ブラックジャック勝ち方
過度な距離感は逆効果も
2025年3月31日
日系企業がマレーシアで円滑な事業展開を行う上では、労務問題への目配りが欠かせない。日本では全ての企業が対策を求められるブラックジャック勝ち方について、ここマレーシアでも、法制化の動きが徐々に進みつつある。2023年3月にはセクシャルブラックジャック勝ち方防止法が施行された。マレーシアは多民族国家だけに、同国独自のブラックジャック勝ち方問題もある。以下、マレーシアで問題となるブラックジャック勝ち方、(1)セクシャルブラックジャック勝ち方、(2)パワーブラックジャック勝ち方、(3)人種的または宗教的ブラックジャック勝ち方について、概観する。
新法や既存の法律の組み合わせで抑止へ
マレーシアでは、1955年雇用法(1.46MB)に、セクシャルブラックジャック勝ち方に関する苦情に対する雇用者の責任を明記している(第81A条から第81H条)。2022年の雇用法改正では、雇用主は職場でのセクシャルブラックジャック勝ち方に対する認識を高めるため、適切な通告を職場に掲示することを義務付けた。また、被害者はマレーシア刑法に基づき、通報が可能で、例えば、人の品位を侮辱する言葉を発した、またはジェスチャーを行った加害者は最長5年の懲役、または罰金、またはその両方が科せられる場合がある(第509条)。
連邦裁判所は2016年に初の判例で、ブラックジャック勝ち方を「他者をターゲットにした、執拗(しつよう)で故意的、不合理かつ抑圧的な継続的行為」と定義した。2022年にはセクシャルブラックジャック勝ち方に特化した「2022年セクシャルブラックジャック勝ち方防止法(294KB)」が制定され、各種事項が規定された。例えば、職場外のセクシャルブラックジャック勝ち方を含む全てのセクシャルブラックジャック勝ち方の苦情を取り扱うことができる法廷の設置や、同ブラックジャック勝ち方の適用対象の拡大、法廷での被告人への命令権限などが明示された(参考参照)。
参考:2022年セクシャルブラックジャック勝ち方防止法の概要
職場外のセクシュアルブラックジャック勝ち方を含む全てのセクシャルブラックジャック勝ち方の苦情を取り扱うことができるセクシャルブラックジャック勝ち方防止法廷を設置
「セクシャルブラックジャック勝ち方」に雇用関係外で発生したセクシャルブラックジャック勝ち方をも含むよう定義
法廷には、次の命令を「被告人」に対して出す権限がある。
- 謝罪を行うこと
- 公衆でセクシャルブラックジャック勝ち方が発生した場合、公の場で謝罪を行うこと
- 最大25万リンギ(約850万円、1リンギ=約34円)の賠償金を支払うこと
- セクシャルブラックジャック勝ち方に関するトレーニングなどプログラムへの参加
出所:2022年セクシャルブラックジャック勝ち方防止法を基にジェトロ作成
マレーシアでは、パワーブラックジャック勝ち方関連の事例も裁判で争われている。例えば、2019年には同僚のパソコンに飲み物をこぼしたり、職場で同僚の重要な書類を取って隠したりする行為が職場でのいじめと認定されたケースがある。
セクシャルブラックジャック勝ち方と違い、このような権限の乱用、または職場いじめとも呼ばれるパワーブラックジャック勝ち方に直接対応する日本の「パワハラ防止法」のような法律は存在しない。しかし、上司による部下への威圧や、不当な扱いを行う権限の乱用に関連するパワーブラックジャック勝ち方には、既存の法律や規則を組み合わせ、間接的な保護を与えるかたちで対処されている。例えば、具体的な法規として、「1994年労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act 1994:OSHA)」が挙げられる。OSHA第15条は、雇用者に対し、可能な限りの従業員の安全、健康、福祉の確保を義務付けているため、パワーブラックジャック勝ち方にはこちらの規程を援用し、従業員は状況に応じて労働安全衛生省(DOSH)に苦情を申し立てることができる。また、ブラックジャック勝ち方が脅迫、威圧、身体的暴力を伴う場合、「マレーシア刑法」第503条が適用される(表1参照)。
