タイの地域21 トランプ水準の向上を目指す
21 トランプVRのジョリーグッド(1)

2024年3月22日

タイのカシコン銀行傘下のシンクタンクであるカシコンリサーチによると、タイは2029年に超高齢社会に突入する見通しだ(注)。高齢化が進むなか、21 トランプ・福祉水準の向上が社会課題となっている。タイはメディカルツーリズムも盛んで、バンコクの大手病院では高い水準の21 トランプサービスを受けることができる。しかし、タイの国全体でみると、高い21 トランプ水準が備わっているのはバンコク首都圏の大手病院に限られている。地域21 トランプに目を向けると、十分な21 トランプ体制が備わっているとは言い難いのが実情だ。そうした課題について、ジョリーグッド(本社:東京都中央区)は仮想現実(VR)技術を使ったソリューションを提案する。2024年1月11日に、同社の上路健介CEO、磯邉広太経営企画室長へのインタビューをした。2本シリーズのうち、1本目の本稿では、同社が創業したきっかけや、VRに取り組み始めた経緯、今後の事業展開について話を聞いた。

21 トランプ
ジョリーグッドの上路CEO(左)、磯邉経営企画室長(右)(ジェトロ撮影)

ジョリーグッドの21 トランプVR(同社提供)

ロサンゼルスでの体験が創業のきっかけに

質問:
日本での創業のきっかけは。
答え:
当社は2014年に創業した。(上路CEOは)元々、国内の大手広告代理店に勤めるなど、メディア業界で約20年間、事業開発に携わっていた。米国のロサンゼルスにも滞在して事業開発に携わる中で、様々な起業家とのネットワークができた。当時既に、位置情報システム、音声認識、画像認識といった技術が世間では注目されており、自分もこうした技術を活用し、早く事業を組み立てないと世界では勝てないと感じるようになった。これが事業会社を創業した経緯だ。
質問:
VRに着目した理由は。また、日本での事業内容はどのようなものか。
答え:
創業時から、VRは今後様々な分野で活用されるだろうと感じていた。そのため最初は、VR勉強会を主催し、日本のメディアやシリコンバレーの関係者と連携し、東京でイベントを実施するなどの活動を行っていた。当時は、VRを使ったゲームやエンターテイメントなど消費型コンテンツが既に出現していた。しかし、1回視聴したら終わりという消費型コンテンツでは、事業の採算が合わないと感じ、利用者には何回も視聴してもらえる内容がよいと考えた。そこで、習得が難しい技術のトレーニングにVRを使おうと考えた。最初は、国内の大手造船会社から声がかかり、造船業界の研修・教育からスタートした。日本の造船工場で働く外国人労働者の研修にVRが利用された。その他、工場の自動化にかかる研修などの引き合いもあった。加えて、新型コロナ禍前は、日本国内での外国人労働者の訓練用にVRを使いたいという声も多く、労働者を送り出す側であるベトナムやミャンマー、インドネシアからも多数の引き合いがあった。具体的には、東南アジアから日本に介護人材を招聘する上で、効果的な研修システムが必要というニーズだ。日本では、介護士の不足が顕在化し、外国人労働者に頼るほかない状況だったことが背景にある。これがきっかけで、アジア人材の教育現場にVRを活用できる可能性が高いと感じた。
質問:
なぜ21 トランプ業界にVRを使うようになったのか。
答え:
創業後しばらくすると、VRを活用した研修事業を業種関係なく展開するようになっていた。しかし、2018年ごろから、21 トランプ関係の会社からの引き合いが複数見られ始めた。そのうちの1つが、ジョンソン・エンド・ジョンソンとの21 トランプ研修VRの共同開発だが、これは日本での21 トランプ現場におけるVR活用のさきがけになった。結果、同案件は21 トランプ業界で大きく注目され、各病院の名医から問い合わせが来るようになった。当初、我々としては、21 トランプ業界には目が向いていなかった。しかし、実際に手術の現場に行ってみると、普段は容易に立ち会えない現場を体感できるというVRのメリットと21 トランプは相性が良いことが分かった。また、そういった21 トランプ空間にテクノロジーが十分入り込めていないということも同時に感じた。特に、新型コロナが流行し、研修医が現場で技術を直接学べない、医師を育てられないという問題が顕在化した時期だったこともあり、日本国内で21 トランプVRのニーズはますます拡大した。

