ブラック ジャック 必勝 法
2030年の内燃車販売禁止に向け、電動化が加速
2021年5月13日
英国の2020年の自動車生産・販売台数は、新型コロナウイルスの影響から激減した。一方で、コロナ禍でも販売台数の代替燃料車のシェアは伸び、2021年に入り自動車メーカーでもEV(電動)化の動きが加速している。
販売台数は1992年以来の低水準も電動車が大きく伸長
2020年の新車登録台数は、前年比29.4%減の163万1,064台となり、2016年をピークに4年連続の減少で、1992年以来(28年ぶり)の低水準の登録台数になった。英国自動車製造者販売者協会(SMMT)は、新型コロナウイルス感染症流行に伴う販売代理店の一時的な閉鎖などの規制、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う不確実性などを減少要因として挙げた。SMMTは、自動車業界の総売上高に与える損失が約204億ポンド(約3兆600億円、1ポンド=約150円)になる、と推計した。
2020年通年で燃料種別にみると、ディーゼル車が前年比55.0%減の26万1,772台と大幅減になったほか、前年はわずかに伸びていたガソリン車も39.0%減となった(表1参照)。そのシェアは合計で7割を占めるものの、代替燃料車[バッテリー車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)](注)はシェアを伸ばし、合計で17.5%と前年の7.4%から大きく伸びた。特に、BEVは前年の2.9倍の10万8,205台になった。
燃料種別 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | ||||
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台数 | シェア | 台数 | シェア | 台数 | シェア |
前年比 (台数) |
|
ガソリン車 | 1,466,024 | 61.9% | 1,482,409 | 64.1% | 903,961 | 55.4% | △ 39.0 |
ディーゼル車 | 746,332 | 31.5% | 581,774 | 25.2% | 261,772 | 16.0% | △ 55.0 |
マイルドハイブリッド車(MHEV) (注1)〈ガソリン〉 |
9,688 | 0.4% | 41,955 | 1.8% | 119,179 | 7.3% | 184.1 |
ハイブリッド車(HEV)(注2) | 83,528 | 3.5% | 98,237 | 4.3% | 110,117 | 6.8% | 12.1 |
バッテリー車(BEV) | 15,510 | 0.7% | 37,850 | 1.6% | 108,205 | 6.6% | 185.9 |
プラグインハイブリッド車(PHEV) | 42,232 | 1.8% | 34,984 | 1.5% | 66,877 | 4.1% | 91.2 |
マイルドハイブリッド車(MHEV) (注1)〈ディーゼル〉 |
3,833 | 0.2% | 33,931 | 1.5% | 60,953 | 3.7% | 79.6 |
合計 | 2,367,147 | 100.0% | 2,311,140 | 100.0% | 1,631,064 | 100.0% | △ 29.4 |
注1:電力単体での駆動はできないが、電力によるアシストにより燃費やCO2排出量を効率化した自動車。
注2:PHEVよりも電力で駆動する距離が短く、回生ブレーキにより発生する電気を使用する自動車。
出所:英国自動車製造者販売者協会(SMMT)
ブラック ジャック 必勝 法月ごとにみると、新型コロナウイルス感染症流行に伴う販売代理店の一時的な閉鎖などの規制が、新車登録台数に大きく影響を与えたことがわかる。なかでも、2020年3月23日から始まった英国全土のロックダウンの影響が一番大きく、新車登録台数は、4月に前年同月比97.3%減、5月には89.0%減となった(図1参照)。ロックダウンが緩和された7月にはその反動から前年同月比11.3%増となったが、10月までは前年同月を少し下回る程度で推移した。その後、2020年11月5日から始まったイングランド全土での2度目のロックダウンの影響で11月は前年同月比27.4%減となった。なお、2021年1月5日から施行された3度目のロックダウンの影響を受け、2021年1、2月は前年同月比約3~4割減となった。