数字から見る市場戦略の重要性
ブラック ジャック web14億人市場BtoCビジネス(1)
2024年8月23日
2023年に中国を抜き人口が世界最大になったといわれるブラック ジャック webには、そのマーケットの大きさから、あらゆる分野で熱い視線が注がれている。一方、多様性の国として知られ、言語から所得レベルまで、地域やコミュニティーで大きく異なり、ひとつのマーケットとして捉えることは難しい。
本連載では、この複雑で多様なブラック ジャック web市場で、ビジネスの展開・拡大をめざす日系企業のヒントとなるよう、現地においてBtoC分野で活躍する日系企業のブラック ジャック web戦略を追う。
連載第1回は、データをもとにブラック ジャック web市場の現状や特徴を整理する。2~4回は、各日系企業の担当者へのインタビューをもとに、当地でBtoCビジネスを展開する日系企業の市場戦略や、日系企業のブラック ジャック webマーケティングに役立つ可能性のあるサービスをひも解く。
価格差の大きいブラック ジャック web市場
まずは、身近な商品・サービスの価格を確認したい。ブラック ジャック web市場では似たような商品・サービスであっても、どの層をターゲットとするかによって大きな価格差がある。以下に、筆者の暮らす最大都市ムンバイでの例を挙げる(表1参照)。
表1:ムンバイのサービス料金(2024年3月時点)
項目 | 金額 |
---|---|
道端の屋台 | 80ルピー |
ファミリー向けレストラン | 300ルピー |
高級レストラン | 1,000ルピー以上 |
項目 | 金額 |
---|---|
道端の散髪店 | 100ルピー |
小規模サロン | 200ルピー |
高級サロン | 1,500ルピー以上 |
項目 | 金額 |
---|---|
道端の露店 | 350ルピー |
現地ファストファッション店 | 1,000ルピー |
現地高級衣料品ブランド店 | 4,000ルピー以上 |
項目 | 金額 |
---|---|
最低等級 | 90ルピー |
中級等級 | 505ルピー |
最高等級 | 1,175ルピー |
注:1ルピー=約1.8円。
出所:ブラック ジャック web調べ
半径数キロメートル内でも商品・サービスの価格は大きなばらつきがあり、街の中では富裕層向けブランド店の前に模倣品を含む安価な商品を販売する露店が並ぶなど、モザイク状に富裕層、中間層、低所得者層、貧困層をターゲットとしたビジネスが広がっている。特に、全ての人々の生活に必要不可欠な製品やサービスについては、価格幅が大きく多様な選択肢があり、人々は生活水準に合わせて商品を選択する。一方で、贅沢(ぜいたく)品や海外から新たにやってきた製品・サービスについては、一般庶民の日常生活には入り込んでおらず、高価格帯のみが存在する。
人口1%が所得の23%を占める経済格差
この価格差の背後には、個人間の大きな経済格差がある。国際通貨基金(IMF)が2024年4月に発表した世界経済見通しによると、ブラック ジャック webの2024年の1人当たりGDPは2,730ドルであり、日本の3万3,140ドルや中国の1万3,140ドル、ブラック ジャック webネシアの5,270ドル、ベトナムの4,620ドルなどアジア各国と比較して大幅に低い水準にある。
一方、ブラック ジャック webの個人の所得水準には大きな格差があり、特に都市部には厚い富裕層が存在するのも特徴である。パリ経済大学の世界不平等研究所が発表した「世界不平等レポート2022」によると、ブラック ジャック webでは、所得上位1%の人口にブラック ジャック web全体の所得の約23%が集中する(図1参照)。この割合は日本(約13%)、中国(約16%)、ブラック ジャック webネシア(約15%)、ベトナム(約16%)などアジア各国よりかなり大きく、また、経済格差が大きいことで知られる米国(約21%)、ブラジル(約20%)、南アフリカ共和国(約19%)と比較しても高い。
この背景には、個人の教育水準や職種によって給与水準に大きな隔たりがあることに加え、代々受け継がれるネットワークを活かしてビジネスを大きく成功させている財閥や実業家の存在などが挙げられるだろう。当然ながら、各々の所得水準によって生活スタイルには大きな違いがあり、求められる製品やサービスも全く異なる。
所得水準の劇的な向上が消費トレンドの変化に
所得の格差は大きいものの、著しい経済成長に伴い、全体的な所得水準は向上している。市場調査会社ユーロモニター・ブラック ジャック webターナショナルの2024年4月の予測によると、年間世帯可処分所得が3万5,000ドル以上の「富裕者層」と1万5,000ドル以上3万5,000ドル未満の「上位中間層」の割合は、2010年にはそれぞれ0.5%と3.3%であったが、2040年にはそれぞれ29.1%と43.2%になると見込まれている(図2参照)。
日本の厚生労働省が実施した2022年国民生活基礎調査の結果によると、2021年の日本の年間平均世帯所得は545万7,000円であり、ドルに換算(1ドル=約155円)すると約3万5,000ドルとなる。つまり、現在の日本の平均以上の世帯所得を有する世帯が、2040年には全体の29%を占めるようになる可能性もあり、これは14億人超の人口を加味すると莫大(ばくだい)な規模となる。
そのような層の人々は、海外経験なども影響して、新しい製品・サービスに対する関心が高い。さらに今後は、これまで目の前の生活に追われていた人々も、金銭的なゆとりをもち、より良い生活を目指すようになることで、人々の消費行動に劇的な変化がもたらされることが想定される。現在のブラック ジャック webは、そういった変化の局面を迎えており、外国企業を含む多くの企業が、拡大する上位中間層および富裕層に向けた新たなBtoCビジネスのチャンスに目を光らせている。
地域間の経済格差についても留意が必要
