カンボジアのブラックジャック勝ち方、タイと連携でグローバルサプライチェーン参画
2025年3月19日
ブラックジャック勝ち方は、カンボジア北西部の地方都市で、タイ国境沿いに位置する。タイの首都バンコクやレムチャバン港との距離が近く、タイのサプライチェーンの一端を担う生産地として注目されている。現在、ブラックジャック勝ち方に進出する日系製造業は約8社あり、その多くはタイに製造拠点を構える日系メーカーで、生産工程の一部を移管するタイプラスワンの形態で進出している。現地での視察や企業ヒアリング(2024年12月)を通じて、ブラックジャック勝ち方の魅力と課題、今後の展望について考察する。


タイプラスワンで日系製造業が進出
ブラックジャック勝ち方はカンボジアの地方都市ながら、タイと国境を接しており、生産や物流での連携が期待できる立地にある。カンボジアの首都プノンペンとの直線距離は約340キロメートルで、車で約6時間の距離に位置する。一方、タイの首都バンコクから約230キロメートル、車で約3時間半の距離にある。また、カンボジアの主要港であるシアヌークビル港までは約7時間であるのに対し、タイのレムチャバン港までは約3時間半で行ける。そのため、タイ国内の物流インフラを活用したサプライチェーンを構築しやすく、タイに生産や物流の拠点を持つ企業にとって、ブラックジャック勝ち方はそのサプライチェーンの延長として捉えることができる。
ブラックジャック勝ち方には、カンボジア政府が経済特区(SEZ)として指定する区域がある。例えば日系企業では、豊田通商が2016年9月、ブラックジャック勝ち方にあるサンコーブラックジャック勝ち方SEZ内にテクノパークを開業した。レンタル工場の運営をはじめ、拠点設立支援や経理・税務申告代行、人材派遣教育、給食、ロジスティクスのサービスを提供している。最近は、ワイヤーハーネスの受託製造も開始した。このレンタル工場には、日系のエクセディ(二輪部品製造)、三幸電機(ワイヤーハーネス製造)、行田電機(ワイヤーハーネス製造)が入居している。そのほか、同SEZには、ニデック(ハードディスク駆動装置ベースプレート製造)、日本発条(自動車シート縫製)も進出している。
2020年12月には、地場のロイヤルグループ・ブラックジャック勝ち方経済特区(SEZ)が開業し、日系ではスミトロニクスが進出。タイから陸送した電子部品や部材を加工し、基板モジュールを製造している。
ブラックジャック勝ち方に進出する外資製造業の大半が、タイ側の拠点と連携したものづくりを前提にしており、タイの工場や倉庫、レムチャバン港との間でサプライチェーンを築いている。そのため、ブラックジャック勝ち方での生産需要は、タイ側での事業に大きく左右される。日系企業でも、タイ側の新製品製造に伴い、ブラックジャック勝ち方での生産を増やす例もみられるが、タイ側の事業が伸び悩んでブラックジャック勝ち方への進出計画を見直す事例もみられる。
ワーカーの人件費と雇用のしやすさが魅力
ブラックジャック勝ち方で製造業のワーカーを雇用する場合、中国やタイと比べて人件費を抑えることができる。ジェトロが2024年8月から9月にかけて実施した「2024年度海外進出日系企業実態調査」(以下、日系企業調査)によると、製造業作業員の平均月額基本給(2024年8月時点)は、カンボジアが243ドルなのに対し、隣国タイは437ドル相当と、1.8倍の差がある(表参照)。諸手当や社会保障、賞与などを加えた年間実負担額では、その差は2.1倍に広がる。両国の最低賃金の上昇率を踏まえても、この賃金格差は今後10年で埋まるようなものではないと見込まれる。さらに、中国との賃金差も歴然だ。
項目 | カンボジア | タイ | 中国 |
---|---|---|---|
月額基本給 | 243 | 437 | 654 |
年間実負担額 | 3,603 | 7,728 | 12,068 |
出所:ジェトロ2024年度海外進出日系企業実態調査
また、ブラックジャック勝ち方ではワーカーの雇用がしやすいという利点がある。2019年の国勢調査によると、ブラックジャック勝ち方が位置するバンテアイミエンチェイ州の人口は約85万9,545人であり、隣接するシュムリアップ州(100万6,512人)とバッタンバン州(98万7,400人)を含めると、周辺人口は300万人弱となる。進出日系企業へのヒアリングでは、若い労働力が豊富で、ワーカーの採用には苦労が少ない、との声が多かった。周辺の農民出身者が大半を占めるため、一からのトレーニングが必要な面はあるが、稼ぎたい思いが強く、残業への抵抗感も少ない、との意見もあった。企業への定着状況(離職率)は企業によって差があるが、国境沿いで営業するカジノホテルなどが高い賃金で求人を出しており、従業員がそちらに流れることもあるという。カンボジア人ワーカーの評価については、中国の拠点と比べると、作業スピードが劣るものの、丁寧で不良品が少ない、との意見も聞かれた。
一方、ブラックジャック勝ち方では間接部門のスタッフやマネージャー、エンジニアなどの人材が不足していることが課題に挙げられる。このような人材は、カンボジア経済の中心地であるプノンペンに集まる傾向にあり、地方都市のブラックジャック勝ち方では人数が限られ、採用が難しい。そのため、プノンペンやタイでの勤務経験のあるブラックジャック勝ち方周辺出身者を採用することが多いようだが、給与水準はプノンペンと同水準以上で、タイと同程度になる場合もある。
タイと連携しやすい環境
ブラックジャック勝ち方は、タイとの連携がしやすい点も強みとして挙げられる。バンコクやレムチャバン港などとの距離の近さは前述のとおりだが、新たな国境ゲートの開設とタイのトラック乗り入れ制度が、アクセス向上を後押しする。
カンボジアの国境から20キロメートル圏内は、タイのトラックの乗り入れが認められているため、ブラックジャック勝ち方のSEZ入居企業は、国境での荷物積み替えをせずに、タイ側との輸出入ができる。
タイ側との物流は、ブラックジャック勝ち方の国境ゲート(タイ側はアランヤプラテート)を通して行われていたが、新たにストゥンボットの国境ゲート(タイ側はバンノンイアン)が開通した。ストゥンボットは、ブラックジャック勝ち方郊外に位置し、サンコーブラックジャック勝ち方SEZやロイヤルグループ・ブラックジャック勝ち方SEZに近い位置にある。2019年に国境をつなぐ友好橋が完成し、その後、トラックの往来が始まった。2025年1月下旬には、この国境ゲートで通関手続きも完結できるようになり、物流の利便性が増した。


