カード ゲーム ブラック ジャック
日本発スタートアップのグリーンカーボン
2024年10月21日
ベトナム政府は2025年からカーボンクレジット取引所のパイロット運用を開始するとしており、クレジット取引を活用したビジネスに注目が集まっている。しかし、この分野で知見を有するベトナム地場企業は少なく、地場大手も新たな技術やビジネスモデルを模索している。
このような機運の高まりを事業機会と捉え、日本発のスタートアップがベトナムの温室効果ガス(GHG)排出削減を目指し、地場企業・機関と提携する動きが活発化している。
グリーンカーボンは、2019年12月に東京都港区で設立したスタートアップだ。同社はカーボンクレジット創出のコンサルティング事業や研究開発事業、ESGコンサルティング事業(注1)を展開している。
その中でも特に、独自開発のプラットフォームサービスを活用したカーボンクレジット創出のコンサルティング事業に強みがある。同社は農家に対して、プラットフォームサービス「アグリーン(Agreen)」を提供。利用者が農業種別を選択すると、その農業由来のカーボンクレジット創出方法の提案や、創出量のシミュレーションを実施できる。そのほか、決定したプロカード ゲーム ブラック ジャッククトの登録、申請(必要書類の準備、作成の代行)、事業実施、カーボンクレジット創出量の測定・モニタリング、創出クレジットの販売までを同社が行う。
日本では、カーボンクレジットの創出において、水田、森林、バイオ炭由来の大きく分けて3種類のJクレジット制度(注2)活用のための認証実績がある。とりわけ水田由来のうち、中干し期間の延長によるメタンガス削減方法は2023年に日本で初めて確立し、水田由来では過去最大の6,220トンのクレジット認証を取得した(2023年度実績)。2024年度は二酸化炭素(CO2)換算で前年度比約20倍の12万トンのメタンガスを削減し、そのクレジット認証が取得できるようプロカード ゲーム ブラック ジャッククト組成を進めている。
また、同社はこれまでに海外12カ国に事業展開しており、オーストラリア、フィリピン、ベトナムに支社を持つ。二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM、注3)を利用することで、これらの国で認証されたクレジットを日本企業と売買することが可能だ。
二国間クレジット制度を利用する際は、(1)現地の政府や農家などのパートナーとのプロカード ゲーム ブラック ジャッククトの開発(プロカード ゲーム ブラック ジャッククトに関する勉強会などの実施)、(2)先行投資家への提案(プロカード ゲーム ブラック ジャッククトのキャッシュフローシートを作成)、(3)日越合同委員会へのプロカード ゲーム ブラック ジャッククト提案、(4)プロカード ゲーム ブラック ジャッククトの実施、クレジットの申請・登録、(5)排出されたメタンガスの測定、検証、報告、(6)日越両国合意の上、カーボンクレジットの発行というプロセスを経る。事業の実施に当たっては、プロカード ゲーム ブラック ジャッククトファイナンスのかたちで先行投資家を集めている。先行投資家はプロカード ゲーム ブラック ジャッククト費用を先払いするが、その中にクレジット売却で発生する農家への還元費用も含まれている。そのため、仮に発行されたクレジットが売却できなかった場合でも、農家への支払いが不可能になることはない。また、上記プロセスの(5)が完了した段階で、農家への支払いを行うことができる。
同社は2023年6月、ベトナム国家農業大学と水田由来のメタンガスを削減するための共同研究を開始した。実証実験を経て、2024年1月からはベトナム北中部のゲアン省内の約6万ヘクタールの水田圃場(ほじょう)でメタンガス削減プロカード ゲーム ブラック ジャッククトを進めている。また、同年4月には南部メコンデルタ地域のアンザン省でのプロカード ゲーム ブラック ジャッククト実施に向け、ベトナム南部の国立カントー大学と共同研究に関する覚書(MOU)を締結。さらに同年5月、同プロカード ゲーム ブラック ジャッククトに関して、地場農業大手のロクチョイグループ、スマート農業技術を有するダイタンともMOUを締結(2024年5月20日付グリーンカーボンニュースリリース参照)。ベトナムでの事業展開を現在進める同社代表取締役の大北潤氏に、ベトナムへの事業展開の経緯や今後の展開を聞いた(取材日:2024年7月19日)。
- 質問:
- グリーンカーボンの創業の経緯は。
- 答え:
- 前職で日本の上場企業向けにESGコンサルティングを行っていた。その際に、S(社会:人権、職場環境問題など)とG(企業統治:会計の透明性など)では多くの企業で具体的な取り組みを提示できているのに対し、E(環境:地球温暖化、資源枯渇など)の取り組みで悩んでいる企業が多いと感じた。
