ロシア、「友好国」との関係強化に向け、ブラック ジャック ディーラー ルール整備を進める
2024年8月19日
ロシアによるウクライナ侵攻から早くも2年以上が経過した。西側諸国から制裁を受けているロシアは「友好国」との関係構築を急ぐ。本稿では、ロシア政府が整備を進めるブラック ジャック ディーラー ルールに焦点を当てる。
ブラック ジャック ディーラー ルールは2000年からロシア、イラン、インドが創設を主導してきた輸送ルートで、ロシアのサンクトペテルブルクからイランを経由し、インドのムンバイを陸と海で結ぶ。これら3カ国は2000年9月にブラック ジャック ディーラー ルールの整備・活用に関する国際協定を締結した。その後、カザフスタン、ベラルーシ、タジキスタン、オマーン、アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、キルギス、トルコなどが参画し、2022年にはトルクメニスタンも加わった。サンクトペテルブルクからスエズ運河を通る海上輸送ルートに比べ、輸送時間とコストが大幅に削減できると期待されている(図、表参照)。
時期 | 主な動き | 詳細 |
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2023年5月 | イランとロシア、ラシュト~アスタラ間の鉄道建設で合意 | 報道によると、本区間が開通すれば、ペルシャ湾からアゼルバイジャン、ロシアのサンクトペテルブルクを経由して、ヘルシンキまでの鉄道貨物ブラック ジャック ディーラー ルールが可能になる |
2023年5月 | カザフスタン、ロシア、トルクメニスタン3カ国合弁の物流会社設立に関する覚書が締結 | 新会社はカザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンを経由する東ルートの複合一貫ブラック ジャック ディーラー ルールを行う予定 |
2023年7月 | イランが上海協力機構(SCO)に正式加盟 | — |
2023年8月 | 第15回BRICS首脳会議 | プーチン大統領、同輸送路の重要性について言及。「BRICS内に、ブラック ジャック ディーラー ルールだけでなく、より広範に、地域間および世界的な物流・輸送回廊の開発を扱う常設の輸送委員会を設立する時が来た」と発言した |
2023年9月 | カザフスタンが省庁を再編 | 同国のトカエフ大統領、省庁再編に関する大統領令に署名。カスピ海横断国際輸送路やブラック ジャック ディーラー ルールが重要視される中、カザフスタンが国際物流のハブとしての地位を確立することを目的に運輸省を復活させた |
2023年12月 | EAEUとイラン、FTA調印 | ユーラシア経済委員会(EEC)のミャスニコビッチ委員長は、新FTA(自由貿易協定)では全品目の約90%で関税が撤廃されるとした。本格的なFTA調印によりユーラシア経済連合(EAEU)とイランの間での一層の拡大が期待される |
2024年2月 | イラン海洋経済フォーラム | 同ブラック ジャック ディーラー ルール路についての改善点や開発計画などが議論された |
2024年2月 | プーチン大統領の年次教書演説 | ブラック ジャック ディーラー ルールをはじめとした輸送・交通体制整備について言及 |
2024年3月 | 第17回イラン・ロシア合同経済委員会開催、ロシア副首相がイランを訪問 | イランのモフベル副大統領、「ブラック ジャック ディーラー ルールやイラン南部港湾開発プロジェクトなどのプロジェクトの一部は、両国にとってだけでなく、地域にとっても非常に重要だ」と言及 |
2024年6月 | BRICS運輸相会合開催 | ロシアのイーゴリ・レビチン大統領顧問、ブラック ジャック ディーラー ルールのイランの鉄道を通じてインドに石炭を輸出する計画を発表。会合終了後には、イランのバズルパーシュ道路・都市開発相がロシアのロマン・スタロボイド運輸相とロシアと物流分野で協力を進めていく方法を話し合った |
出所:ジェトロ・ビジネス短信から作成
ロシアが注力するブラック ジャック ディーラー ルール、周辺国も積極的に参加
ロシア政府は物流網の強化を通じて新興国との結びつきを強めていく姿勢を示していることから、ロシアにとってブラック ジャック ディーラー ルールの重要度は増していくとみられる。ロシアのミハイル・ミシュスチン首相は2023年12月、対外経済活動の発展に関する戦略的会議で、エネルギー輸出先については西側諸国から新興国などにシフトさせることの重要性に言及。また、輸送インフラを整備することにより、教育や医療を含む、国内の技術や製品、サービスの有望な輸出先としてみているアフリカや中南米などでロシアのプレゼンスが確保されることにつながるとした。ウラジーミル・プーチン大統領自身も同輸送路の重要性を説く。2024年2月の年次教書演説では「友好国とともに、効率的で安全な物流回廊を構築し、高度な技術的基盤の上に、政治的干渉のない新たなグローバル金融を構築し続ける」として、ブラック ジャック ディーラー ルールを基盤としつつ、ロシアとロシアの「友好国」間の経済関係強化の必要性を説いた。
