高級地場ブランドの成長を取り込む
ブラック ジャック ランキング

2024年12月6日

日本最大の毛織物産地である尾州産地(以下、尾州)は、イタリアのビエラ、英国のハダースフィールドと並んで世界3大ウールの生産地の1つといわれる。愛知県一宮市、津島市、稲沢市、江南市、岐阜県羽島市などを中心とした地域から構成される尾州産地は、糸から生地にするまでの複数の加工過程〔紡績、撚糸(ねんし)、染色、製織、整理加工〕を産地の中で分業・協業していることで、多品種少量生産、短納期を実現できる点が強みとされてきた。高品質で先進的なデザインの生地を求める、欧米のハイブランドとの取引実績を有する企業も多い。

尾州の企業が、2017年から新たに中国市場の開拓に取り組んでいる。尾州の複数の毛織工業組合から構成される日本毛織物等工業組合連合会や自治体などが尾州バイヤー招聘実行委員会(注)を組成し、ジェトロと共催で中国の高級アパレルブランドを招聘(しょうへい)。製織工程を担う地元のテキスタイル企業などとの間で商談会(以下、中国バイヤー商談会)を開催するほか、工場視察を通して産地に対する理解向上も図りながら、ブランドとの交流を深めてきた。中国バイヤー商談会は、2017年の初開催後、新型コロナ禍の際にはオンライン形式で事業を継続し、2023年からは対面形式での開催が復活。2024年8月の開催で連続8回目を迎えた。

本稿では、中国バイヤー商談会への参加をきっかけとして、中国市場の開拓を図る尾州企業4社の取り組みを、前編・後編に分けて紹介する。

中国地場の高級ブランドが成長、素材や生地へのこだわりも追い風に

ユーロモニターが提供するデータベースPassportによると、中国におけるアパレル産業の売上高は、2023年に前年比3.1%増の3,052億ドルと、日本の6.6倍の規模となっている。また、同売上高のうち、Eコマース(EC)による売り上げが占める割合は39.0%に達し、コロナ禍前の2019年(25.4%)から13.6ポイント上昇した。なお、2023年の中国の小売額全体に占める実物商品のECの割合は27.6%であり、小売全体に比べアパレル産業のEC化率が高いことが分かる。

中国のアパレル市場において注目されるのが、地場の高級ブランドの成長だ。代表例の1つである、1997年に設立された之禾卡紛集団(ICCFグループ、本社:上海市)が手掛けるICICLE(アイシクル)は、「天(自然)と人は一体なるもの」をコンセプトとして、婦人服、紳士服、アクセサリーなどを展開する。天然素材を使った生地などを多く取り扱っており、日本でも東京と大阪の百貨店内に店舗を構える。このほか、江南布衣(JNBY、本社:浙江省杭州市)が展開する婦人服ブランドのLESS、歌力思集団(本社:広東省深セン市)が展開する婦人服ブランドのELLASSAYなどが挙げられる。

また、上述のEC化率に表れるとおり、コロナ禍以降の消費者の購買行動が変化する中で、ECを主な販路に持つ高級アパレルブランドも出てきている。競争がますます激化する中、各ブランドは差別化のため、生地の調達に力を入れている。

消費者の嗜好(しこう)面では、消費の高度化が進む中で、よりシンプルで洗練されたデザインが好まれる傾向がみられ、生地の耐久性や着心地を重視することから、素材や生地への関心も高まっていると指摘される。

こうした中、中国バイヤー商談会では、上述の3ブランドを始め、尾州の生地に関心を有する高級ブランドにターゲットを絞り、商談会を実施してきた。

リスクを取り在庫を持つスタイルが強み、スピード重視のECブランドとの取引も

ファインテキスタイル(本社:岐阜県羽島市)は、婦人服地の企画・販売を手掛ける企業だ。商品企画にあたっては、自社で糸から調達している。同社の浅野拓郎 代表取締役社長に中国の販路開拓の取り組みについて話を聞いた(取材日:2024年9月24日)。

