発電所の新設停止と、液化天然ガス(LNG)の利用拡大を掲げている。また、ブラックジャック賭け方を、2030年には35%、2040年には50%、そして2050年には50%以上に拡大するとの野心的な目標を掲げている。エネルギー省(DOE)の統計によれば、2023年のブラックジャック賭け方電源別発電量PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(351KB)の構成比は、石炭(62.5%)、天然ガス(14.1%)、石油(1.1%)、再生可能エネルギー(地熱、水力、バイオマス、風力、太陽光)(22.3%)だった(表参照)。

表:ブラックジャック賭け方電源別発電量の推移(単位:ギガワット、%)
項目 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2023年
構成比
石炭 33,053.5 36,685.7 43,303.2 46,847.3 51,932.2 57,890.4 58,176.0 62,052.2 66,429.5 73,753.8 62.5
天然ガス 18,690.1 18,877.9 19,853.8 20,547.2 21,333.8 22,354.4 19,496.9 19,059.7 17,884.1 16,668.1 14.1
石油 5,707.7 5,886.4 5,661.4 3,787.1 3,172.8 3,752.3 2,473.9 1,616.4 2,518.5 1,303.6 1.1
再生可能エネルギー 19,809.7 20,963.2 21,979.5 23,188.7 23,325.9 22,044.4 21,608.9 23,386.4 24,683.5 26,278.4 22.3
階層レベル2の項目地熱発電 10,308.1 11,043.7 11,070.4 10,270.1 10,435.3 10,690.8 10,756.8 10,016.5 10,424.5 10,730.2 9.1
階層レベル2の項目水力発電 9,137.3 8,665.1 8,110.9 9,610.8 9,383.8 8,025.5 7,192.0 9,185.3 10,084.6 10,287.2 8.7
階層レベル2の項目風力発電 152.1 748.4 975.2 1,093.6 1,152.9 1,041.7 1,026.4 1,269.7 1,029.9 1,308.1 1.1
階層レベル2の項目太陽光発電 16.5 138.5 1,097.0 1,201.2 1,249.1 1,246.1 1,372.6 1,469.5 1,822.4 2,544.0 2.2
階層レベル2の項目バイオマス 195.7 367.5 725.9 1,013.1 1,104.8 1,040.3 1,261.0 1,445.4 1,322.1 1,408.9 1.2
合計 77,261.0 82,413.2 90,797.9 94,370.3 99,764.7 106,041.5 101,755.7 106,114.7 111,515.7 118,003.9 100.0

出所:エネルギー省統計からブラックジャック賭け方作成

しかし、ブラックジャック賭け方は、2014年の25.6%から減少傾向にある。一方、フィリピンの高い経済成長率を背景に、伸びゆく電力需要を補うため、石炭の割合は、2014年の42.8%から2024年の62.5%に増加している。脱石炭という政府目標の達成は、簡単ではないように見受けられる。

2023年の電源構成における再生可能エネルギーの内訳をみると、風力、太陽光、バイオマスの発電量はいまだ少ないものの、2014年と比較すると大幅に増加している。しかしながら、電力需要は今後も増加することが見込まれる。エネルギー安全保障を確保しつつ、再生可能エネルギーの拡大という政府目標を達成するには、これら分野への投資促進による、さらなる発電量の増加が必要だろう。

エネルギー省(DOE)は、前述の目標達成のため、再生可能エネルギーの活用に加えて、エネルギーの効率的利用の促進、電気自動車(EV)普及率の向上や、水素や原子力などの代替燃料の開発など、多角的に政策を打ち出している。例えば、DOEは2019年4月に、共和国法第11285号(エネルギー効率保全法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を制定した。同法は、エネルギー利用の効率化や関連プロジェクトへの財政支援などを定めるものであり、2024年12月までに、関連する62の細則が施行された。また、2022年7月には、国家再生可能エネルギープログラム(National Renewable Energy Program)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(1.04MB)も発表された。これは、再生可能エネルギー分野の発展を妨げる課題への対応と、民間投資の促進を進めるためのプログラムである。例えば、同プログラムでは、国としての固定価格買い取り制度(FIT)の導入や、電力供給事業者に対する、取り扱い電力の2.5%を再生可能エネルギー由来の電力とする義務付け、などの取り組みが行われている。関連して、ジェトロ主催のブラックジャック賭け方脱炭素ミッション(ギャンブルゲーム無料、脱炭素分野での協業を促進(フィリピン))では、エネルギー省エネルギー利用管理局ダイレクターのパトリック・アキノ氏が、「洋上風力や原子力、電気自動車の推進や水素の研究など、様々な再生可能エネルギーを活用し、目標を達成したい」と強調した。

