現地調達に向け、上海汽車と長城汽車は
ブラック ジャック 無料 ゲームEVシンポジウム(1)

2024年6月18日

ブラック ジャック 無料 ゲーム投資委員会(BOI)は5月15日、バンコク国際展示場(BITEC)内で電気自動車(EV)のサプライチェーンに関し、シンポジウムを開催した。登壇したのは、ブラック ジャック 無料 ゲームでEVを現地生産する中国系自動車メーカー7社の現地代表だ。

本稿ではシンポジウムの発言などから、(1) EV産業に関するBOI施策や、上海汽車と長城汽車(GWM)の現地事業・調達戦略などについて追う。

ブラック ジャック 無料 ゲーム
中国系自動車メーカー7社の現地代表が登壇(ジェトロ撮影)

2024年のEV新車登録台数を15万台と予測

このシンポジウムで基調講演を担ったのは、ナリット・タードサティーラックBOI長官だ。講演では、(1)ブラック ジャック 無料 ゲームのEV産業に関して設定した目標「30@30」〔2030年までに、自動車生産の30%をバッテリー式EV(BEV)にする〕と、(2)その実現に向けた施策を説明した。

BOIは、(1) xEV(注1)や基幹部品など(EV用バッテリーを含む)を製造する場合はもちろん、(2)バッテリー充電・交換ステーションを設置したりEV関連ソフトウエアを制作したりするため、企業が投資する際にも、恩典を付与している。EV購入を支援する施策もある。財務省や工業省、エネルギー省が、BEVの購入に対する補助金や輸入関税、物品税の減免措置を供与している。その結果、2023年時点でBEV新車登録台数が7万6,000台に達した。2024年には、15万台に拡大すると見込んでいる。

EVに関連してBOIが恩典付与する「基幹部品など」とは、次の17種だ。これらを製造する場合、原則8年間(注2)にわたって法人税(CIT)免除を受けることができる。

  • トラクション・モーター
  • バッテリー・マネジメントシステム(BMS)
  • 空調システム
  • ドライブ・コントロール・ユニット(DCU)
  • DC/DCコンバーター
  • バッテリー
  • EVバス用フロントアクスル/リアアクスル
  • 高電圧ハーネス
  • 電気回路ブレーカー
  • 減速ギア
  • EVチャージング機器
  • バッテリー冷却システム
  • スマート・チャージング・システム
  • 回生ブレーキ
  • オンボード・チャージャー(OBC)
  • ポータブルEVチャージャー
  • インバーター

これらの中でも、バッテリー製造に対しては支援が手厚い。特に、セルから生産する製造事業には、最大15年にわたりCIT免除が認められる。加えて、資本的支出(CAPEX、注3)が発生する場合や、研究開発や高度研修を講じる場合には、補助金給付が認められることがある。なお、モジュール生産やセル・トゥ・パック(CTP)方式の生産については8年間、組み立て生産にも5年間、それぞれCITを免除する。

長官は、今回登壇した中国メーカー以外の投資事例にも言及。日系自動車メーカーも、BEV生産に向けた取り組みを進めているという。

  • トヨタ:ブラック ジャック 無料 ゲーム国内でBEVピックアップトラックを生産する方針を発表。
  • ホンダ:BEVのブラック ジャック 無料 ゲーム国内生産を開始済み。
  • いすゞ:ブラック ジャック 無料 ゲームをBEVピックアップの生産ハブに位置付ける。
  • 三菱自動車:BEV開発の検討を開始。開発は、ブラック ジャック 無料 ゲーム石油公社(PTT)、アルンプラス社と協力して進める(三菱自動車ニュースリリース参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

ナリットBOI長官の基調講演(ジェトロ撮影)

BOIとしてはこうした潮流を踏まえ、ブラック ジャック 無料 ゲームの自動車部品メーカーをEV産業のサプライチェーンに参画させたい。そこでビジネス機会創出を狙い、BYDや哪吒汽車(NETA)、上海汽車との間で、すでに5回にわたって部品調達商談会を開催。長安汽車とも6月5日、初の商談会を実施した。またBOIは、EVメーカーの希望に基づき有望部品サプライヤーをショートリスト化。このリストを随時提供し、マッチング・商談につなげている。これまでに、商談会とショートリスト提供の成果をあわせ、サプライヤー300社の商談を組んだという。