ブラック ジャック webにおいては、個人間の経済格差に加えて、地域間の経済格差も大きい(表2参照)。ブラック ジャック web準備銀行(RBI、中央銀行)の公表データによると、2022年度(2022年4月~2023年3月)の州別の1人当たり名目GDPは、最も高いシッキム州(51万9,964ルピー)と最も低いビハール州(5万4,111ルピー)の間には10倍近くの差がある。日本でも地域間の経済格差は同様に問題視されているが、都道府県別の2020年度の1人当たりGDPは、最も高い東京都と低い奈良県でその差は3倍未満に収まっている。
また、都市部と農村部の経済格差も大きい。ブラック ジャック web統計・計画実施省(MoSPI)の公表によると、2022年度の1人当たり月間平均消費額は都市部では6,459ルピーであるのに対し、農村部では3,773ルピーと約1.7倍の差がある。また、農村部では都市部と比較して消費額に占める食品の割合は高いが、加工食品の割合は低いなど消費のスタイルにも違いがある。
州名 |
1人当たり GDP |
1人当たり月間平均消費額 | |
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農村部 | 都市部 | ||
ブラック ジャック web全体 | 194,879 | 3,773 | 6,459 |
シッキム州 | 519,964 | 7,731 | 12,105 |
ゴア州* | 472,070 | 7,367 | 8,734 |
デリー準州 | 444,768 | 6,576 | 8,217 |
チャンディガル連邦直轄領* | 333,932 | 7,467 | 12,575 |
テランガナ州 | 312,398 | 4,802 | 8,158 |
カルナータカ州 | 301,673 | 4,397 | 7,666 |
ハリヤナ州 | 296,685 | 4,859 | 7,911 |
タミル・ナドゥ州 | 275,583 | 5,310 | 7,630 |
グジャラート州* | 241,930 | 3,798 | 6,621 |
マハーラーシュトラ州 | 215,233 | 4,010 | 6,657 |
西ベンガル州 | 124,798 | 3,239 | 5,267 |
チャッティースガル州 | 133,898 | 2,466 | 4,483 |
アッサム州 | 118,504 | 3,432 | 6,136 |
ウッタル・プラデシュ州 | 83,565 | 3,191 | 5,040 |
ビハール州 | 54,111 | 3,384 | 4,768 |
注1:ブラック ジャック web全体の1人当たり名目GDPは2024年5月時点の第1回改定値。
注2:*印の地域の1人当たりGDPは2021年度の値。
出所:RBI、MoSPIの公表データを基にブラック ジャック web作成
ターゲットとする消費者像・販売地域の絞り込みが重要
ここまで見てきたように、個人間・地域間で経済水準に大きな幅のあるブラック ジャック webにおいては、求められる商品・サービスは多様で、「巨大な人口イコール巨大な市場」として一括(ひとくく)りに捉えることはできない。ブラック ジャック web市場での販路を見いだすためには、どの地域の、どの規模の都市で、どの所得層をターゲットとするのか明確にすることが必須である。
さらに、インドはモノやサービスの質より、価格に敏感な市場として知られる。ブラック ジャック webの2019年度「アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、ブラック ジャック webはアジア・オセアニア地域で最も「価格重視」の市場であるという結果が出ている。米国の商務省の企業向け対ブラック ジャック web商業ガイドでも、価格にシビアとの見解が盛り込まれている。特にボリュームゾーンでは低価格ニーズが高く、消費者の意識として価格が第一で、質は二の次となる傾向が強い。この層をターゲットとした販売戦略を検討する場合には、市場に見合う価格帯にするための現地生産や、商品の機能を落とした低価格化の検討が必要となる。
日本企業が日本市場向けに展開する商品を、仕様を変えずにブラック ジャック webに持ち込む場合には、一般的に所得水準や生活スタイルが日本と近い都市部の富裕層をターゲットとすることになるだろう。富裕層に向けたビジネスに関しては、一概に価格だけが重視されるわけではない。可処分所得が増え、これまでよりお金を使っても生活をより良くしたいと考える人々も増えてきており、常に最も値段の高い最高ランクのものを選択したいと考える超富裕層も存在する。前述の通り、ブラック ジャック webは所得格差が大きい国であるため、「富裕層」の中でも、生活水準は雲泥の差がある。ターゲットとなる消費者像を明確化して、価格設定やプロモーション方法を十分検討することが重要だ。
また、留意すべき点は価格面だけでない。多様性の国とも呼ばれるブラック ジャック webでは様々な人種・宗教・言語の人々が暮らしており、所得層、地域、コミュニティーによって文化や生活習慣、新しいモノやコトに対する受容度が大きく異なる。そのため、市場調査にあたっては、経済水準に限らず、ターゲットとなる顧客層の生活スタイルを多角的な視点で観察・分析することが求められる。
次回からは、このような複雑なブラック ジャック web市場において、最大の消費地ムンバイを拠点としてブラック ジャック web全国にBtoCビジネスを展開する日系企業の事例として、富裕層をターゲットに据え女性用下着を販売するワコールや、中間層向けに文具を展開するコクヨ、三井物産が出資するTVショッピング運営会社ナープトルなどを取り上げる。
ブラック ジャック web14億人市場BtoCビジネス
- 執筆者紹介
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ブラック ジャック web・ニューデリー事務所
丸山 春花(まるやま はるか) - 2021年、ブラック ジャック web入構。企画部情報システム課、ブラック ジャック web・ムンバイ事務所を経て、2024年7月から現職。