- 温室効果ガス(GHG)の削減は、世界的な課題だ。日本も、2030年までに温室効果ガス(GHG)を46%削減、2050年までに100%削減することを目標に掲げている。しかし、実際には世界の93%の企業が自社のカーボンニュートラルの達成が困難だと言われおり、多くの日本企業も独力による取り組み推進が課題だ。そこで、GHG削減量をクレジットとして販売・取引できるカーボンクレジット制度を企業がより簡単に利用できればと考え、当社を創業した。共同創業者の萩原惇允氏は前職でAI(人工知能)による製薬、ゲノム編集をしていた経験を生かし、研究開発部門を担う。
- 質問:
- ゲアン省での事業で用いる間断灌漑(AWD)と、AWDによる水田のメタンガス発生削減の仕組みについて。
- 答え:
- 水田の土壌の中には、メタンを作る微生物(メタン生成菌)が住んでいる。水が張られた田んぼで、稲が酸素を取り込んで土壌中の酸素が不足すると、微生物が活発化し、メタンを生成するようになる。稲の茎や根には空気を通す隙間があり、土壌の中で作られたメタンの多くはこの隙間を通って大気中に放出される。AWDとは、水田の水位を調整することで、水を張った状態と、干した状態とを数日おきにくり返し、土壌の中のメタン生成菌の活動を抑制し、メタンガス排出量を削減する方法だ。東南アジアの多くの国で慣行農法の連続湛水(常に水が張っている状態)に比べ、水の使用量を減らすことができ、水資源の保全にも寄与する。ゲアン省のプロカード ゲーム ブラック ジャッククトでは主にこの手法を用いている。
- 質問:
- AWDに着目した背景や、ゲアン省を事業地に選定した理由は。
- 答え:
- 農林水産省によると、日本の農業分野のGHG排出量は約5,000万トン(2020年度時点)。中でもメタンガスは約1,356万トンで、全体の約27%を占める。ベトナム全土の水田面積は700万ヘクタール(日本の約5倍)あり、かつ、年に2度作物を栽培・収穫する二期作を行うため、ベトナムの水田由来のメタンガス排出量は、日本の10倍規模の1億3,000万トン以上と推計される。ここにメタンガス削減の余地とカーボンクレジット創出の大きな可能性を感じた。
- 中でもゲアン省を事業地に選定したのは、国際協力機構(JICA)から紹介を受けたからだ。JICAは、政府開発援助(ODA)事業として、同省北部の大型灌漑施設の改修と、灌漑施設維持管理能力強化のための研修所の整備を支援していた。
- 質問:
- ゲアン省での事業実施に当たり、行政や農家への説明、指導をどう進めたか。
- 答え:
- 同省では、ベトナム国立農業大学と連携して事業を実施している。事業実施に当たり、ゲアン省の行政サイドとのコミュニケーションが欠かせないが、現地大学との連携がプラスに作用し、ベトナムでよく事業課題に挙げられる許認可の遅れなどの問題は今のところ発生していない。ローカルパートナーを通して行政との信頼関係を築けていたことが良かった。また、AWDには水田の小まめな給排水が必要となるが、農家一人一人にその水量の徹底管理を任せるのは、農家の負荷が大きく、管理が不十分となるリスクも大きい。そのため、ゲアン省全体の灌漑管理を行う国営企業と提携し、一括管理を任せている(2023年9月5日付グリーンカーボンニュースリリース参照)。AWDを行うと水の使用量を40%程度減らすことができ、その分灌漑管理がしやすくなる。加えて、カーボンクレジットを利用することで農家にも金銭的リターンがある。そうした理由を挙げて興味を持ってもらい、国営企業から積極的な協力を引き出すことができた。また、事業の対象となる農家に対して何度も勉強会を実施し、事業に対する理解を深めてもらった。
- 質問:
- ゲアン省での事業の流れや実績、今後の展望について。
- 答え:
- この事業では、ボランタリークレジットの「Gold Standard」制度(注4)を利用。事業は、(1)現地の政府や農家などのパートナーとのプロカード ゲーム ブラック ジャッククトの開発(プロカード ゲーム ブラック ジャッククトに関する勉強会などの実施)、(2)先行投資家への提案(プロカード ゲーム ブラック ジャッククトのキャッシュフローシートを作成)、(3)プロカード ゲーム ブラック ジャッククトの実施、クレジットの申請・登録、(4)排出されたメタンガスの測定、検証、報告、(5)Gold Standard事務局によるカーボンクレジットの発行というプロセスで進む。二国間クレジット制度を利用する場合と同様に、事業の実施に当たっては、プロカード ゲーム ブラック ジャッククトファイナンスのかたちで先行投資家から融資を集めている。
- 2024年7月までに多くの農家がプロカード ゲーム ブラック ジャッククトに参加し(累計農地面積5,000ヘクタール相当)、CO2換算で約2万トンものメタンガス削減を達成した。また、コメの収穫量は同エリアで同品種を従来の慣行農法で育てた場合と比較して、平均で約5%増加し、多い地域では約20%増えた。2024年中に約1万ヘクタールまでプロカード ゲーム ブラック ジャッククト実施規模を拡大する計画だ。また、今後はコメの加工や販売も行うベトナム最大級の食品商社THグループ傘下のINTADと連携し、収穫したコメの販売にも力を入れてく予定だ。AWDを実施した圃場で収穫したコメを「AWD rice」(仮称)として、通常の農法で栽培したコメよりも高い価格で農家から買い取り、販売する。そうすることで、農家はカーボンクレジットによる収益のみならず、コメの販売による利益も得ることができる。
