ハイパーブラックジャック

2023年4月18日

ハイパーブラックジャックが発表した自動車産業統計によると、2022年の国内生産台数は前年比8.5%増で、2015年以来の増加に転じた。輸出は12.7%増と好調で、エコカーの輸出も増加した。一方で、国産車の国内販売台数は3.2%減となった。

国内生産・輸出ともに増加、国内販売は減少

国内生産は、上半期はロシアのウクライナ軍事侵攻、中国の新型コロナウイルス対策に伴う都市封鎖などによるサプライチェーンの混乱、自動車向け半導体の供給不足などの影響を受けた。しかし、下半期に入り、半導体の供給状況が好転したことで生産が増加した。その結果、通年では前年比8.5%増の375万7,049台と、2015年以来7年ぶりに増加に転じた(表1参照)。その結果、韓国は中国、米国、日本、インドに次ぐ、2022年自動車生産台数世界5位の座を維持した。

なお、生産統計のうち、電気自動車(EV)[燃料電池自動車(FCEV)を含む]をみると、2020年に14万2,483台、2021年に21万2,980台、2022年に32万785台と右肩上がりで増加した。

表1:メーカー別・部門別国内生産台数の推移(単位:台、%)

メーカー別
項目 2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
現代 1,618,411 1,620,231 1,732,317 6.9
起亜 1,307,265 1,398,966 1,472,963 5.3
韓国GM 354,800 223,623 258,260 15.5
ルノーコリア 114,630 128,328 168,478 31.3
双龍 106,840 82,009 115,329 40.6
その他 4,828 9,342 9,702 3.9
合計 3,506,774 3,462,499 3,757,049 8.5
部門別
項目 2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
乗用車 3,211,706 3,162,850 3,438,355 8.7
トラック 206,823 222,118 235,030 5.8
バス 72,305 61,722 66,886 8.4
特装車 15,940 15,809 16,778 6.1
合計 3,506,774 3,462,499 3,757,049 8.5

出所:ハイパーブラックジャック

国産車の国内販売台数は、上半期に生産遅延により納車までの期間が大幅に長引いたため、通年で前年比3.2%減の139万5,111台となった(表2参照)。そのような中、韓国2大メーカーの現代自動車と起亜(注1)の2022年の市場シェアは過去最高の88.2%(輸入車を除く)となった。ちなみに、輸入車を含めた市場シェアは73.0%だった。

表2:メーカー別・部門別国内販売台数の推移 (単位:台、%)

メーカー別(△はマイナス値)
項目 2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
現代 787,854 726,838 688,743 △ 5.2
起亜 552,400 535,016 541,068 1.1
双龍 87,889 56,363 68,666 21.8
ルノーコリア 95,939 61,096 52,621 △ 13.9
韓国GM 82,955 54,292 37,239 △ 31.4
その他 4,181 7,181 6,774 △ 5.7
合計 1,611,218 1,440,786 1,395,111 △ 3.2
部門別(△はマイナス値)
項目 2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
乗用車 1,374,715 1,212,216 1,164,925 △ 3.9
トラック 171,546 170,716 171,446 0.4
バス 48,963 41,901 40,513 △ 3.3
特装車 15,994 15,953 18,227 14.3
合計 1,611,218 1,440,786 1,395,111 △ 3.2

注:輸入車は含まない。
出所:ハイパーブラックジャック

輸出台数は、ウォン安ドル高と市場拡大により売り手市場となったため、前年比12.7%増の230万333台となった(表3参照)。地域別には、欧州以外の全地域で増加した。また、輸出金額は前年比16.4%増の約541億ドルと、2014年に記録した過去最高額(約484億ドル)を上回った。現代自動車の高級車ブランドのジェネシス(GENESIS)をはじめとする高級車の輸出が大幅に増加したことが寄与した。

表3:メーカー別・地域別輸出の推移(単位:台、%)