FZ恩典を確保するための要件達成に課題

続いて、中国系自動車メーカー7社のブラック ジャック 無料 ゲーム法人代表が、事業概要と調達戦略を紹介した。

上海汽車-CP(SAIC-CP):スロート・サンスニット副社長

SAIC-CPは、上海汽車とブラック ジャック 無料 ゲーム財閥CPグループの当地合弁会社。上海汽車が70%、CPグループが30%を出資し、2013年に設立された。子会社にMGセールス(ブラック ジャック 無料 ゲーム)がある。

なお上海汽車グループは、「MG」ブランドを擁することで知られる。ブラック ジャック 無料 ゲームで事業展開するのも「MG」だ。ほかにも、(1)インド(MGブランド、100%出資)と(2)インドネシア(五菱ブランド、50.6%出資)に国外子会社を置いている。

SAIC-CPのブラック ジャック 無料 ゲーム工場は、チョンブリー県の工業団地(WHAイースタンシーボード2)に立地する。敷地は70万平方メートルに上り、総投資額300億バーツ(約1,290億円、1バーツ=約4.3円)超。年産能力は10万台だ。2013年以降、合計30モデルを市場投入してきた(2024年中に販売予定のモデルを含む)。うち、内燃機関車(ICE)が17モデル、PHEV2モデル、HEV1モデル、BEV10モデルだ。


SAIC-CPの工場(ジェトロ撮影)

ブラック ジャック 無料 ゲーム政府は、税関通達第97/2566号で主要EV部品9品目を指定。BEVの現地生産を促すため、輸入関税を免除している(2023年6月19日付ビジネス短信参照)。

一方でSAIC-CPが現地調達できているのは、(1)バッテリー、(2) Eコンプレッサー、オンボード・チャージャー(OBC)、(3) DC/DCコンバーター、(4)高圧/低圧ハーネスだ。具体的には、「MG4エレクトリック」には、HASCO-CP社製バッテリー、ブラック ジャック 無料 ゲームサミット・ハーネス製の高圧ハーネス、三菱重工系MCCT社製のEコンプレッサーを使用。また「MG HS PHEV」には、デルタ電子社製DC/DCコンバーターやOBCを使用している。

SAIC-CPはフリーゾーン(FZ)内企業だ。関税免除の恩典を使ってFZからブラック ジャック 無料 ゲーム国内に出荷するためには、40%の現地調達率が必要になる()。加えて、現地調達部品として認定されるための必須工程を経る必要もある。この要件が厳格になってきたことも悩みだ。例えば、トラクション・モーターは2022年末まで、(1)構成部品2つの製造を経る、または(2)ロータ(シャフト部分)やステータ(外観部分)で巻線する、どちらかの条件を満たすだけで十分だった。しかし、2023年からは(1)(2)両方を求められるようになった。また、バッテリーマネジメントシステム(BMS)を開発・検証する段階で要請される試験も従前なら、HIL(Hardware In the Loop)だけだった。しかし現在では、SIL(Software In the Loop)とPIL(Processor In the Loop)も、必須工程に追加された。

SAIC-CPはこうしたことから、部品供給に関心があるサプライヤーに、(1)必須工程を経るための技術投資、(2)現地化を達成するための協働、(3)教育や人材開発、(4)合弁事業の検討、を求めている。

今後3~5年で現地調達率80~90%を目指す

長城汽車(GWM)マニュファクチャリング・ブラック ジャック 無料 ゲームランド:ミシェル・チョン社長

GWMグループは、世界全体で約7万人の従業員を雇用。年間売上高が125億ドルに上る。これまでの電気自動車(xEV)生産は、26万台に及ぶ。

同社が展開するブランドには、ハバル(Haval)、ウェイ(Wey)、タンク(Tank)、オラ(Ora)、ピックアップトラックのPoer(パオ)がある。販売拠点は中国のほか世界170カ国・地域にわたり、1,000カ所を超える。中国以外だけで、累計140万台を販売してきた。

ブラック ジャック 無料 ゲーム工場は、(1)ロシア(トゥーラ州)、(2)タイ(ラヨーン県)、(3)ブラジル(サンパウロ州イラセマポリス工場)に置かれている(GWMグループウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

ブラック ジャック 無料 ゲーム工場3カ所の中でも、ラヨーン工場には際立った特徴があり、中国外で初の新エネルギー車(NEV)専用工場ということだ。当然、カーボンニュートラル(CN)にコミットしている。目下の目標は、2025年にCNを達成すること。さらに最終的に目ざしているのは、そもそも温室効果ガス(GHG)を排出しない純粋なクリーン・エネルギー自動車の実現だ。そのロードマップとして、ICE、HEV、BEV、水素エンジン車の開発を同時並行で進めている。

