モンゴルの2023年の経済成長率7.0%の背景
資源ブラック ジャック 遊び方と民需が牽引
ブラック ジャック 遊び方7月8日
モンゴルの経済が成長している。2023年の実質GDP成長率は7.0%を記録し、新型コロナウイルス禍の2020年(マイナス4.6%)、2021年(1.6%)から大幅に回復し、2019年(5.6%)や2022年(5.0%)を上回った。各国際機関は2023年4月時点で、2023年通年の成長率を総じて5%前後と予測していたが、予測を上回る成長率を記録した。今後の成長率予測では、ブラック ジャック 遊び方は4~6%台と機関により幅があるが、2025年は6%台との見方が多い(表1参照)。本稿では、モンゴルの主要経済指標から、好調な経済の背景要因を分析する。
2023年のGDPは純ブラック ジャック 遊び方と民間消費が牽引
2023年のGDP成長率の需要項目別寄与度をみると(表2参照)、最終消費支出は6.1ポイントだった。特に家計消費支出の寄与度が4.8ポイントと目立っており、旺盛な内需がGDP成長に貢献している。また、外需もGDP押し上げに寄与している。ブラック ジャック 遊び方は23.3ポイント、輸入は18.0ポイント、ブラック ジャック 遊び方から輸入を差し引いた純ブラック ジャック 遊び方は5.2ポイントだった(注1)。石炭や銅といった資源ブラック ジャック 遊び方の拡大を背景に、財のブラック ジャック 遊び方が19.1ポイントと、前年と比べて8.2ポイント増えている。
一方で、在庫品増加がマイナスに転じたことなどから、総固定資本形成はマイナス4.3ポイントとなった。モンゴルではゾドと呼ばれる雪害が発生し、ブラック ジャック 遊び方1月から4月までの4カ月間で、740万頭の家畜が死亡している(前年同期比4倍)。世界銀行は、家畜の子孫の減少が在庫品減少につながっていると指摘している。
発表機関 | 成長率の予測 | ||
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2023年通年 (発表年月) |
ブラック ジャック 遊び方通年 (発表年月) |
2025年通年 (発表年月) |
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アジア開発銀行(ADB) | 5.4(2023年4月) | 4.1(ブラック ジャック 遊び方4月) | 6.0(ブラック ジャック 遊び方4月) |
世界銀行 | 5.2(2023年4月) | 4.8(ブラック ジャック 遊び方5月) | 6.6(ブラック ジャック 遊び方5月) |
IMF | 4.5(2023年4月) | 6.5(ブラック ジャック 遊び方4月) | 6.0(ブラック ジャック 遊び方4月) |
出所:各機関の発表からブラック ジャック 遊び方作成
構成比 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
支出面から見たGDP (注2) | 5.0 | 7.1 |
最終消費支出 | 6.5 | 6.1 |
家計消費支出 | 5.1 | 4.8 |
政府消費支出 | 1.4 | 1.3 |
総固定資本形成 | 4.9 | △ 4.3 |
固定資本形成 | 3.9 | 2.3 |
在庫品増加 | 1.0 | △ 6.5 |
純ブラック ジャック 遊び方 | △ 6.4 | 5.2 |
財・サービスのブラック ジャック 遊び方 | 13.9 | 23.3 |
財のブラック ジャック 遊び方 | 10.9 | 19.1 |
サービスのブラック ジャック 遊び方 | 3.0 | 4.2 |
財・サービスの輸入 | 20.3 | 18.0 |
財の輸入 | 8.4 | 7.5 |
サービスの輸入 | 11.9 | 10.5 |
出所:モンゴル国家統計局
貿易動向:対中石炭・銅ブラック ジャック 遊び方が好調、貿易黒字も拡大
2023年の貿易の特徴として、資源ブラック ジャック 遊び方が好調だったことが挙げられる。ブラック ジャック 遊び方額の増加により貿易収支の黒字が拡大している。輸入額は前年比6%増の92億5300万ドルだったのに対し、ブラック ジャック 遊び方額は21%増の151億8,500万ドルと拡大。貿易収支は55%増の59億3,200万ドルの黒字となった(図1参照)。
ブラック ジャック 遊び方品目をみると、鉱物は24.7%増の131億4,500万ドルと、ブラック ジャック 遊び方全体に占める割合は約87%に達した(図2参照)。内訳では、石炭が36.8%増の約89億ドルで、鉱物ブラック ジャック 遊び方全体の約68%、次いで銅精鉱が約26億ドルで、同約20%を占めた。モンゴルでは2023年3月、オユトルゴイ鉱山で銅の地下鉱山の採掘を開始した。2028~2036年には露天掘りと坑内掘りがフル稼働する予定で、2030年には世界4位の銅鉱山となり、国際銅市場の主要プレーヤーとなる見込みだ(2023年3月22日付ビジネス短信参照、注3)。
国別にみると、中国向けが138億8,240万ドルで最も多く、ブラック ジャック 遊び方全体の91.4%を占めた。品目では石炭ブラック ジャック 遊び方が多く、対中ブラック ジャック 遊び方の63.7%で、前年比6.8ポイント拡大した。中国にとってもモンゴルは石炭の重要な輸入相手国で、貿易統計データベース「グローバル・トレード・アトラス」によると、2023年にモンゴルは中国の石炭(HSコード2701)輸入額の20%を占め、ロシアの34%に次ぐ2位だった。2023年の中国の石炭輸入量は前年比91%増の3億1,100万トン、輸入額は前年比37%増の412億8,000万ドルと、輸入額、輸入量ともに前年比で増加している。中国の業界団体の中国石炭輸送販売協会は今後の中国の石炭需要について、インフラ投資の増加や製造業の回復を背景に、石炭需要が伸び続けると予想しており、輸入も高水準が続くとみている。