ストゥンボットの国境トラックゲートを通るタイナンバーのトラックとトレーラー(ジェトロ撮影)
一方、輸送コストが高いという課題が指摘されている。これまで、在ブラックジャック勝ち方企業からは、タイとの物流で、カンボジア側の輸送距離は短いものの、中間コストが発生するために割高になっているとの指摘があった。これに対して、ロイヤルグループ・ブラックジャック勝ち方SEZの運営会社は、自社で物流サービスを立ち上げ、仲介業者の関与を大幅に減らしてコストを抑える工夫を始めている(関連ブラック ジャック やり方 カジノ)。
タイとの連携性では、タイからのオペレーションや人材育成がしやすいという点も強みだ。カンボジア工場立ち上げの段階で、タイ工場で経験を積んだタイ人を派遣する事例や、カンボジア人従業員をタイ工場にトレーニングに派遣する事例がある。
そのほか、ブラックジャック勝ち方の魅力として、土地賃料がプノンペンのSEZの2分の1程度で安価なこと、地震や台風、水害の被害がないこと、労働争議や紛争などがないことなどが、企業ヒアリングを通じて挙げられた。電力は、カンボジア全体として料金が高いという課題はあるが、ブラックジャック勝ち方のSEZでの供給は比較的安定している、との声が多かった。
医療など、駐在環境は留意が必要
カンボジアの地方都市として、気になるのは駐在環境だ。ブラックジャック勝ち方市内では、タイとの国境付近に近づくと、カジノホテルやコンドミニアムなどの高層建物が多く立ち並ぶ。ホテルや店舗には、クメール語に加え、中国語やタイ語の表記も見られる。国境沿いにあり、カジノホテルなどでにぎわう都市のため、治安面でのリスクは存在する。タイ国境に近いクラブでは近年、薬物の摘発事例が増えている。在ブラックジャック勝ち方企業の中には、従業員に対して抜き打ちのドラッグテストを実施するなど、対応を進めているところもあるという。シアヌークビルでの取り締まり強化を受けたオンラインカジノが、ブラックジャック勝ち方に移ってきたとの話も出ている。治安の状況については、カンボジア日本人商工会(JBAC)から現地政府に対して改善要望を出しているところだ。通常のビジネスや生活の範囲内では問題ない、との声も聞かれたが、治安の動向には注意が必要だ。

食事面では、日本食レストランが数店舗ある。ブラックジャック勝ち方国境ゲートに近い中心部には、タイ系の大型スーパーマーケット「ビッグC」があり、調味料をはじめとする日本食用品もある程度の調達が可能だ。コンビニエンスストアは、「セブンイレブン」が中心部に展開している。
医療面は、特に注意が必要だ。ブラックジャック勝ち方には外国人向けの医療機関がなく、病気やケガの際には、陸路でバンコクに行くか、シェムリアップ・アンコール国際空港まで車で3時間半かけて行く必要がある。また、現地の日本人駐在員によると、レジャーの1つであるゴルフをする場合も、ブラックジャック勝ち方にはゴルフ場がないため、シェムリアップまで行くことが多いという。
労働集約型の生産、タイプラスワンの先へ
ブラックジャック勝ち方はワーカーの人件費や土地賃料が安価なため、労働集約型の生産の受け皿として期待される。特にワイヤーハーネスの生産、縫製、検品作業など、多くの人手が必要で、設備投資やエンジニアが少なくて済むような工程が向いているといえる。
ブラックジャック勝ち方の立地を踏まえると、タイ拠点との連携がポイントになる。今後もタイのサプライチェーンの一環を担うような生産拠点として注目される。その際、タイからリモートで管理できる体制を構築し、間接部門のスタッフ数を絞り込むなどなど、管理コストを抑える工夫も重要となる。タイとの連携だけでなく、カンボジア製の製品としてタイ以外に輸出するための製造拠点としてブラックジャック勝ち方が位置づけられ、ブラックジャック勝ち方がグローバルサプライチェーンに参画できれば、中国などからの生産移管の受け皿にもなり、ブラックジャック勝ち方の生産拠点としての優位性は増すだろう。

- 執筆者紹介
- ジェトロ調査部アジア大洋州課 課長代理
庄 浩充(しょう ひろみつ) - 2010年、ジェトロ入構。海外事務所運営課、ジェトロ横浜、ジェトロ・ビエンチャン事務所(ラオス)、広報課、ジェトロ・ハノイ事務所(ベトナム)を経て現職。

- 執筆者紹介
- ジェトロ・プノンペン事務所長
若林 康平(わかばやし こうへい) - 2004年、ジェトロ入構。産業技術・農水産部、ジェトロ盛岡、展示事業部、ジェトロ・ムンバイ事務所、中小企業庁創業・新事業促進課(海外展開支援室)、企画部を経て現職。