ブラック ジャック サイト
2024年11月14日
デンマークで近年、日本企業の投資が相次いでいる。中でもクリーンテック分野が目立つ。その理由は何か。ジェトロは9月10日、デンマーク外務省の投資誘致部門のブラック ジャック サイトのバネッサ・ベガ・サエンツ氏に、デンマークのビジネス環境についてインタビューを行った。
日本からの相次ぐ投資案件
三菱HCキャピタルは2024年4⽉、デンマークに⽴地する再⽣可能エネルギー(再エネ)⼤⼿のヨーロピアン・エナジーの株式20%を約7億ユーロで取得したと発表した。これによって欧州での⾜がかりを築き、グリーンエネルギー需要に応えるとしている。また、三井物産は2023年9⽉にヨーロピアン・エナジー傘下で太陽光発電とe-メタノール事業を⼿掛けるカッソ・ミドコ(Kasso MidCo)の株式49%を取得している。この出資を通じて三井物産は、年産能⼒4万2,000トンという世界最⼤規模で、再エネ由来の電力を活用して製造されるグリーン⽔素と、「バイオマス由来のグリーン二酸化炭素(CO2)」(三井物産プレスリリース)とを合成してe-メタノールの製造に踏み込む。東京ガスも2022年1⽉にデンマークに⼦会社を設⽴した上で、電⼒・⽔道などを⼿掛けるイービー(EWII)の孫会社に出資し、再エネ事業を開始した。
日本企業の進出はエネルギー供給⾯にとどまらない。ダイキン・ヨーロッパは2024年3⽉にデンマークの同業を買収することを発表し、デンマークでの⾜がかりを強化している。同社の熱供給ソリューションは脱炭素化に貢献するとデンマーク側は期待する。
デンマークの投資誘致戦略
デンマーク外務省は2024年6月、「2024~2027年投資誘致戦略」を発表した。デンマークの地盤を強化し、経済基盤を堅固にすることなどを戦略上、重視しており、4つの重点産業の1つにクリーンテック(注1)を位置付けている(注2)。加えて、2027年までに投資案件の半分をサステナブルな案件とすることを目標に掲げる。日本からの投資はこの戦略に合致したものとなっており、デンマークでの日本の投資の存在感が増す格好となっている。
サエンツ氏はインタビューの中で、デンマークは、クリーンテック企業に対して、需給の双方で魅力的なビジネス環境であることをアピールした。「海底の浅さと風の強さが魅力的な洋上風力発電の環境をつくり上げている。小国であることから、周辺国との接続性を重視してきた結果、大きな需要地のドイツへの供給も望める。(前出の)三井物産のケースのように、Power-to-X(注3)分野にも積極的だ。豊富な再エネを用いて、グリーン水素(注4)やそのほかのグリーン燃料を製造することが可能だ。これは航空分野やデンマークに集積する海運業へのニーズに応えるものとなる。デンマークの高度に発達したデジタル化社会を下支えするデータセンターから生じる熱を、家庭用の地域熱供給システムに活用する事例もある」と語る。
さらに今後、注⽬しているのが、⼆酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS、注5)分野だという。デンマークはCCS分野の先駆者となり、欧州のハブとなることを⽬指す。岩塩採掘跡のような地中の空洞など、ガスの圧⼊・貯留に最適な地層を有しており、地中でのCCS分野では最前線にあるという。魅⼒的なビジネスチャンスを前に、複数のプロジェクトが実際に進んでいる。
欧州の小国デンマークだが、再エネ、水素、メタノールなどのPower-to-Xなど、グリーンエネルギーに必要な要素がそろっているのが魅力となっている。政権交替に左右されない政府の一貫した「グリーン化」推進の政策も、確かなビジネス予見性を与えている。日本企業がこの小国に注目する理由はそうしたところにあるのだろう。
- 注1:
- エネルギーや環境に関する問題を解決する技術やサービス
- 注2:
- その他の重点分野は「ライフサイエンス」「農業・⾷品」「IT・デジタル化、ロボットおよび量子技術」
- 注3:
- 電気を使って水素、メタノールなどのグリーンな燃料を製造し、より持続可能なエネルギーを実現する技術のこと
- 注4:
- 再エネ由来の電力で水を電気分解し、二酸化炭素(CO2)を排出せずに作られる水素
- 注5:
- 排出されたCO2を他の気体から分離して貯留すること
- 執筆者紹介
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ジェトロ・デュッセルドルフ事務所 次長
福井 崇泰(ふくい たかやす) - 2004 年、ジェトロ入構。貿易投資相談センター対日ビジネス課、ジェトロ北九州、総務部広報課、ブラック ジャック サイト調査部欧州ロシアCIS課、イノベーション部などを経て現職。