3月には前年同月比11.5%増の28万3,964台と2020年7月以来のプラスとなったものの、2010~2019年の3月の新車登録台数の平均45万189台と比べ、まだ回復していない。一方で、新車登録台数に占める代替燃料車のシェアは、2020年4、5月を除き新型コロナウイルスの影響は少なく、2020年は前年同月比で順調に伸びている。また、2021年以降は、2020年12月と比べやや落ち込んでいるが、前年同月比で、1月は9.4ポイント増、2、3月は8.2ポイント増となっている。SMMTは2021年の登録台数は186万台程度、うちBEVのシェアは8.9%となることを予想している。
SMMTは2020年を振り返り、2021年1月1日から英国とEUの通商・協力協定が発効したことで、業界は最悪の「合意なし」のシナリオを回避し、貿易条件に関し、より確実に将来の計画を立てることができるようになったとしている。2020年の国内新車登録台数の約7割が欧州から輸入されたものだったことを指摘し、EUとの関税ゼロ、割当なしの貿易の継続は英国の新車市場にとって不可欠、と続けた。
ブラック ジャック 必勝 法車種別にみると、フォードやフォルクスワーゲン(VW)などに続き、日産の「キャシュカイ」が上位となった(表2参照)。なお、日本車の新車登録台数は前年比26.9%減の25万7,356台だったが、シェアは前年の15.2%から0.6ポイント増加して15.8%になった。
順位 | 車種名 | 台数 |
---|---|---|
1 | フォード「フィエスタ」 | 49,174 |
2 | ボクソール「コルサ」 | 46,439 |
3 | VW「ゴルフ」 | 43,109 |
4 | フォード「フォーカス」 | 39,372 |
5 | メルセデス・ベンツ「Aクラス」 | 37,608 |
6 | 日産「キャシュカイ」 | 33,972 |
7 | ミニ | 31,233 |
8 | VW「ポロ」 | 26,965 |
9 | フォード「プーマ」 | 26,294 |
10 | ボルボ「XC40」 | 25,023 |
出所:英国自動車製造者販売者協会(SMMT)
代替燃料車のシェアが伸びている一方で、英国政府は3月18日、EV、PHEVの新車購入補助金をこれまでの最大3,000ポンドから最大2,500ポンドへ減額することを発表、同日から適用された。対象となる車両の上限価格も5万ポンドから3万5,000ポンドに引き下げられた。政府は、これにより補助金の資金源を長続きさせ、より多くの購入者が利用できるようになるとしている。また、EVを補助金なしで購入可能な消費者が通常購入する高価格帯の車両には、補助金を適用させない考えを示した。政府によると、価格が3万5,000ポンド未満のEVのモデル数は2019年から1.5倍となっており、現在、市場にあるモデルの半分以上が引き続き補助金対象となる。
これに対し、SMMTのマイク・ホーズ会長は「新たなバッテリー技術は従来のエンジンよりも高価であり、EV購入者にとってインセンティブは不可欠。補助金を削減することで、英国は補助金を強化している国々に後れを取り、消費者および政府目標の達成のため、ゼロエミッション車への移行に取り組んでいる業界に誤ったメッセージを送ることになる」と批判した。
生産台数は1984年以来の100万台割れ
2020年の国内自動車生産台数は前年比29.3%減の92万928台となり、1984年以来の低水準になった(表3参照)。総生産台数の81.3%を占める輸出向け生産は29.1%減、国内向け生産は30.4%減となっている。
項目 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
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台数 | 台数 | 台数 | 前年比 | |
国内向け | 281,832 | 247,138 | 171,890 | △ 30.4 |
輸出向け | 1,237,608 | 1,055,997 | 749,038 | △ 29.1 |
合計 | 1,519,440 | 1,303,135 | 920,928 | △ 29.3 |
出所:英国自動車製造者販売者協会(SMMT)
SMMTは、2020年の生産台数の大きな減少は新型コロナウイルスの世界的流行が主な原因としており、ロックダウンによる一時的な生産停止と生産現場での社会的距離確保により、生産量が抑制されたことが影響し、4月は前年同月比99.7%減、5月は95.4%減と大幅な落ち込みになった(図2参照)。加えて、主要輸出市場の需要落ち込みなどを大幅減の要因に挙げた。