類型 | 関連法律 | 内容 | 罰則・救済措置 |
---|---|---|---|
セクシャルブラックジャック勝ち方 | 1955年雇用法(第81A条~第81H条) | 苦情に対する雇用者責任を明記。 | 有罪判決を受けた場合、5万リンギ以下の罰金。 |
マレーシア刑法(第354条) | 品位を傷つける意図での暴行や刑法上の暴力を行使することは刑事犯罪と規定。 | 最長10年の懲役、または罰金、むち打ち、またはこれらのいずれか2つの処罰の可能性。 | |
マレーシア刑法(第509条) | 人の品位を侮辱する言葉やジェスチャーは刑事犯罪と規定。 | 最長5年の懲役、または罰金、またはその両方が科される可能性。 | |
セクシャルブラックジャック勝ち方防止法 | 職場外を含む全てのセクシュアルブラックジャック勝ち方の苦情を取り扱うことができる法廷を設置。 | 法廷は、謝罪命令、罰金支払い、トレーニングプログラムへの参加を命令可能。 | |
パワーブラックジャック勝ち方 | 1994年労働安全衛生法(第15条) | 雇用者に、可能な限り、従業員の安全、健康、福祉を確保する義務を課している。 | 従業員は、雇用者が合理的措置を取らない場合は、労働安全衛生省に苦情を申し立てることが可能。 |
1967年労働関係法 | ブラックジャック勝ち方が原因で、辞職・解雇された場合、従業員は不当解雇の請求が可能。 | 従業員はブラックジャック勝ち方が原因の不当解雇と考えた場合、産業裁判所に苦情の申し立てが可能。 | |
マレーシア刑法(第503条) | ブラックジャック勝ち方が脅迫、威圧、または身体的暴力を伴う場合は、本規定を適用。 | 脅迫が死亡、火災による財産の破壊、死刑または懲役に該当する犯罪を告発することを目的とする場合は最長7年の懲役、罰金、またはその両方が科される。 |
出所:Josephine, L K Chow & Co. 弁護士事務所からの報告に基づく
特定民族への侮辱も刑罰対象に
多民族国家のマレーシアでは日本と違った類型のブラックジャック勝ち方がある。それが人種的または宗教的ブラックジャック勝ち方だ。これは人種、民族、または宗教に基づいて、誰かをおとしめたり、屈辱を与えたり、威圧したりする、いかなる行動をも指す。マレーシアではマレー系を中心に、中華系、インド系など多様な民族や宗教グループが共存している。そのため、このようなブラックジャック勝ち方はさまざまな形態で出現する。文化や宗教に関する会話は、敬意をもち、礼儀正しく実施することが重要となる。
これらブラックジャック勝ち方は、(1)言葉によるもの、(2)非言語的なもの、(3)身体的なもの、(4)差別の4類型に分けられる(表2参照)。例えば、(4)差別に関する判例として、インド系社員が社内で繰り返し「マレー人は全員愚かだ」と発言した結果、会社から解雇されたのは不当だと提訴した事案について、これらの言葉が1948年の扇動法の「扇動的傾向」の定義に該当し、被告の解雇は正当と裁判所が判じた2020年の例がある。マレー系は、政府の優遇政策(ブミプトラ政策)のためか、加害者となることはまれで、中華系、インド系からのブラックジャック勝ち方が目立つとされる。
項目 | 内容 |
---|---|
言葉 | 人種、肌の色、または宗教についての差別的な侮辱、軽蔑的な発言、攻撃的なジョークや侮辱。 |
非言語 | 攻撃的なジェスチャー、憎悪を示すシンボル(例:ハーケンクロイツ)、または人種や宗教に関する不適切な画像の表示。 |
身体的 | 人種や宗教的信念に基づく暴力、いじめ、または威圧的行動。 |
差別 | 人種や宗教による不平等な扱い、排除、または機会の拒否。 |
出所:Josephine, L K Chow & Co. 弁護士事務所の報告に基づく
