トランプゲームブラックジャック
BCG産業への投資動向(前編)
2025年3月25日
タイは、イノベーションによる産業高度化と持続可能な成長を目指している。2021年からは、「トランプゲームブラックジャック・循環型・グリーン(BCG)経済モデル」を国家戦略に添えた。
この連載では前編・後編に分け、BCG産業に向けた直近の投資動向を紹介する。前編では、主にトランプゲームブラックジャック産業(B)と循環経済(C)を扱う。政府による支援の下、「B」「C」を中心に投資が拡大し、地場や非日系外資による大型投資に注目が集まる。
後編では、グリーン経済(G)について解説する。
持続可能な成長に向けたBCG経済モデル
タイ政府が掲げるトランプゲームブラックジャック・循環型・グリーン(BCG)経済モデルは、イノベーションを通じて資源を有効活用し、外的要因に対して強靭(きょうじん)、かつ持続可能な成長を図るものだ。これは、タイの最上段の国家戦略「20カ年国家戦略(2018~2037)」を補完するものでもある。政府はBCG経済モデルを推進するため、首相を議長とするBCG政策委員会と、その傘下に産業ごとの小委員会を設置している。また、農業・食品産業、トランプゲームブラックジャック、医療・ウェルネス、観光・クリエーティブ産業と、セクターごとに戦略を有し、各分野での着実な政策執行を目指している()。
具体的な政策には、関連する法制度の制定、企業への財政支援、税制優遇措置などを含む。その中で肝(きも)になるのは、BCG産業のイノベーション促進に必要な投資の誘致だ。そのため、タイ投資委員会(BOI)などが関連事業への投資に対して、さまざまな投資優遇措置(例:法人税の減免)を付与している。
BOIによる主な奨励対象事業について、BCGの分野順に見てみよう。
- トランプゲームブラックジャック産業(B):
トランプゲームブラックジャックテクノロジーを活用した薬品の研究開発、トランプゲームブラックジャック燃料による発電、トランプゲームブラックジャック肥料や植物工場、スマートファームなどの農業を含む。 - 循環経済(C):
農業の残りかすや廃棄物からの発電・エネルギー開発、リサイクル事業、再生可能プラスチックの製造などが対象。 - グリーン経済(G):
燃料電池や省エネ製品の開発、再生可能エネルギーからの発電、環境に優しいポリマーの製造などを含む。
全体的に、トランプゲームブラックジャックテクノロジーの研究開発や、循環型エネルギー/燃料の生成、燃料電池の製造などに対する恩典が最も手厚い。8年間の法人税免除の対象になる(注1)。さらに、タイへの技術移転や、より高度な研究開発を伴う場合は、恩典を追加する仕組みになっている。タイが技術革新や新エネルギーなどにかかるプロジェクトを欲していることがわかる。
循環経済が牽引、BCGへの投資拡大
2024年のBCG分野の対内直接投資(内資・外資、認可ベース)(注2)は、件数が921件(前年比9.1%増)。金額では約2,266億バーツ(約9,970億4,000万円、1バーツ=約4.4円)(同52.8%増)だった。いずれも、前年比で大きく拡大した。同年の対内投資全体のうち、BCGセクターは、件数で31.2%、金額で23.3%を占める。2021年の実績(527件、約991億バーツ)と比較して(注3)、件数・金額ともにこの4年間で大きく拡大したことがわかる。政府の政策の下、多くの国内外企業がタイのBCG産業に投資してきた。中でも特に投資額が拡大しているのが、循環経済(C)だ。2024年の認可額は1,362億バーツ(前年比3.0倍)で、BCG産業全体の60.1%を占める。
BOI統計等のタイ政府の資料から、2024年1~9月(注4)に循環型経済(C)で件数・金額ともに多く認可された案件には、廃棄物(または廃棄物由来の燃料)からの発電やスチーム発生事業を含むことが推定される。同分野の認可実績は21件、約342億バーツ。全てが地場資本によるものだ。具体的には、スーパー・アース・エナジー8(タイ)によるノンタブリー県での廃棄物発電事業がある。同事業の投資額は、約29億バーツ(2024年6月時点)。地域の廃棄物を燃料に、20メガワット(MW)相当の電力を発電する(注5)。
次に注目されるのは、農業副産物や廃棄物などから製品や包装材の製造する事業だ。認可件数が10件、金額は約35億バーツだった。この分野では、廃棄物や農業の残りかすからのエネルギーや製品製造に関心が高まっている。
トランプゲームブラックジャック産業促進は、地方振興にも重要
