産地が抱える課題と活路は
ブラック ジャック カード ゲーム
2024年12月6日
日本最大の毛織物産地である尾州産地(以下、尾州)は、新たなブラック ジャック カード ゲーム販路開拓に向けて中国の高級アパレルブランドを対象とした商談会(以下、中国バイヤー商談会)を実施してきた。 本稿では、中国バイヤー商談会への参加をきっかけとして、中国市場の開拓を図る尾州企業の取り組みを紹介する。連載後編(前編は「高級地場ブランドの成長を取り込む」参照)。
現地法人の機能を生かし、きめ細かなフォローが強みに
鈴憲毛織(本社:愛知県一宮市)は婦人服地の企画・製造・販売を手掛ける。同社は、中国バイヤー商談会には2017年の初開催時から継続して参加してきた。尾州の多くのテキスタイル企業が中国現地に拠点を持つエージェントと契約し間接取引を行っているのに対し、同社は中国に設立した現地法人の機能を生かし、バイヤーとの間で直接取引を行っている。同社の中国市場開拓の取り組みについて藤澤 亨 代表取締役に話を聞いた(取材日:2024年9月24日)。
- 質問:
- 貴社の中国現地法人の機能と活用状況は。
- 答え:
- 昆山市に置いていた現地法人を閉鎖し、2014年に新たに上海市に法人を立ち上げた。貿易・営業拠点としての機能を担っている。現地法人の中国スタッフが、バイヤーへの提案や、商談後の取引のサポートなどをきめ細かにフォローできることが自社の強みだ。また、直接取引により、間接コストやリードタイムの削減にもつながり、メリットは大きいと感じている。
- 質問:
- 中国ビジネスの状況は。
- 答え:
- 自社の売り上げ全体に占める輸出の割合は約25%で、その全量が中国向け。今後は輸出比率を4割程度まで引き上げたいと考えている。取引先は4社に増えており、いずれも中国バイヤー商談会をきっかけに取引が開始した。今後は、EC(電子商取引)を主な販路に持つ高級ブランド(以下、ECブランド)とも取引開始を目指してアプローチしているところ。
- 他方で、ECブランドとの取引では、実店舗を主な販路とするブランドと比較し、在庫リスクが高まると認識している。実店舗を主な販路とする高級ブランドでは、受注生産(バイオーダー)の取引を主とするが、ECブランドとの取引では、よりスピードを重視され、かつ年間を通して散発的に注文が入る傾向があるため、常に在庫を持っておく必要が生じるためだ。こうした課題はあるものの、しっかりとした中国地場の商社に間に入ってもらい、自社の在庫リスクを抑えながらビジネスに挑戦してみたいと考えている。同商談会を通して接点を持った商社もあり、アプローチを検討している。
- 質問:
- 引き合いが強い生地の特徴は。
- 答え:
- 表面に加工が入り「つるつる」「ぬるぬる」「がさがさ」など独特な手触りの生地に対する関心が高いと感じる。また、中国企業では製造が難しい「撚(よ)り」「逆撚り」の生地や、ドビー織の生地なども引き合いを受ける。最近では、中国ブランドのコスト意識も高まっていると感じる。
- 質問:
- 中国市場開拓の課題と今後の方針は。
- 答え:
- 課題は主に2点だ。1点目は、一定量の生地在庫を持っておかないと商売にならないという点。着分(量産発注前のサンプル作成時に発注する、メーター指定で裁断した生地)として、それぞれの生地について4~5メートル分の在庫を持つには資本力が必要だ。当社のような生地メーカーが、大量・多品種で在庫を保持するには限界がある。
- 2点目は、尾州全体の産業規模の縮小、生産能力の低下により納期が長期化しているという問題だ。生地の生産に必要な各工程にボトルネックが生じており、生地を生産するまでに3~4カ月を要してしまうのが現状だ。地域内の分業により、多品種・少量生産を短納期で対応できるという尾州の優位性が揺らいでいる。一貫生産を行う中国企業では、原毛から洋服の状態にするまでを1カ月で仕上げてくる。
- 当社としては、ターゲットを絞って在庫を持つことで、対応していきたいと考えている。天然繊維をメインで取り扱う高級ブランド向けの商品開発など、ターゲットを絞って提案力を強化し、短サイクルの生産可能な商品群の整理と生産力の強化を図ることを具体策と捉えている。
最新鋭の機械導入だけでは生まれない、デザインの多様性
時田毛織は、紳士服地および婦人服地の企画・製造・販売を手掛ける。同社の時田典幸代表取締役社長は、尾州の複数の毛織工業組合から構成される日本毛織物等工業組合連合会(以下、毛工連)の理事長を務める。毛工連は、中国バイヤー商談会の実行委員会の主導的役割も担っている。時田代表取締役社長に、同社の取り組み状況と、尾州産地としてのブラック ジャック カード ゲーム販路開拓における課題や、今後の方針について話を聞いた(インタビュー実施日:2024年9月24日)。
- 質問:
- 貴社の中国ビジネスの状況は。
- 答え:
- 自社の中国との取引額全体のうち、輸入が約95%、輸出が約5%を占める。2002~2003年ごろに中国のテキスタイル工場を視察したことをきっかけとして、中国製の生地の質の良さに驚いた。主に江蘇省張家港市などで生産された生地を仕入れ、東南アジアなど第三国に輸出している。中国の生地メーカーも、これまでは日本のメーカーと同様にバイオーダー(受注生産)による対応が大半を占めていたため、当社が間に入ることで、取引先からは「欲しい生地が迅速に調達できる」と重宝された。しかしながら、2023年ごろから中国メーカーも在庫を持つスタイルを取る企業が増えてきたと感じる。