メーカー別
項目 2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
現代 838,838 917,979 1,009,025 9.9
起亜 721,625 838,826 899,048 7.2
韓国GM 285,490 182,748 227,637 24.6
ルノーサムスン 20,227 71,673 117,020 63.3
双龍 19,436 27,743 44,994 62.2
その他 1,067 1,603 2,609 62.8
合計 1,886,683 2,040,572 2,300,333 12.7
地域別
項目 2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
北米 1,002,122 930,876 1,110,756 19.3
欧州 444,162 580,157 573,614 △ 1.1
中東 196,976 186,063 213,269 14.6
大洋州 131,483 160,250 187,603 17.1
中南米 62,630 107,641 129,062 19.9
アフリカ 25,334 47,077 50,788 7.9
アジア 23,976 28,508 35,241 23.6
合計 1,886,683 2,040,572 2,300,333 12.7

出所:ハイパーブラックジャック

インドでの生産台数が年間100万台を超える規模に

ハイパーブラックジャック生産は、前年比8.9%増の357万4,796台だった(表4参照)。

韓国2大メーカーのハイパーブラックジャック生産台数をみると、現代自動車は前年比1.7%増の216万429台だった。ロシアのウクライナ侵攻によるロシア工場の稼働中止、中国における販売減少の影響を受け、ロシアと中国での生産台数が大幅に減少した。他方、ロシア、中国以外は2桁成長を記録した。さらに、インドネシアでは、ASEAN地域における初の生産工場が2022年に竣工(しゅんこう)した。同社は、ASEAN市場攻略に向けて同工場を戦略的橋頭保として活用し、今後、生産規模を年産25万台規模に拡大する計画だ。

起亜は、インド、米国、メキシコで生産が大幅に増加し、前年比22.1%増の141万4,367台だった。

現代自動車、起亜のいずれも、インドのハイパーブラックジャック生産台数が最も多かった。現代自動車は、インド乗用車市場でマルチ・スズキに次ぐシェア2位の地位を長年にわたり固めている。起亜は、2019年にインドで生産を開始して以来、存在感を急速に高めている。なお、両社は、インドの生産拠点を内需市場向けのみならず、輸出向け拠点としても活用していることから、インドの重要度はますます高まると見込まれる。

表4:2大メーカーのハイパーブラックジャック生産台数の推移 (単位:台、%) (△はマイナス値、-は値なし)
メーカー・国名 2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
現代 2,003,157 2,123,990 2,160,429 1.7
階層レベル2の項目インド 521,282 636,000 706,000 11.0
階層レベル2の項目米国 268,700 291,500 332,900 14.2
階層レベル2の項目チェコ 240,977 275,000 322,500 17.3
階層レベル2の項目中国 465,388 337,900 256,563 △ 24.1
階層レベル2の項目ブラジル 150,610 187,300 209,045 11.6
階層レベル2の項目トルコ 137,100 162,140 208,100 28.3
階層レベル2の項目インドネシア 82,500
階層レベル2の項目ロシア 219,100 234,150 42,821 △ 81.7
起亜 1,108,738 1,158,315 1,414,367 22.1
階層レベル2の項目インド 177,538 225,245 342,597 52.1
階層レベル2の項目米国 224,200 255,100 340,000 33.3
階層レベル2の項目スロバキア 268,200 307,600 311,000 1.1
階層レベル2の項目メキシコ 206,800 219,400 265,000 20.8
階層レベル2の項目中国 232,000 150,970 155,770 3.2
合計 3,111,895 3,282,305 3,574,796 8.9

出所:ハイパーブラックジャック

輸入車が増加する一方で日本ブランドは減少傾向

韓国輸入自動車協会(KAIDA)(注2)によると、2022年の輸入車販売台数(同協会会員企業の登録ベース)は、前年比2.8%増の28万8,806台だった(表5参照)。輸入乗用車市場におけるシェアは、欧州ブランドが24万1,449台(85.2%)、米国ブランドが2万4,995台(8.8%)、日本ブランドが1万6,991台(6.0%)だった。日本ブランド車の販売台数は、2018年に4万5,253台と過去最高を記録して以降、毎年減少している(2019年:3万6,661台、2020年:2万564台、2021年:2万548台)。