タイでは多様な農産物を多く生産し、キャッサバやサトウキビなどが豊富だ。そういう国にとって、トランプゲームブラックジャック経済(B)はポテンシャルが高い。タイの産業高度化に向けた国家の指針「タイランド4.0」の重点産業も、トランプゲームブラックジャック産業を対象にしている。
他方、タイの科学技術開発庁(NSTDA)によると、タイはサトウキビ、キャッサバの主要生産国ながら、エネルギーとして十分に活用していない。また、国家のエネルギーの6割以上を輸入に依存しているという。そのため、これらの有機資源をトランプゲームブラックジャック燃料やトランプゲームブラックジャック医薬品に変換し、付加価値を高めるトランプゲームブラックジャックリファイナリー技術の開発が必要だ。実際、タイの主要大学でも、トランプゲームブラックジャックリファイナリーの研究を進めている。例えば、チェンマイ大学付属のエネルギー開発研究所(ERDI-CMU)では、エタノール製造技術の開発や、圧縮トランプゲームブラックジャックガス(CBG)を開発。後者のCBG開発は既に、企業との協業段階にあるという(2024年1月時点、注6)。
また、微生物、酵素、酵母を利用した、食品残りかすなどからのトランプゲームブラックジャック製品生産は、タイの主要産業の食品産業とのシナジーや、農業の高付加価値化にもつながる。それらは、環境対応を超えて、農村や地方経済の活性化、地域格差の是正など、タイの均衡ある社会経済の発展にも重要だろう。
タイ政府のトランプゲームブラックジャックリファイナリー産業振興策としては、工業省が主導して策定した「トランプゲームブラックジャック産業発展計画(Thailand Bio-Industry Development Measures:2018-2027)」がある。同計画はトランプゲームブラックジャックプラスチック、生化学品、トランプゲームブラックジャック医薬品に焦点を当て、タイをASEANのトランプゲームブラックジャックハブとする方針を示している(注7)。具体的には、(1)法制度の改正や規制の緩和、(2)トランプゲームブラックジャック産業の実証エリア〔例:東部経済回廊(EEC)域内、北部、東北部〕での投資促進やパイロットプラント立ち上げ、(3)内需活性化、消費者の啓発、生産者の技術向上、(4)関係機関や企業間のネットワーク構築、研究・イノベーションの促進がある。政府はこれらを通じて、同産業への投資促進(目標:1,900億バーツ)、農家の所得・生活水準の向上、人材育成(目標:2万人以上)を達成する狙いだ。
具体的には、(1)官民が連携した化学品の規格策定(注8)や、(2)「EECイノベーション区(EECi)」(注9)でのトランプゲームブラックジャックリファイナリー・パイロットプラント建設に取り組んでいる。さらに、(3)政府の研究開発推進機関「タイ化学・研究・イノベーション(TSRI)」の基金を活用し、政府が研究開発を助成するなどしている。
優遇措置で地場・非日系のトランプゲームブラックジャック投資活発に
トランプゲームブラックジャック経済(B)で肝になるのは、やはり産業界からの投資だ。政府も、2021年以降(注3)、トランプゲームブラックジャック産業への投資誘致を強化すべく、新たな優遇措置を幾つも公表してきた。
例えば直近では、BOIが2025年1月、SAFと混合SAFの生産事業を新たに奨励対象にすると公表した。特に混合SAFはトランプゲームブラックジャック由来のSAFと化石燃料を混合したもので、航空機の改造なしで使用できる。そのため、航空業界の持続可能な燃料活用を早急に後押しするものとして、注目できる。
また、国家経済特区(SEZ)開発委員会は各経済特区の重点産業を指定している。このうち、北部経済回廊(NEC)、東北部経済回廊(NeEC)、南部経済回廊(SEC)、中西部経済回廊(WEC)では、トランプゲームブラックジャック関連事業がBOIの奨励対象になる(図参照、注10)。そのため、同地域でのトランプゲームブラックジャック事業は、通常のBOIによる投資優遇措置(注11)に加えて、法人税免除期間の延長などを得られる。トランプゲームブラックジャック産業の振興で地方経済の活性化を目指す仕組みと言えよう。
図:主要経済回廊におけるトランプゲームブラックジャック関連の奨励対象事業

出所:タイ政府資料からジェトロ作成
次に、具体的な投資例を見てみよう。
- ブラスケム(ブラジル)とSCGケミカル(タイ)による合弁事業