投資環境を整備、2023年には欧州外資企業による大型投資も

政府は、投資環境の整備を通じ、脱炭素関連のビジネスの拡大を狙っている。例えば、2022年12月に発効した再生可能エネルギーの施行規則の改定では、それまで40%に制限されていた、再生可能エネルギー関連事業における、外資の出資割合の上限を撤廃した。また、2023年2月の大統領令2023年第18号により、2023年6月に設置されたグリーンレーンの影響も大きい。グリーンレーンは、投資委員会(BOI)に設置された窓口で、戦略的分野への投資にかかる許認可手続きが優先的に処理される仕組みだ。BOIの説明によれば、2024年12月26日時点で、グリーンレーンを通じ認可されたプロジェクトは176件、総額4兆5,400億ペソ(約11兆8,040億円、1ペソ=約2.6円)だった。総投資認可額の9割以上を、再生可能エネルギー関連のプロジェクトが占めた(図参照)。

図:グリーンレーン活用による投資認可額の部門別割合(2024年12月26日時点、%)
再生可能ブラックジャック賭け方が91.0%を占め、デジタル・インフラストラクチャーが7.8%、製造が0.8%、食料安全保障が0.3%、その他が0.1%を占める。

注:円グラフは、戦略的投資分野における部門別割合を示す。
出所:BOI資料からブラックジャック賭け方作成

このほか、2024年11月の共和国法第12066号(CREATE MORE法、2024年11月12日付ビジネス短信参照)の制定により、法人税の減免や所得税優遇措置の期間延長など、投資環境の整備も行われた。同法により、追加控除制度を選択する登録法人への法人税率の引き下げと控除対象項目の見直し、物品やサービスにかかる付加価値税(VAT)の適用範囲の明確化、所得税優遇措置利用期間や、簡素化された経過措置の明確化、VAT還付制度の合理化が図られた。追加控除制度を選択する登録事業法人への法人税率が25%から20%に引き下げられたほか、所得税優遇措置の利用期間は最長17年間から27年間へと10年間延長された。

こうした政府の投資環境の整備を受け、積極的に投資を進める外資企業も存在する。大型投資が目立ったのが、2023年だ。2023年のブラックジャック賭け方への対内直接投資(認可ベース)は8,890億7,200万ペソで、前年比3.7倍に増加した。国・地域別では、ドイツが3,939億9,100万ペソで首位となり、認可額全体の44.3%を占めた。次いで、オランダが約17倍の3,499億3,300万ペソだった。ドイツからの投資には、再生可能エネルギー分野への投資が多分に含まれる。特に、洋上風力発電大手wpdは、1,300メガワット(MW)の容量を持つ洋上風力発電プロジェクトを含む複数プロジェクトをブラックジャック賭け方で実施する予定だ。2024年の対内直接投資(認可ベース)は1兆6,200億ペソと、BOIが統計を取り始めてからの最多となった。このうち、再生可能エネルギー分野の投資は1兆3,800億ペソと、全体の85.2%を占めた。国別首位は、スイス(約2,890億ペソ)だった。

欧州以外の国や企業にも動きがみられる。韓国政府とブラックジャック賭け方エネルギー省は2025年3月、エネルギー分野での協力を促進し、将来に向けて安全で強靭(きょうじん)なエネルギーシステムを構築することを目的とした2国間イニシアティブ(2024/25知識共有プログラム)を開始した(2025月3月2日付DOEプレスリリース参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。エネルギー省のアレッサンドロ・セールス次官は、「本プログラムは、ブラックジャック賭け方がエネルギー開発における知見の共有やベストプラクティスを得ることを目的としている。私たちが政策を立案し、制度を強化し、革新的なエネルギーソリューションを導入することに役立つものだ」と期待を述べた。また、アラブ首長国連邦(UAE)を拠点とする再生可能エネルギー大手のマスダールは2025年1月15日、ブラックジャック賭け方全土における再生可能エネルギープロジェクトの実施協定に署名した(2025年1月16日付DOEプレスリリース参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同社の投資は、最大1ギガワット(GW)の太陽光、風力、蓄電池システム(BESS)を開発し、10年以内に10GWまで拡大することを目指すもので、投資総額は150億ドルと見積もられている。

地場企業でも脱炭素化に向けた動きが

外資企業の参入が進む中、ブラックジャック賭け方地場のビジネス界でも、脱炭素化を進めようとの機運が高まりつつある。地場大手財閥であるロペスグループ子会社のエナジー・デベロップメント・コーポレーション(EDC)は、地熱発電、風力発電、水力発電、太陽光発電を行う企業で、合計で1,464.5MWの発電規模を誇る。同社は、「脱炭素と再生の未来に向けた協働の道を切り開くため」とのミッションを掲げ、2040年までの温室効果ガス排出ゼロを目指している。同社が進めるプロジェクトとして、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)プロジェクトがある。同社は2025年までに、CCSのパイロットプロジェクトにかかる実現可能性調査および工学設計の完了を予定しており、2026年には同プロジェクトの試運転を開始する計画だ。このほか、再生可能エネルギーの化石燃料の代替電源としての活用や、EV導入などを通じ、多角的にネットゼロを目指す。