一方で、2020年も輸出が英国の自動車製造を牽引し、国内で生産した自動車の8割以上が国外に輸出されたとした。英国の最大の輸出先はEUで、輸出台数は前年比30.8%減の40万460台、シェア53.5%となった。EU以外の主要輸出国では、米国と日本、オーストラリアへの輸出は全て減少し、それぞれ前年比33.7%減、21.6%減、21.8%減となった。一方、新型コロナウイルスの自動車市場への影響が比較的限定的だった中国と韓国、台湾への輸出は、それぞれ2.3%増、3.6%増、16.7%増となった。
代替燃料車の生産台数は17万2,857台で、2019年の19万2,304台からは減少したものの、全自動車生産台数に対する割合が、2020年は18.8%となり、2019年の14.8%から4ポイント増加した。なお、2020年の代替燃料車の生産台数のうち79.6%が輸出向けとなっている。
メーカー別の生産台数では、日産が、前年首位だったインドのタタ・モータース傘下のジャガー・ランドローバー(JLR)を抜いて1位になり、ミニ(BMW)が3位、トヨタが4位、ホンダが5位だった(表4参照)。
メーカー | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
---|---|---|---|---|
台数 | 台数 | 台数 | 前年比 | |
日産 | 442,254 | 346,535 | 245,649 | △ 29.1 |
ジャガー・ランドローバー | 449,304 | 385,197 | 243,908 | △ 36.7 |
ミニ(BMW) | 234,183 | 221,928 | 175,736 | △ 20.8 |
トヨタ | 129,070 | 148,106 | 116,261 | △ 21.5 |
ホンダ | 160,676 | 108,876 | 69,366 | △ 36.3 |
ボクソール | 77,481 | 61,737 | 32,234 | △ 47.8 |
その他 | 26,472 | 30,756 | 37,774 | 22.8 |
合計 | 1,519,440 | 1,303,135 | 920,928 | △ 29.3 |
出所:英国自動車製造者販売者協会(SMMT)
なお、SMMTによると、最新の英国自動車生産台数の見通しでは、2021年は100万台に回復することが予想されているが、国内外の新型コロナウイルスの影響に大きく依存するとしている。
EV化の動きが加速
今後も、EV化の動きは続きそうだ。政府は2020年11月、コロナ禍からの経済の立て直し、雇用創出の中心的な役割を担うと同時に、2030年までの気候変動対策を強化する政策として「グリーン産業革命」の具体的な戦略として10項目の計画(以下、同政策)を発表した()。同政策の中で、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止し、HEV、PHEVの販売は2035年まで認めるとした。また、2021年中に英国のEU離脱後の、自動車からの排ガス規制に関する政策提案書を公表の予定としている。
これを受けて、2021年に入り、各自動車メーカーのEV化の動きが見られる。インドのタタ・モータース傘下の英国自動車メーカー大手ジャガー・ランドローバー(JLR)は2月15日、「ジャガー」の全世界向け全ブランドを2025年からEVにするとし、2030年までに「ジャガー」に加えて、「ランドローバー」の全ての車種でEVモデルを提供する計画を明らかにした。さらに、2039年までにサプライチェーンや生産も含めて温室効果ガス(GHG)の純排出ゼロの企業となる目標も掲げている。
また、ドイツのBMWは2021年3月17日、傘下の小型車ブランド「ミニ」をBMWグループで初の完全EVブランドとすることを発表。2025年に最後のエンジン搭載モデルを販売し、2030年代初めまでに完全EV化する。さらに、同社はグループ全体で2030年までに、世界の販売の少なくとも5割をEVとし、今後約10年間で、累計約1,000万台のEVを販売するとしている。
一方、ホンダは2019年2月、EV化が加速する中、欧州でのEVの生産は競争力などの観点で難しいため、イングランド南部スウィンドンの工場での生産を2021年7月末に終了する(2019年2月20日付ビジネス短信参照)。同社は2021年3月26日、同工場の売却契約を締結したことを発表、欧州最大の工業・物流施設開発業者であるパナトニに売却される。