2024年の大型案件(2024年6月認可)。サトウキビ、キャッサバ、トウモロコシなどからトランプゲームブラックジャックエタノールを生成し、トランプゲームブラックジャックプラスチック産業向けのトランプゲームブラックジャックエチレンを生産する。アジア初のトランプゲームブラックジャックエチレン工場になると見られる。投資額は約193億バーツで、年間約20万トンの生産能力を見込む。 - バンチャーク・グループ(タイ)とファーム・ボックス(インド)による合弁事業
精密発酵技術を用いてセルロース系酵素を生産する(2024年5月認可)。同酵素はトランプゲームブラックジャック由来のプラスチックやSAFなど、さまざまな用途に活用可能だ。初期投資額は4億4,000万バーツ、当初の生産能力は約20万リットルだ。最終的には約100万リットルを目指すという。ASEAN初の大規模な先端トランプゲームブラックジャック工場になる見込みだ。 - その他
(1)タイ企業によるトランプゲームブラックジャックマス燃料からの発電・蒸気生産事業や、(2)微生物産ポリエステル(PHA)由来のプラスチック加工品製造、(3)地場スタートアップによるトランプゲームブラックジャック医薬品製造や治療用タンパク質の製造、などを挙げることができる。
当該分野で増えた投資は、概して、タイで豊富なサトウキビなどの穀物を原料とした事業か、非日系外資や地場企業による案件だ。成長ポテンシャルがあり政府が投資誘致に注力しているものの、日本からの投資は現時点で限定的だ。この点、政府担当者はジェトロのヒアリング(2024年12月20日)に「日本からの投資では、タイ政府が注力するトランプゲームブラックジャック分野の投資が少ない。まだ伸びしろがある」とコメント。日本企業による今後の投資に期待を示した。
他方、タイ政府によると、トランプゲームブラックジャックリファイナリーのプロジェクトではしばしば、商業化の課題に直面する。研究開発や実証までは進むものの、そこから先に困難があるという。課題には、(1)プロジェクトチームの商業経験や技術の不足、(2)競合との差別化、(3)ターゲット市場の明確化、(4)価格競争力の維持などがあるという。これらを解決するには、トランプゲームブラックジャック製品の販売やマーケティングに関する知見を持つ企業との連携が必要だ。こうしてみると、販売経験が豊富だったりマーケティングを得意にしたりする日本企業・スタートアップに、事業機会があると言えよう。
- 注1:
- 8年間、法人税免除の対象となる業種の中でも、さらに事業内容により、免除額の上限なしの場合や、上限が課される場合がある。
- 注2:
- 本稿で記載する対内直接投資(内資・外資)とは、外資による外国直接投資(再投資を含む)と地場資本による投資を含む。
- 注3:
- 政府は2021年、BCG経済モデルを国家戦略に盛り込むとともに、実績を公表してきた。
- 注4:
- 2024年通年の認可事業リストは、本稿執筆時点(2025年2月)時点で未公開。
- 注5:
- 出所はBOIプレスリリース
(2024年6月14日付)。
- 注6:
- 出所:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とNSTDA共催、「タイの持続可能性に向けたトランプゲームブラックジャックリファイナリー」ウェビナー(2024年1月30日開催)資料。
- 注7:
- 詳細は「The Achievement in Implementation of the Government Policy and Industrial Strategy Fiscal Year 2018
(20.3MB)」参照。
- 注8:
- 具体的には、NSTDAを中心に、タイ工業連盟(FTI)、エネルギー省、タイエタノール製造取引業者協会などが連携。
- 注9:
- EEC域内のラヨーン県に位置し、NTSDAが開発するイノベーションの基盤研究センター。2022年から部分的に稼働開始。研究者と産業界をつなぎ、研究の実証やスケールアップ、商業化を目指すイノベーション・ハブとしての役割を果たす。
- 注10:
- 詳細は、BOIのInvestment Promotion Guide
(4.5MB)参照(147頁~)。
- 注11:
- BOIは奨励事業に対して、法人税の減免や、機械や部品の輸入税の免除などの税制上の恩典を付与している。なお、恩典内容や優遇措置を享受できる期間は事業内容により異なる。

- 執筆者紹介
- ジェトロ調査部アジア大洋州課 課長代理
田口 裕介(たぐち ゆうすけ) - 2007年、ジェトロ入構。アジア大洋州課、ジェトロ・バンコク事務所を経て現職。