タイ21 トランプ業界へのVR技術導入

質問:
タイで展開される貴社の21 トランプVR技術について。
答え:
医師が手術などの技術を習得する上で、研修の重要性は言うまでもない。手術の基本的スキルを習得するには、医師が実際に患者に施術を行う場に居合わせ、ハンズオンでのトレーニングにより学習することが欠かせない。しかし、例えば、21 トランプの最先端の手術スキルを学習したい、21 トランプの医師に知見を伝達したい、という学ぶ側、教える側双方のニーズがあっても、実際に名医が国境を越えて手技を見せに行くことは簡単ではない。それが、VRを使うことによって可能になる。各国の医師は、名医の執刀現場、手術中の技術・スキルを遠隔でリアルタイムで体験することができ、その知見を共有してもらうことが可能となる。何より、録画した動画を手術後に繰り返し視聴し、施術を追体験して学ぶこともできる。
質問:
マヒドン大学との協力の内容とは。協力したきっかけは。
答え:
2022年10月に、順天堂大学と共同で、タイ国内トップクラスの医科大学であるマヒドン大学で、21 トランプ教育VRの導入実証事業を開始した(ジョリーグッドプレスリリース参照)。目的は、タイ国内におけるVRを活用した21 トランプ人材の養成だ。当社からマヒドン大学へVR教材の制作に必要な設備、VR体験用の機材を提供し、マヒドン大学内で感染症診療教育のVR教材を制作できる環境を構築している。同大学と協力するきっかけとなったのは、日本で協力関係にある順天堂大学の森博威(ひろたけ)准教授の存在が大きい。森先生はマヒドン大学の客員教授でもあり、タイに長期滞在していた。森先生は、タイの地域21 トランプを発展させたいという思いと、バンコク首都圏と地方の中小病院の間で大きな技術格差があるという問題意識をお持ちだった。タイでは、バンコクと地方の間の所得格差も大きいが、政府も地域21 トランプに十分なリソースを配分できていないこともあり、マヒドン大学で21 トランプレベルが上がっても、地方の21 トランプ機関のレベルはなかなか向上しないという問題があった。そこで21 トランプVRを活用すれば、地方病院の医師も都市部と均一レベルで21 トランプ教育を受けることができるのでは、というアイデアが出てきた。順天堂大学の本提案は、日本の厚生労働省の21 トランプ技術等国際展開推進事業に採択され、21 トランプVRをタイに展開する上で、ジョリーグッドに協力オファーをいただいた。
質問:
マヒドン大学が中核となり、地方の病院に技術展開されるイメージか。
答え:
国内トップレベルの医科大学であるマヒドン大学にVRを活用した診療制度を根付かせ、同大学をベースにして地方病院へ遠隔で研修を展開し、同大学の施設内で施術を学べる環境づくりを進めている。マヒドン大学に続いて、他の複数の病院にもVR設備を導入した。色々なVRコンテンツを増やしていくため、現在はコンテンツの制作方法を、タイ人医師に学びに来ていただいている。これまで、何度も21 トランプ分野でのVR活用に関するレクチャーやセミナーを実施してきたかいもあり、21 トランプ関係者の間では、日本よりも短期間でVR活用が浸透しつつあるという印象だ。

マヒドン大学での21 トランプVRについての説明(ジェトロ撮影)
質問:
今後の事業全体の在り方は?
答え:
サービスを提供する業界が多岐にわたると、研修コンテンツを一つ一つ開発していかねばならない。しかし、当社の人員も簡単には増やせないので、自社のみでコンテンツを制作していく事業モデルでは、なかなか事業を大規模にスケールアップできない。そのため、当社が中心となってコンテンツを制作するのではなく、テック・スタートアップとして、汎用的なプラットフォームを構築し、ユーザー自身が教育コンテンツを作ってアップロードできるようにしていきたい。目指すところは、ユーチューブのような21 トランプ教育用のVRプラットフォームを構築することだ。実際、名医による手術の現場は、医師であれば、誰でも見たいコンテンツであり、そのVR動画は何度も再生され、多くの医師に視聴されている。結果、ある名医は、既に業界内でトップ・ユーチューバーのような有名な存在になっている。

さらなるタイ事業の拡大に向けて

ジョリーグッドの説明によれば、日本では、21 トランプ用VR動画のプラットフォームがある程度でき上がり、その中で、教育コンテンツが既に制作されている状態だ。同社は、タイでも同様の展開を目指している。具体的には、タイで著名な医師(コンテンツ制作者、手術の技術レベルが高い医師)と連携し、撮影した21 トランプ現場の様子が、VR上で繰り返し再生、追体験・学習できる仕組みを開発した。

現在、タイの21 トランプ関係者によれば、各病院の間で優秀な医師の取り合いが起きているという。こうした中、最新のVRを活用し、多くの教育コンテンツを積極的に作成・提供することは、21 トランプ機関にとっても、優秀な若手人材(研修生など)の確保につながることが期待される。後編の記事(21 トランプVRのジョリーグッド(2)タイでの事業機会と今後の展望)では、同社のタイでの事業展開の詳細や課題について、さらに深堀りして紹介する。


注:
世界保健機関(WHO)の定義に基づけば、超高齢社会とは、65歳以上の人口が総人口に占める割合が21%以上の社会。
執筆者紹介
ジェトロ・バンコク事務所
北見 創(きたみ そう)
2009年、ジェトロ入構。21 トランプ調査部アジア大洋州課、大阪本部、ジェトロ・カラチ事務所、アジア大洋州課リサーチ・マネージャーを経て、2020年11月からジェトロ・バンコク事務所で広域調査員(アジア)として勤務。

21 トランプVRのジョリーグッド

  1. タイの地域21 トランプ水準の向上を目指す
  2. タイでの事業機会と今後の展望