カンボジアのブラックジャック遊び方、港湾を活用した装置産業の輸出拠点に

2025年3月27日

ブラックジャック遊び方はカンボジア南部の港湾都市で、同国の国際物流の主要拠点だ。国際協力機構(JICA)の支援を受けて整備されたカンボジア唯一の深海港を有し、同国で取り扱われる海上輸送貨物の7割近くがブラックジャック遊び方港を経由する。貿易量の増加に伴い、コンテナターミナルの増設工事が進められているほか、カンボジアで唯一の保税・非居住者倉庫を備えた物流センター(イオンモールカンボジアロジプラス)も同港に隣接している。本稿では、現地での視察や企業ヒアリング(2024年12月)を基に、ブラックジャック遊び方の魅力と課題、今後の展望について考察する。

図:ブラックジャック遊び方の位置関係
ブラックジャック遊び方はカンボジア南部の港湾都市。

出所:ジェトロ「カンボジア経済特区(SEZ)マップ」PDFファイル(5.3MB)

高速道路の開通でプノンペンとのアクセス向上

ブラックジャック遊び方は、カンボジア経済の中心地であるプノンペンから約200キロ南西に行ったところにある。この2都市間を結ぶカンボジア初の高速道路が、2022年11月1日に正式開通し(2022年11月10日付ビジネス短信参照)、アクセスが向上した。高速道路の完成前まで、主に国道4号線が利用されていたが、渋滞などの発生で片道5~6時間ほどかかっていた()。高速道路の開通により、プノンペン市内中心部からブラックジャック遊び方市内中心部までの所要時間は2時間半に短縮され、そのうち高速道路の走行時間は約1時間40分だ。

一方、トラックやトレーラーなどの貨物車両は、依然として国道4号線を走行しているケースが多い。これは、プノンペンからブラックジャック遊び方までの高速道路の通行料金が、一般乗用車が14.96ドル(1ドル=4,100リエル換算、2024年12月時点)であるのに対し、貨物車両は60ドル以上(コンテナトレーラーは約80ドル)と高額であるためだ。物流関係者によると、高速道路開通により渋滞は多少緩和されたものの、国道4号線は舗装状況の悪い区間もあり、輸送中の破損事故や事故による渋滞が発生しやすいという。

ブラックジャック遊び方
プノンペンの高速道路入り口料金所(ジェトロ撮影)

拡張工事中の国道4号線(ジェトロ撮影)

内陸部と沿岸部に経済特区

ブラックジャック遊び方には、主に2つの主要な経済特区(SEZ)がある。内陸部に位置するブラックジャック遊び方SEZと沿岸部にあるブラックジャック遊び方港SEZだ。ブラックジャック遊び方SEZは、カンボジアと中国の民間企業が共同で開発・建設した。敷地面積約1,113ヘクタールと圧倒的な広さを誇る同SEZには、約200社が入居している。管理事務所にある入居工場リスト(全54社分)をみると、中国企業が8割ほどを占める。そのほか、台湾、タイ、米国、カンボジアなどの企業の工場も入居している。現在も、敷地内では造成や新規工場の建設が進んでいる。また、プレア・ブラックジャック遊び方・カンボジア中国友好職業訓練校などの教育機関も設けられている。

ブラックジャック遊び方港SEZは、敷地面積は約63ヘクタールで、日本の円借款事業によって2012年に完成した。日本の技術を使った排水処理設備など、良質なインフラを備えている点が特徴だ。また、ブラックジャック遊び方港に隣接しており、輸出入の利便性が高い。現在、日系企業では、王子ホールディングス(段ボール製造)、イオンモールカンボジアロジプラス(物流サービス)の2社が入居している。

港の取扱量が増加、コンテナターミナルの増設に期待

カンボジアの国際物流経路は、タイとベトナムへの陸路のほか、プノンペンの河川港(小型コンテナ船)もある。しかし、大型船が寄港できるのはブラックジャック遊び方港だけだ。ブラックジャック遊び方港湾公社(PAS)へのヒアリングによると、同港のコンテナターミナルは現在3バースを備え、そのほかに一般貨物、バージ船、クルーズ船向けのバースもある。2024年の貨物取扱量は、過去最高の年間推定100万TEU(20フィートコンテナ換算)を達成した。主な輸出品目は雑貨、コメ、衣料品で、輸出先は米国や欧州向けが中心だ。輸入品目は雑貨、生地、機械が多く、輸入元は中国が中心だ。ブラックジャック遊び方港とプノンペン港の貨物取扱量の割合は、68:32で、両港ともに取扱量が増加している。