- 質問:
- ベトナムにおける水田のメタンガス削減事業の今後の展開予定は。また、それ以外に、ベトナムで可能性があると考えられる環境ビジネスの分野は。
- 答え:
- ゲアン省以外では、タインホア省(ベトナム北中部)、ナムディン省(北部)(2024年5月22日付グリーンカーボンニュースリリース参照)、ハイズオン省(北部)、フンイエン省(北部)、タイビン省(北部)、メコンデルタ地域(南部)(2024年5月20日付グリーンカーボンニュースリリース参照)にポテンシャルを感じており、今後、水田のメタンガス削減事業を展開、拡大していく可能性がある。これらの地域では既に各省の農業農村開発局や農家とコミュニケーションを取り、この事業に対する現地の興味や関心を把握している。また、地域ごとに研究機関や大学とMOUを締結している。
- 水田事業以外には、マングローブが生い茂るメコンデルタ地域での植林や、国土の約4割を占める森林の保護にも、事業ポテンシャルがあると考える。マングローブのCO2吸収量は同面積の他の品種の森林の2倍に相当するため、その植林によるGHG削減効果は大きい。また、森林が多いベトナムでは、既にフィリピンで実施している「REDD+」(注5)の方法は有効だ。ほかにも、牛のゲップに含まれるメタンガスを削減する事業にもポテンシャルを感じている。ベトナムにおける肉牛・乳牛の飼育数は650万頭以上で世界でも比較的多い。牛のげっぷに含まれるメタンガスはGHGの一種で、その排出量は全世界におけるGHG総排出量の約5%を占めると推定されている。具体的には、メタンガス発生の要因となる草の消化に作用する飼料を与えて育成することで、牛のげっぷに含まれるメタンガスを削減する。
- 質問:
- ベトナム事業の課題は。
- 答え:
- AWDを行う際には、その水田の土壌などに関するデータが必要になるが、そのデータが収集または保管されていない場合がある。また、灌漑設備の水門をコントロールして水田の給排水量を調節する必要があるが、そもそも、灌漑設備が整っていないところも多い。これらについて、事前に行政や農家に照会しても、必要なデータが分からないことが多く、実際に現地に行ってみる必要がある。
- 質問:
- ベトナム事業で日本企業との連携について。
- 答え:
- 2024年5月、水田のメタンガス削減によるカーボンクレジット創出と、メタンガス抑制に寄与したコメ(環境配慮米)の普及を目指し、兼松と連携協定書を締結した(2024年5月10日付グリーンカーボンニュースリリース参照)。日本とベトナム市場を対象に、環境配慮米の販売を共同で促進するものだ。具体的には、当社が農家に対してカーボンクレジット創出のサポート、クレジットの代理申請を行う。兼松は、長年に及ぶコメ事業で培った幅広いコネクションと、国産・外国産のコメの市場やマーケティングに関する知見を生かし、その環境配慮米とクレジットをセットで販売する。当社のノウハウだけでは解決が難しい問題も多々あるため、今後も必要に応じて日本企業や大学との連携を行っていきたい。
- 注1:
- ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉。気候変動問題や人権問題などの世界的な社会課題が顕在化している中、企業が長期的成長を目指す上で重視すべきESGの観点で配慮ができていない企業は、投資家などから企業価値毀損のリスクを抱えているとみなされる。そこで、ESGコンサルティング(業)は、これら3つの要素を重視した経営の推進に関する戦略立案などを支援する。
- 注2:
- 二酸化炭素(CO2)などの排出削減量や吸収量を「クレジット」として日本政府が認証するもの。
- 注3:
- JCMは、相手国との企業間連携を通じ、低炭素技術の新興国などへの普及や地球規模での温室効果ガス(GHG)削減に貢献するもの。削減分は自国のGHG削減目標の達成に活用可能。
- 注4:
- 各国・地域の規制や制度に必ずしも基づかない、企業の自主的な活用が前提で運営されている制度。Gold Standardは2003 年に WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)などの国際的な環境 NGO が設立した認証基準・制度〔経済産業省「カーボン・クレジット・レポート」(2022年6月)参照〕。
- 注5:
- 過去の森林減少やそれに伴う排出量の推移などに基づき、森林減少・劣化を抑制した場合と、そうでない場合のCO2排出量の差を測定し、クレジット化するもの。
- 執筆者紹介
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カード ゲーム ブラック ジャックトロ・ハノイ事務所
細川 雄貴(ほそかわ ゆうき) - 2021年、富山県入庁。2023年からカード ゲーム ブラック ジャックトロに出向。調査部アジア大洋州課を経て、2024年4月から現職。