セクシャルブラックジャック勝ち方、パワーブラックジャック勝ち方、人種的・宗教的ブラックジャック勝ち方以外にも、サイバーブラックジャック勝ち方やサイバーストーキングを規制する体制も、政府は整備している。前者は例えば、マルチメディア法1998年(CMA法)第211条で、不適切、不潔、虚偽、脅迫的または攻撃的なコンテンツの提供を禁止している。後者は刑法507条Aで、繰り返し不必要な接触や追跡行為を罰することを規定している(表3参照)。
類型 | 関連法律 | 内容 | 罰則・救済措置 |
---|---|---|---|
人種的または宗教的ブラックジャック勝ち方 | 扇動法1948年 | 人種や宗教に基づいて敵意や憎悪をあおることを犯罪と規定。 | 初版:最高5,000リンギの罰金、または3年以下の懲役、またはその両方。 再犯:最高5年の懲役。 |
マレーシア刑法(第298条) | 他人の宗教的感情を傷つける意図で行われた言動は刑事犯罪と規定。 | 最長1年の懲役、罰金、またはその両方。 | |
マレーシア刑法(第504条) | 平和を破る意図で行われた故意の侮辱は刑事犯罪と規定。 | 最長2年の懲役、罰金、またはその両方。 | |
サイバーブラックジャック勝ち方 | 通信・マルチメディア法1998年 (CMA法)(第211条) |
不適切、不潔、虚偽、脅迫的、または攻撃的なコンテンツの提供を禁止し、他人を虐待、脅迫、または迷惑をかける目的で行うブラックジャック勝ち方を規定。 | 最大5万リンギの罰金、最大1年の懲役、またはその両方。 |
CMA 法(第233条) | 不適切、不潔、虚偽、脅迫的、または攻撃的なコミュニケーション、その要求を禁止し、他人を虐待、脅迫、または迷惑をかける目的で行うブラックジャック勝ち方行為を規定。 | 最大5万リンギの罰金、最大1年の懲役、またはその両方。 | |
身体的・およびサイバーストーキング | マレーシア刑法(第507条A) | ストーキングを刑事犯罪と規定。オンラインと対面でのストーキングの両方に適用され、加害者を被害者が認知しているかで区別はない。 | 最大3年の懲役、罰金、またはその両方。 |
出所:Josephine, L K Chow & Co. 弁護士事務所の報告に基づく
新たな潮流に求められるバランス感
マレーシアでは、高い賃金や昇進を求めることを要因とする離職率の高さといった従来の労務問題に加えて、人権意識や労働者へのさらなるセーフティーネット提供の重要性が高まっている。日系企業が組織を円滑に運営していく上での留意すべき論点として、ブラックジャック勝ち方問題を考慮する場面が今まで以上に増えてくるとみられる。法整備に加え、広報面でも政府はブラックジャック勝ち方問題に力を入れ、その防止のための啓発を行っている(写真参照)。

(出所:マレーシア政府ウェブサイト)
他方で、不必要に委縮する必要はない。マレーシアのジョセフィン・ング・ビー・レン弁護士は「ブラックジャック勝ち方を警戒して、過度に従業員と距離を保つことは適切ではない。マレーシア人はむしろ、自身のプライベートに関心を持ってほしいと考えている面もある。上司や同僚が距離を置き過ぎると、自分が関心を持たれていないと感じてしまう。セクシャルブラックジャック勝ち方につながる言動と、従業員に関心を持ってコミュニケーションを図ることとは別問題」と指摘する。
マレーシアでは、ブラックジャック勝ち方関連の対策として、新法に加え、既存の法律を改正することで、被害者を救済する仕組みを整えつつある。しかし、ブラックジャック勝ち方関連の判例は、現時点では少なく、被害者は被害後にすぐに裁判に訴えるという状況ではない。日系企業には、個人への関心を示すことで、従業員のモチベーションを上げることを意識しつつも、ブラックジャック勝ち方につながる過度な接遇は避けるといったバランスある対応が求められる。

- 執筆者紹介
- ジェトロ調査部アジア大洋州課課長代理
新田 浩之(にった ひろゆき) - 2001年、ジェトロ入構。海外調査部北米課(2008年~2011年)、同国際経済研究課(2011年~2013年)を経て、ジェトロ・クアラルンプール事務所(2013~2017年)勤務。その後、知的財産・イノベーション部イノベーション促進課(2017~2018年)を経て2018年7月より現職。