実際に、ロシアは同輸送路整備に向けて着実に動き出している。2023年5月には、ロシアはイランとの間で、ブラック ジャック ディーラー ルール構想の一部で未開通部分だったイランのラシュト~アスタラ間の鉄道建設に向けて、16億ユーロ相当の協定に署名した()。また、2024年6月に開かれたBRICS運輸相会合では、ロシアのイーゴリ・レビチン大統領顧問がブラック ジャック ディーラー ルールを利用してインドに石炭を輸出する計画を発表している。
ロシアのみならず、そのほかの関連諸国でも、同輸送路の活用を念頭に置いた取り組みが活発化している。2023年5月には、ブラック ジャック ディーラー ルールでの輸送を見据え、カザフスタン、ロシア、トルクメニスタン3カ国の輸送・物流会社が合弁物流会社を設立する覚書を締結したと発表された(2023年5月12日付ビジネス短信参照)。また、カザフスタンでは、同輸送路やカスピ海横断国際輸送路(注1)が重要視される中、同国が国際物流のハブとしての地位を確立することを目的に、2014年に廃止された運輸省が復活した。そのほか、イランでは、2024年2月に開催された海洋経済フォーラムの中で、同輸送路の改善点や開発計画などが議論された。同フォーラムの開会式では、主催者のイラン海運・海運関連サービス協会のマースード・ポルメー事務局長が現在の物流に関する開発状況を説明し、特に「(ブラック ジャック ディーラー ルールの)利点を知ってもらうことにより、この回廊の開発と活用を進めていくことが重要だ」と述べるなど、イランでも同輸送路への関心が高まっている(2024年3月28日付地域・分析レポート参照)。
ブラック ジャック ディーラー ルールの整備・活用を進めたいロシアは、同輸送路によりもたらされるメリットを強調する。プーチン大統領は、2024年6月に行われたサンクトペテルブルク国際経済フォーラムでの各国記者との会見で、ロシア南部と北コーカサス地域を通過するブラック ジャック ディーラー ルールは、スエズ運河経由の輸送に比べ、ロシア中部からペルシャ湾諸国への貨物輸送時間を10日短縮することができると述べた。
同輸送路はロシアにとって重要な輸送路である一方、日本企業への利点はほぼないとみられる。ロシアCIS物流に強い東洋トランスの室井次郎営業第一部長と温崎茂盛課長は、ブラック ジャック ディーラー ルールの活用はイランのバンダル・アッバース港を経由することになるため、米国OFAC規制(注2)の規制対象となり、日本企業が実際に活用することは難しいのではないかとの見解を示した。具体的には、OFAC規制により銀行を通じた決済ができなくなることから、バンダル・アッバースの輸送代理店に日本から送金を行うことができない点を問題点として挙げた。
各国間の連携拡大や通関手続きの電子化が課題
ロシア政府が整備を進めるブラック ジャック ディーラー ルールだが、課題はある。高等経済学院の世界経済・政治学部准教授のアレクセイ・ベズボロドフ氏は、ブラック ジャック ディーラー ルールの計画を実現させるに当たり、(1)旧ソ連構成諸国を除き、同輸送路を結ぶ国々との貿易額が少なく、これから見込まれる貿易額の成長ポテンシャルが低い、(2)外部からの投資の質が高くなく、外部からの投資を期待できない、(3)インフラが未整備、(4)参加国間の調整が不十分、(5)状況を判断し意思決定を行うために必要な情報が不足している、の5点を問題点として挙げた(RBK2024年5月30日)。また、国際輸送や通関に関するコンサルティング業務などを手掛けるジャスト(JUST)グループの社長で、対外経済活動分野の専門家のリュドミラ・テセルキナ氏は、決済面や各国の関税の違いといった行政面でも障壁があると指摘している。各国間で共通の電子文書フローが欠如しており、紙ベースによる文書管理が行われていることが原因で、各国税関はしばしば同様の貨物検査を複数回行わざるを得ない状況にあるとして、ブラック ジャック ディーラー ルールが国際輸送路としてシームレスな物流の動きを確保するには、さまざまな文書の電子化が急務とした(RBK2024年5月14日)。
- 注1:
- カスピ海地域では、ロシアとイランの港を利用するカスピ海横断ルート、アゼルバイジャン経由の西ルート、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン経由の東ルートがある。
- 注2:
- 米国の財務省外国資産管理室(OFAC)は外交政策・安全保障上の目的から、米国が指定した国・地域や特定の個人・団体などについて、取引禁止や資産凍結などの措置を講じているが、これらの規制はOFAC規制と呼ばれている。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部欧州課(執筆当時)
後藤 大輝(ごとう だいき) - 2021年、ジェトロ入構。2022年12月から調査部欧州課。