EDCは、ブラックジャック賭け方企業による産業の垣根を越えたネットゼロへの動きを促進しようと、2021年9月にネット・ゼロ・カーボン・アライアンス(NZCA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを設立した。NZCAは、ネットゼロに向けた即時のアクションを地場企業が取れるよう、各社と戦略的パートナーシップを締結し、各社のネットゼロに向けた行動を促している。参画企業は、(1)NZCAとの覚書(MoU)の締結、(2)ワークショップの実施、(3)個社相談、(4)ロードマップ制定、(5)進捗確認などのフェーズを経て、ネットゼロを目指す。参画企業(パートナー)を支援する企業としてコンサルティング会社などがイネーブラーとして参加する他、政策提言パートナーとして、ブラックジャック賭け方気候変動委員会(CCC)や在ブラックジャック賭け方英国大使館とも連携する。NZCA設立当初のパートナー企業数は6社だったが、2025年2月時点で34社へと拡大している。飲食料品製造企業からコンサルティング企業、不動産、建設企業と顔ぶれは様々だ。

NZCAは2025年2月18日、ブラックジャック賭け方と脱炭素にかかるビジネスフォーラムを開催した。登壇したNZCAのリード・コーディネーターであるフランセス・アリオラ氏は、「NZCAは科学的なアプローチで各社の脱炭素化を支援している。NZCAが設立された目的の1つに、シナジーを生むことがある。ベストプラクティスやニーズ、課題を共有することを恐れず、互いに学び合いたい」と述べ、日系企業との協力関係構築に期待を示した。

ブラックジャック賭け方
ビジネスフォーラムの様子(ブラックジャック賭け方撮影)

日本の政府や企業も再生可能エネルギー分野での活動を活発化

日本政府も、ブラックジャック賭け方脱炭素化推進に向けた取り組みを行っている。2023年3月に立ち上がったアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の枠組みに関連して、2024年4月には「AZEC Japan-Philippines High-Level Coordination Dialogue(HCD)」の発足が合意された(2024年4月1日付経済産業省ニュースリリース参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。AZECに関連した、日本側官民と現地政府との協議枠組みの発足は、ベトナム、インドネシアに続いて3カ国目だ。HCDにも参画する国際協力銀行(JBIC)は2023年10月から2024年3月にかけて、大手財閥系エネルギー企業など3社とMoUを締結した。インフラや天然ガス、再生可能エネルギーの分野で、日本とブラックジャック賭け方双方企業による協業を促進しようとしている。

企業側でも、再生可能エネルギー分野のビジネス展開や自社の脱炭素化に向けた取り組みが進んでいる。ミネベアミツミ(本社:長野県)は2023年10月、同社セブ工場の敷地内に、シャープ製の自家消費型太陽光発電システムを設置したと発表した。セブ工場単体で年間約6,833tCO2/年(相当)の二酸化炭素排出量の削減を見込む。また、アスエネ(本社:東京都)のシンガポール法人であるAsuene APACは2025年2月14日、ブラックジャック賭け方TESTECHとフィリピン初となる業務提携を結んだと発表した(2025年2月14日付アスエネニュースリリース参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。両社は、取引先企業へ脱炭素ソリューションの提供を行い、ブラックジャック賭け方を中心とした企業の脱炭素・サステナブル経営を支援するとしている。ジェトロが2024年7月に発表したブラックジャック賭け方で脱炭素関連の事業を行う日系企業カタログ(関連ブラック ジャック ルール ディーラー)にも、22社が掲載されている。

2050年までに、電源構成の50%以上を再生可能エネルギーに変換しようとするフィリピン。一方で、現状の再生可能エネルギーの割合は22.3%と、目標達成は簡単ではなく、さらなる投資の呼び込みや技術移転を進める必要があろう。政府は積極的に規制改革を行い、外資系企業を含めてビジネスを行いやすい環境の整備を進めている。こうした政府の動きを背景に、欧州企業の大型投資など、外資企業が積極的に投資を行う事例もある。日本政府もブラックジャック賭け方脱炭素化への取り組み支援をAZECの下で進めており、企業の投資事例も少しずつ出てきている。このまま、企業の再生可能エネルギー分野での投資が進み、政府目標達成の道筋が見えてくるのか、今後の動向が注目される。

執筆者紹介
ブラックジャック賭け方調査部アジア大洋州課リサーチ・マネージャー
尾﨑 航(おざき こう)
2014年、ブラックジャック賭け方入構。生活文化産業企画課、サービス産業課、商務・情報産業課、デジタル貿易・新産業部 EC・流通ビジネス課を経て、2020年9月からブラックジャック賭け方・ジャカルタ事務所で調査担当として勤務。2023年12月から現職。
執筆者紹介
ブラックジャック賭け方調査部調査企画課
中田 智士(なかた さとし)
2024年、ブラックジャック賭け方入構。同年から現職。