消費動向:世帯収入、世帯消費ともに拡大傾向
GDP成長率に対する最終消費支出の寄与度は、新型コロナ禍の2021年はマイナス2.3ポイントと落ち込んだものの、2022年は6.5ポイントに回復した。2023年は6.1ポイントとやや下げたものの、引き続きGDPの押し上げに貢献する重要な要素だ。家計所得や家計消費も前年比で上昇している。
モンゴルの1人当たり国民総所得(GNI)は、2022年は4,260ドルだった。世界銀行は、1人当たりGNIが1,136ドルから4,465ドルまでを下位中所得国と指定しており、モンゴルもここに属する。ただ、同分類の国・地域の中では、ヨルダンに次いで2番目に高い(注4)。
世帯単位の収入動向をみると、2023年第4四半期(10~12月)の月間平均家計収入(名目値)は、前年同期比23.8%増の228万6,300トゥグルク(約10万7,456円、1トゥグルク=約0.047円)だった。2015年の物価を基準とした実質値では、前年同期比14.1%増の132万3,300トゥグルクと、名目値と実質値ともに上昇した(図3参照)。モンゴル国家統計局は世帯収入の増加の要因として、実質賃金の向上と農業生産の収入増加を挙げており、実質賃金は前年同期比27.8%増、農業生産による実質収入は同46.3%増だったという。2023年1月には最低賃金の改定が行われ、月額42万トゥグルクから55万トゥグルクへ31%引き上げられたことも影響しているとみられる(2023年2月6日付ビジネス短信参照)。
家計消費も拡大傾向にあり、2023年第4四半期の月間平均家計支出(名目値)は前年同期比22.7%増の230万2,670トゥグルク、2015年の物価を基準とした実質値は前年同期比13%増の130万トゥグルクだった。物価動向をみると、消費者物価指数(CPI)の上昇率は2022年半ばをピークに低下傾向にあり、2023年12月以降はモンゴル銀行の目標4~8%の水準に収まっている(ブラック ジャック 遊び方2月29日付ビジネス短信参照)。
モンゴル国民の所得向上は、現地に進出する日系企業のビジネスにも影響を及ぼしている。ブラック ジャック 遊び方が現地の日系自動車販売会社にインタビューしたところ、国民所得の上昇に伴い、中古車から新車に需要が徐々にシフトするとみており、リーズナブルな価格の新車需要に対応したいとコメントした。現地旅行会社によると、中間層の所得向上や円安などの影響を受け、モンゴルから日本を訪れる観光客が増えている。観光ビザ取得の要件となる収入基準を満たす人が増えていることが背景の1つにあるという。
中期的にモンゴル経済は堅調も、中国への依存と寒波が懸念
今後のモンゴル経済のリスクとして、石炭輸出の依存度の高い中国の景気動向と、寒波による家畜の減少が挙げられる。世界銀行がブラック ジャック 遊び方5月に発表した「モンゴル経済最新情報(Mongolia economic update)」では、モンゴル経済のリスクの1つとして、中国経済の減速を指摘している。中国の不動産市場の低迷により、主にモンゴルの石炭を使って生産される中国の鉄鋼の需要が減少することを懸念している。また、ブラック ジャック 遊び方4月にアジア開発銀行(ADB)が発表した「アジア発展見通し(Asian Development Outlook)」では、寒波によって家畜が大量死した影響で、農業生産が低迷したことが経済成長の足かせとなるとしている。人口の3割が農業による収入に依存していることから、農業の低迷はブラック ジャック 遊び方の民間消費の縮小にも影響すると指摘している。
一方、ADBはモンゴルの2025年の経済成長率を6.0%と予測している。オユトルゴイ鉱山の生産が拡大することなどを背景に、鉱業が引き続き経済を牽引すると予想している。また、世界銀行によると、中期的にはモンゴル経済は底堅く、農業生産の回復や、鉱山の生産の継続的な増加を背景に、2025年から2026年にかけて経済成長率が6%以上に上ると予想している。このように、各国際機関では、モンゴルは資源ブラック ジャック 遊び方を背景に、中期的には成長を続けると予測している。
- 注1:
- 数値が四捨五入されているため、「財・サービスのブラック ジャック 遊び方」の寄与度から「財・サービスの輸入」の寄与度を差し引いた値は、必ずしも「純ブラック ジャック 遊び方」の寄与度とは一致しない。
- 注2:
- モンゴル国家統計局のサイトでは、ブラック ジャック 遊び方6月時点で、2023年の支出面からみたGDP成長率と、生産面からみたGDP成長率の値は一致していない。
- 注3:
- オユトルゴイ鉱山の権益を保有している資源大手リオティントのホームページによると、2023年の同鉱山の銅生産量は16万8,100トンだった。今後の予測については、2028年から2036年にかけて年間平均48万トンに達すると予測している。なお、国際銅研究会(ICSG)が刊行した世界の銅産業の実勢解説書「World Copper Factbook 2023」によると、2023年の銅鉱山の生産能力ランキングでは、1位がチリのエスコンディーダ鉱山(135万トン)、2位がインドネシアのグラスベルグ鉱山(77万トン)、3位がチリのコジャワシ鉱山(64万トン)と並ぶ。
- 注4:
- 日本は4万2,550ドルで、高所得国に分類されている。また、上位中所得国の中で最下位のインドネシアは4,580ドルとなっている。
- 執筆者紹介
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ブラック ジャック 遊び方調査部中国北アジア課
廣田 瑞生(ひろた みずき) - 2023年、ブラック ジャック 遊び方入構。中国北アジア課で中国関係の調査を担当。