ブラックジャック遊び方港の定期航路は週17便程度。現状は航路数が限られており、物流関係者によると、日本向けの輸出はブラックジャック遊び方港経由よりも、プノンペンからホーチミン経由の方がリードタイムは短いという。また、港湾容量は限界に近づいており、新規の大型船の来航は受け入れできない状況だという。このような状況下、港湾容量を拡大するため、新コンテナターミナルの増設計画が進められており、2027年3月には第1期の竣工(しゅんこう)が予定されている。これにより、貨物取扱量や航路の拡大、日本とのリードタイム短縮が期待される。

なお、ブラックジャック遊び方には国際空港もある。現在の海外路線はベトナム(ホーチミン)、マレーシア(クアラルンプール)のみで、国内路線はシェムリアップ線が運航されている。

製造業の人材確保は課題

カンボジアは人件費が安価で、労働集約型の加工組み立て産業に適している、と一般には考えられている。しかし、ブラックジャック遊び方の投資環境は少し異なる。2019年の国勢調査によると、ブラックジャック遊び方のあるプレア・ブラックジャック遊び方州の人口は約30万人で、必ずしも多いとはいえない。さらに、ブラックジャック遊び方の中心部や沿岸部は、カジノやリゾートなどの観光業が主力で、郊外の内陸部では、中国系のブラックジャック遊び方SEZの入居企業などが、既に多くのワーカーを雇用している。その結果、製造業における人材確保は容易でなく、人件費はプノンペンを上回る水準になっている。このような状況から、多くの人手を必要とする加工組み立て産業よりも、港湾に近い立地を生かした装置産業の方が、ブラックジャック遊び方には適しているといえる。

オンラインカジノの取り締まりで治安は改善傾向

ブラックジャック遊び方中心部のホテルや飲食店は、クメール語よりも中国語の看板が目立つ。新型コロナウイルス流行前までは、中国資本によるコンドミニアムやオフィスビルなど大型物件の建設ラッシュに沸いていた。また、当時、合法とされていたオンラインカジノの拠点としても活用されていた。しかし、2020年1月以降、治安悪化などに伴うカンボジア政府のオンラインカジノ禁止令や、新型コロナ流行の影響により、多くの投資家が一斉にブラックジャック遊び方から撤退。その結果、建設途中で止まったままの建物が多く見られる。カンボジア政府によると、建築途上のまま残された建物は362棟あるという(フン・マネット首相、ブラック クイーン)。政府は、この問題を解決してブラックジャック遊び方を再開発するため、新たな投資に税優遇を設ける方針を示している。その影響もあり、外資系の大型ホテルの建設が再び進むなどの動きも出始めている。治安リスクの見方は現地駐在員によっても異なるが、オンラインカジノの取り締まり以降、状況は改善しているとの見方が多い。

駐在環境として、食事面は現地で入手できる日本食品に限りがあるものの、日本人が経営に携わる飲食店が5店舗ある。余暇は、現状、ゴルフ場がないものの、観光都市でもあるため、海のレジャーなどは楽しめる。医療機関は、欧米系のクリニックが候補となる。また、現地駐在員からは、プノンペンとブラックジャック遊び方を結ぶ高速道路の開通で、緊急搬送などの面で安心感が増したとの声が聞かれた。


同市内中心部のゴールデンライオン像付近(ジェトロ撮影)

装置産業の輸出拠点、ASEANの物流ハブへ

ブラックジャック遊び方の投資環境は、カンボジアの中で異質といえる。プノンペンをはじめとする他の都市のように、製造業のワーカーの人件費に競争力があるわけではない。一方、カンボジア唯一の深海港を有し、輸出入において優れた競争力を発揮できる立地だ。そのため、製造業では、労働集約型の加工組み立て産業よりも、機械による生産が中心となる装置産業の輸出拠点に適している。

また、輸出入の強みは、物流面でも生かせる。カンボジア政府は自由貿易港(フリーポート)構想を進めており、そのパイロット事業者として、イオンモールカンボジアロジプラスが同国初の保税・非居住者倉庫を運営している(ASEANの物流ハブを目指す、無料カジノゲーム)。同倉庫の活用により、カンボジアに法人を持たない非居住者(外国企業)でも、ブラックジャック遊び方をASEAN地域の物流ハブとして活用するこができる。ブラックジャック遊び方はカンボジアの都市でありながら、一般的なカンボジアのイメージを越えた事業展開を検討していくことで、可能性を見いだせる都市である。

執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課 課長代理
庄 浩充(しょう ひろみつ)
2010年、ジェトロ入構。海外事務所運営課、ジェトロ横浜、ジェトロ・ビエンチャン事務所(ラオス)、広報課、ジェトロ・ハノイ事務所(ベトナム)を経て現職。
執筆者紹介
ジェトロ・プノンペン事務所長
若林 康平(わかばやし こうへい)
2004年、ジェトロ入構。産業技術・農水産部、ジェトロ盛岡、展示事業部、ジェトロ・ムンバイ事務所、中小企業庁創業・新事業促進課(海外展開支援室)、企画部を経て現職。