- 中国向け輸出では、中国バイヤー商談会を通じて出会ったブランド1社と取引がある。同商談会には2023年から参加しており、引き続き輸出にも力を入れていきたい。
- 質問:
- 輸入事業を通して多くの中国企業と交流を持つ貴社から見て、中国企業が優れている点は。
- 答え:
- 尾州が中国企業から学ぶべき点は多いと感じる。例えば、ブラック ジャック カード ゲーム展示会の出展に向けた準備や臨み方もしかりだ。取引先の中国企業が、7月にパリで開催されたファッション素材の総合見本市「プルミエール・ヴィジョン(PV)」に出展した。当該企業のブースの一角に、自社の生地を置かせてもらい、自らも会場に足を運び、中国企業の商談の様子を間近に見る機会を得た。その中国企業は、PVには初出展だと聞いていたが、事前準備としてエージェント選定のための商談をしっかり行い、その後に契約したエージェントを同行させて参加していた。また、商談時に使う生地の見本には、しっかりと色見本もつけているなど、ブラック ジャック カード ゲーム標準の商談への対応ができていた。さらに、商談の場には、権限がある経営層が自ら参加してその場でビジネスを前に進めていた。
- 質問:
- 中国市場開拓において、尾州の強みとは。
- 答え:
- 中国は(気候や肌の色などの面で共通点が多いことから)、紳士服、婦人服ともに日本の生地が最も適しているとみている。中国企業の工場は糸からの一貫生産が多いことから、多様な生地の生産は難しい面がある。他方、尾州は分業していることで、生地に多様性が生まれる。特に、デザインが豊富な婦人服の高級ブランド向けのビジネスは、十分に伸びしろがあると感じる。
- 尾州の技術、強みの源泉は、知識とノウハウであり、それはすなわち「人」だ。しかしながら、高齢化が進む中で、我々は今後、ものづくりの場で「こうした場合にはどうしたら良いか」を聞くことができる相手を失う。中国企業などは最新鋭の機械を導入すれば優れた生地が生産できると安直に考えがちだが、それでは単一なものづくりしかできない。どのように味付けできるのかは、知識とノウハウが左右する。
- こうした無形の知識・ノウハウをいかに受け継いでゆくか、すなわち、いかにデータ化していくかも非常に重要な課題だと認識している。
毛工連理事長として語る尾州のこれから、提案型営業の強化が鍵に
- 質問:
- 今後の課題と、取り組み方針は。
- 答え:
- 中国バイヤー商談会については、毛工連および実行委員会としては、来年度(2025年度)も開催に向けて準備していく方針だ。2024年度の参加企業にアンケートで意向を聞いたところ、9割超が継続を希望している。
- 他方、さらなるブラック ジャック カード ゲーム販路開拓に向けては、向き合わなければならない課題は多い。尾州の企業を含め、日本の生地メーカーは、国内のビジネスでは、取引先との間の受注生産スタイルに慣れ過ぎているため、他の産業のように自ら提案型の商談をするというマインドが根本的に欠けている。日本はイタリアと異なり、これまで大きな国内市場が存在した。
- 今後は、自分たちが売りたいものは何かを考えて提案していく必要がある。ただし、提案型の営業をするためには、見本や各色着分の在庫を持っておく必要が生じるため、相応の資本力が必要という側面もある。まずは、第一ステップとして、自社は何ができていて、何ができていないのか、自身でしっかりと現場を見て考える必要がある。そのうえで、輸出に必要なファンダメンタルズを強化していくべく、尾州として初めて「ブラック ジャック カード ゲーム向け販売の基礎講座」を企画した。2025年1~2月にかけて3回に分けて実施する。講座では、ブラック ジャック カード ゲーム企業との取引を行うために必要な準備や、ブラック ジャック カード ゲーム向け販売の具体的な進め方、テキスタイル分野に特化した形での輸出業務に必要な基礎知識などの内容を予定している。
- ブランディングについては、尾州全体としてプロデューサーを入れながら、さらに強化していく必要がある。同じ原価の生地でも、ブランディングが確立しているイタリア製生地では、尾州産の2~3倍の売値となり、利益率に大きな差が出る。
- 尾州にとって今がラストチャンスだ。やる気がある企業と一緒に、本気で取り組みたい。
- 注:
- 尾州産地バイヤー招聘(しょうへい)実行委員会の構成団体は、日本毛織物等工業組合連合会、愛知県、一宮市、公益財団法人尾州ファッションデザインセンター。
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- 高級地場ブランドの成長を取り込む
- 産地が抱える課題と活路は
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部中国北アジア課 課長代理
小林 伶(こばやし れい) - 2010年、ジェトロ入構。ブラック ジャック カード ゲーム調査部中国北アジア課、企画部企画課事業推進班(北東アジア)、ジェトロ名古屋などを経て2019年6月から現職。