ICEやHEVでは、パワー効率を改善中。同社独自の9速デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)では7%、9速ハイブリッドDCTで70%効率が上がる可能性がある。ハイブリッド関連技術も高度化している。最大340キロワット(kW)のHEV専用エンジン「ハイブリッド・インテリジェント4WD(Hi4)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を開発し、効率を従来から41%向上させた。

BEVでは、自社開発の産業ネットワークを構築するのが有益だ。その考えに立ち中国で、自社BEV用バッテリーメーカーを設立した〔蜂巣能源科技(SVOLT)〕。SVLOTでは、バッテリーのエネルギー密度を5%向上し、ライフサイクルを10%も拡大した。

昨今では、水素燃料の研究開発にも取り組んでいる。中国では、当該分野のリーディング・カンパニーに位置づけられるようにもなった。また、公共バスなど大型商用車向けに、燃料電池エンジン「GWM-FTXT外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」も開発している。

GWMグループは2020年、米国ゼネラル・モーターズ(GM)から工場を買収。それが現在のラヨーン工場で、当地進出のきっかけになった。現在までの投資額は125億バーツ。雇用を3,000人創出した。今後、226億バーツ追加投資する計画だ。

ラヨーン工場は、GWMグループがASEANで事業展開する上で、研究開発(R&D)と製造、両面のハブになっている。ASEANだけでなく、GWMの世界戦略上も、極めて重要な拠点と言える。

また、GWMグループとしては、NEVの推進役を担いたい。そのためにも、NEV技術をブラック ジャック 無料 ゲーム市場に浸透させ、スマートカーによる新たなユーザー体験をブラック ジャック 無料 ゲームやASEANに導入していく考えだ。

GWMマニュファクチャリング・ブラック ジャック 無料 ゲームランドでは、「ハバル」「タンク」「オラ」の3ブランドを扱う。これまでに、1万8,000台を生産した。2024年1月には、「オラ・グッドキャット」の現地生産を開始。これは、GWMグループとして初のブラック ジャック 無料 ゲーム製BEVモデルになる。2021年から3年間で、9モデルをブラック ジャック 無料 ゲーム市場に投入した。次は、ピックアップモデルを投入する予定だ。


バンコク中心部のGWM販売店(ジェトロ撮影)

GWMグループは、ブラック ジャック 無料 ゲームの自動車産業界と協力しともに成長していく。そのため、基幹部品をブラック ジャック 無料 ゲーム市場で生産することが重要と考えている。そのため2023年11月には、SVOLTのブラック ジャック 無料 ゲーム子会社を設立した。同社は、東南アジア初のバッテリー組み立て事業を担う。こうした取り組みが、当地のEV産業構造を変えていく可能性がある。

GWMマニュファクチャリング・ブラック ジャック 無料 ゲームランドの現地調達率向上も、もちろん大切な課題になる。同時に、重視するのは、サプライチェーンの強靭(きょうじん)性とトレーサビリティーだ。現地調達率は現時点で45%。ただし、今後3~5年かけて80~90%に拡大させていく予定だ。現地調達率を高めることで、受注からデリバリーに至るリードブラック ジャック 無料 ゲームムの予見性を高めたい。そのため、現地パートナーの発掘には強い関心がある。現在はサプライヤー候補を見定めつつ、取引拡大しているところだ。なお、現時点で現地調達に関心の高い分野としては、Eコンプレッサー、トランスミッション、シャーシ、アーキテクチャー、電装品、BMSなどがある。

続く第2回では、BYD、NETA、長安汽車(Changan)の戦略を伝える。


注1:
ここで言う「xEV」は、(1) BEV、(2)プラグインハイブリッド車(PHEV)、(3)ハイブリッド車(HEV)、(4)燃料電池車(FCEV)、(5)電気バス・トラック、を指す。
注2:
CIT免除が適用されるのは、対象全品目を通じて基本的に8年間。ただし、条件などに応じて期間が増減する場合がある。
注3:
企業を成長・維持するため、長期的に講じられる投資。新型車の開発や新工場を建設する場合などが一例。
執筆者紹介
ジェトロ・バンコク事務所
北見 創(きたみ そう)
2009年、ジェトロ入構。ブラック ジャック 無料 ゲーム調査部アジア大洋州課、大阪本部、ジェトロ・カラチ事務所、アジア大洋州課リサーチ・マネージャーを経て、2020年11月からジェトロ・バンコク事務所で広域調査員(アジア)として勤務。