質問:
貴社のビジネスに占める中国市場の割合は。また、取引の状況は。
答え:
当社の売上額全体のうち、輸出は約3~4割を占める。輸出先のうち中国が約7割を占めており、韓国が約2割、その他が約1割となっている。ブラック ジャック ランキング市場の開拓では15年ほど前から韓国向けの取引が先行。当時、中国向けにもごく少量の取引があったが、「価格が高い」という反応で、大きな取引には発展しなかった。しかしながら、その後、成長を遂げつつある中国の高級ブランドを招聘すると聞いて、あらためて中国企業との取引にも可能性を感じ、2017年の第1回中国バイヤー商談会に参加。バイヤーの反応に手応えを感じたことから、以来、毎回欠かさず参加しており、商談が成立した複数のバイヤーとの間で、取引を継続している。
質問:
中国市場のニーズの変化は。また、コロナ禍の前後で貴社の中国ビジネスに変化はみられているか。
答え:
2017~2023年ごろは、日本での流行を追うような形で中国でも「ファンシーツイード」(カラフルな糸や装飾的な糸を織り込んだツイード)の引き合いが多かったが、足元では流行が捉えにくくなっていると感じる。嗜好が多様化し、市場セグメントの細分化が顕著になっている。コロナ禍前後でのビジネスの変化としては、コロナ禍前には実店舗を持つデザイナーズブランドなどとの取引が主だったが、コロナ禍以降はECを主な販路とする高級ブランド(以下、ECブランド)との取引も増えた。
質問:
ECブランドとの取引では、実店舗での販売をメインとする従来のバイヤーとの取引とどのような違いがあるのか。
答え:
ECブランドは、よりスピードを重視する傾向が強い。「あるもので作り、すぐ売る」「とにかく生地を確保して売る」というスタンスが顕著だと感じる。実店舗をメインとするブランドとの取引では、基本的には受注生産(バイオーダー)の取引になるので、まず、着分(量産発注前のサンプル作成時に発注する、メーター指定で裁断した生地)のオーダーを受け、その1~2カ月後にブランドがサンプルを展示会に出し、反応をみたうえで本オーダーを受けるというのが一般的な流れである。この場合、本オーダー1件あたりの発注量は1,000~2,000メートルが一般的だ。他方、ECブランドは、着分のオーダーからサンプルの仕上がりまで約2週間で、その後すぐに本オーダーを受けるという流れになる。1件当たりの発注量は300メートル程度だが、複数種類の発注を受けることが多い。ECブランドが求めるスピード感に対応するためには、在庫を抱えていないと難しい。その点、自社の強みはリスクをとってしっかり在庫を持っている点にある。
質問:
ブラック ジャック ランキングビジネスを進めるうえでの貴社の体制は。また、今後の方針は。
答え:
ブラック ジャック ランキング営業に関する業務は、自身も含め、各営業担当がそれぞれ担当している。輸出形態は間接輸出であり、バイヤーとのやり取りについては日本国内のエージェントと契約して対応してもらい、貿易業務などもその国内エージェントにお任せしている。中国市場向けでも複数のエージェントと契約しているが、その中でも取引量が多いエージェントには、中国バイヤー商談会に必ず同席してもらい、商談会前後のフォローにもしっかり対応してもらっている。同商談会は、直接現地バイヤーのニーズを把握できるコミュニケーションの場として非常に重要だと捉えている。今後も参加を継続しながら、取引先を増やしていきたい。また、欧州市場向けのビジネスにも取り組んでいきたい。

独自の撚糸技術を武器に、BtoBビジネスにも初挑戦

浅野撚糸(本社:岐阜県安八郡)は、世界初の特殊な撚糸技術を使った糸「SUPER ZERO」の開発・製造と、「SUPER ZERO」を使ったタオル製品の販売を手掛ける企業だ。同社は中国市場において、2010年ごろから主力のタオル製品「エアーかおる」でBtoC向けの販路開拓に取り組んでおり、輸出額を増やしてきた実績を有する。ジェトロがジャパンパビリオンを設置する中国国際輸入博覧会(CIIE)にも2018年の第1回開催時から出展を継続している。こうした中で、同社は新たに糸やタオル生地を売り込むBtoBビジネスの販路開拓に挑んでいる。取り組みについて、浅野宏介 専務取締役に話を聞いた(取材日:2024年9月24日)。

質問:
BtoBビジネスの取り組みの経緯は。
答え:
中国バイヤー商談会への参加がきっかけとなり、BtoBビジネスにも挑戦することとなった。同商談会には2023年から2年連続参加している。自社は撚糸メーカーであり、生地の販売のノウハウがないことから、参加する予定はなかった。しかしながら、当社のクリエイティブディレクターに就任した、世界的なテキスタイルデザイナーである梶原加奈子氏から、「もっとブラック ジャック ランキングに向けて積極的に動くべきだ」と強く後押しを受け、同商談会への参加を決めた。
質問:
商談会の成果は。
答え:
商談会を通じ、某レディースブランドとの取引が始まった。同ブランドが製造するタオルなどライフスタイル雑貨向けに、当社の糸を使いたいとのことで、商談から1年足らずで成約に至った。
質問:
今の中国市場の魅力をどう捉えているか。また、今後の方針は。
答え:
日本では、中国の景気低迷に関する情報などネガティブな報道が目立つが、実際に現地市場を見てみると、確かにそういった面もあるが、そうではない面もあると感じている。中国が高い成長率で発展していく時代は既に通り過ぎたが、中国の消費者はむしろ今でこそ「本物」を求めるレベルに達していると感じる。以前のような周りに誇示するためにブランド品を買うという消費行動から、「本物」を買って、自分自身で大切に使いたいという消費観に変化していると感じる。
他方で、消費者の商品知識が高まり、商品選択の目も肥えている中で、単に「日本製」を訴求するだけでなく、ストーリーを語る重要性が増している。当社としては、強みである撚糸の技術について、タオルメーカーに任せきりにせず、自分たちでしっかりと訴求していくことが重要だと考えている。これまで長年取り組んできた経験の中で、中国ビジネスは一気にうまくいくというものではなく、腰を据えて、日本市場以上にコツコツと取り組んでいくことが必要だと感じる。今後も、BtoC向けのビジネスに加え、BtoBでも中国バイヤー商談会を活用しながら、輸出を強化していきたい。

注:
尾州産地バイヤー招聘実行委員会の構成団体は、日本毛織物等工業組合連合会、愛知県、一宮市、公益財団法人尾州ファッションデザインセンター。

尾州毛織物の中国市場開拓

  1. 高級地場ブランドの成長を取り込む
  2. 産地が抱える課題と活路は
ブラック ジャック ランキング
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課 課長代理
小林 伶(こばやし れい)
2010年、ジェトロ入構。ブラック ジャック ランキング調査部中国北アジア課、企画部企画課事業推進班(北東アジア)、ジェトロ名古屋などを経て2019年6月から現職。