英国内のEVサプライチェーン構築の一環として、EV向け超大型バッテリー工場「ギガファクトリー」を英国に建設する計画も出ている。政府は同政策の中で、ギガファクトリーを含めた英国自動車業界のサプライチェーンの電動化への対応などに今後4年間で約5億ポンドを支出するとしている。このような中、英国バッテリーメーカーのブリティッシュボルトは2020年12月11日、英国で初のギガファクトリーを、イングランド北東部のノーサンバーランド州ブライスに建設することを発表した(2021年2月25日付ビジネス短信参照)。総額26億ポンドの投資で、2023年末までに生産開始を目指し、2027年までに最大3,000人を雇用、年間30万以上のリチウムイオンバッテリーを生産する予定。
また、日産は1月22日、英EU通商・協力協定の合意を踏まえ、サンダーランドでバッテリー生産を強化することを明らかにした。アシュワニ・グプタ最高執行責任者は「EUへの輸出時に、(品目別原産地規則を満たし)英国で生産される自動車の(EUでの輸入)関税を回避するために、サンダーランドで62キロワット時(kWh)のバッテリーを製造することを決定した」とBBCへの取材に答えている。従来から40kwhのバッテリーは国内でも生産していたが、国外から調達していた高容量のバッテリーも今回、国内調達に切り替える方針だ。
ギガファクトリーの建設については3月25日、労働党のエド・ミリバンド影のビジネス・エネルギー・産業戦略相は、労働党の「グリーン経済の復興を通した雇用対策への投資案」の演説の中で、「2040年までに7つのギガファクトリーが必要であるのに対し、現在計画されているのは1カ所(ブリティッシュボルト)のみである」と、ギガファクトリーの建設が大幅に遅れていることを指摘。「政府に対し、議会で新たなギガファクトリー3カ所の開発開始のために、現在、利用可能な4億ポンドの3倍以上となる15億ポンドを投資することを求める」としており、SMMTのホーズ会長は同日オンラインで開催されたSMMTのイベントの中で、これを支持する考えを示した。
2030年までに充電インフラの整備が急務
EV普及促進に向け、重要となるのが充電インフラの整備だ。政府は同政策の中で、家庭、職場、街路、高速道路の充電設備の普及に向け13億ポンドを投資するとしており、充電設備の普及を加速させている。政府によると、公共のEV充電設備設置台数は、2015年以降急激に伸びており、2020年第2四半期は新型コロナウイルスの影響から伸びが鈍化したものの、2020年末時点で国内に2万775台あり、このうち3,880台は急速充電設備となっている(図3参照)。充電装置の中には、複数の充電コネクタが設置されているものもあり、国内のコネクタ数は4万個超、うち急速充電コネクタは1万個を超えている(2021年5月11日現在)。
SMMTは、現在の予測では大多数のドライバーが可能であれば自宅での充電を選択するとしている。また、十分な範囲をカバーし、走行距離に対する不安を解消するためには、2030年までに約230万個の公共充電コネクタを設置する必要がある、と推定している。また、設置ペースについても現在の1日あたり42個を、2030年までの10年間で同700個に加速する必要があるとした。
政府は、充電設備導入促進を目的とした、地方自治体向けの「居住者用路上充電設備スキーム (ORCS)」、企業など団体向けの「職場用充電設備スキーム(WCS)」、住宅入居者など向けの「家庭用充電設備スキーム(EVHS)」を2021年度も継続することを発表している。(2021年2月25日付ビジネス短信参照)。
- 注:
- 各電動車の定義は次のとおり。BEV:電池だけで駆動する自動車。PHEV:20~30マイル(約32~48キロ、1マイル=約1.6キロ)程度を電力で駆動し、それ以上の距離をガソリンやディーゼルで駆動する自動車。電力の補給にプラグを用いる。HEV:PHEVよりも電力で駆動する距離が短く、回生ブレーキにより発生する電気を使用する自動車。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ロンドン事務所
宮口 祐貴(みやぐち ゆうき) - 2012年東北電力入社。2019年7月からジェトロに出向し、ブラック ジャック 必勝 法調査部欧州ロシアCIS課勤務を経て2020年8月から現職。