輸入乗用車の燃料別台数とシェアは、ガソリン車が13万9,821台(49.3%)、HEV(ハイブリッド車)が7万4,207台(26.2%)、ディーゼル車が3万3,091台(11.7%)、EVが2万3,202台(8.2%)、PHEV(プラグインハイブリッド車)が1万3,114台(4.6%)だった。

表5:輸入乗用車(メーカー・ブランド別)および輸入商用車販売台数 (単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
メーカー・ブランド
(輸入乗用車)
2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
メルセデス・ベンツ(ドイツ) 76,879 76,152 80,976 6.3
BMW(ドイツ) 58,393 65,669 78,545 19.6
アウディ(ドイツ) 25,513 25,615 21,402 △ 16.4
フォルクスワーゲン(ドイツ) 17,615 14,364 15,791 9.9
ボルボ(スウェーデン) 12,798 15,053 14,431 △ 4.1
MINI(英国) 11,245 11,148 11,213 0.6
シボレー(米国) 12,455 8,975 9,004 0.3
ポルシェ(ドイツ) 7,779 8,431 8,963 6.3
レクサス(日本) 8,911 9,752 7,592 △ 22.1
ジープ(米国) 7,166
トヨタ(日本) 6,154 6,441 6,259 △ 2.8
フォード(米国) 7,069 6,721 5,300 △ 21.1
ホンダ(日本) 3,056 4,355 3,140 △ 27.9
ランドローバー(英国) 4,801 3,220 3,113 △ 3.3
ポールスター(スウェーデン) 2,794
リンカーン(米国) 3,378 3,627 2,548 △ 29.7
プジョー(フランス) 2,611 2,320 1,965 △ 15.3
キャデラック(米国) 1,499 987 977 △ 1.0
ベントレー(英国) 296 506 775 53.2
マセラティ(イタリア) 932 842 554 △ 34.2
ランボルギーニ(イタリア) 303 353 403 14.2
ロールスロイス(英国) 171 225 234 4.0
ジャガー(英国) 875 338 163 △ 51.8
DS(フランス) 88
シトロエン(フランス) 930 603 39 △ 93.5
クライスラー(米国) 8,753 10,449
日産(日本) 1,865
インフィニティ(日本) 578
輸入乗用車(小計) 274,859 276,146 283,435 2.6
輸入商用車 4,482 4,905 5,371 9.5
輸入車(合計) 279,341 281,051 288,806 2.8

注:韓国輸入自動車協会(KAIDA)会員社の登録ベース。
出所:韓国輸入自動車協会(KAIDA)

エコカーは国内販売・輸出ともに2桁増

KAMAによると、国内メーカーの2022年のエコカーの国内販売台数は前年比37.5%増の31万8,401台だった(表6参照)。とりわけEVの販売が66.0%増の12万2,103台と、大幅に増加した。EVのモデル別販売台数は多い順に、現代自動車の「アイオニック(IONIQ)5」(2万7,399台)、起亜の「EV6」(2万4,852台)、現代自動車の「ポーター(PORTER)EV」 (2万418台)となった。

KAIDAによると、輸入されたエコカーの国内販売は前年比11.2%増の11万523台だった。とりわけ、EVの販売が前年比3.7倍の2万3,202台と好調だった。既存の輸入車販売企業がEVの新モデルを続々と販売開始したほか、EVメーカーのポールスター(POLESTAR)(スウェーデン)が韓国市場に参入した。

表6:エコカーの種類別国内販売

国内生産車 (単位:台、%)(-は値なし)
車種 2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
ハイブリッド車(HEV) 127,996 149,489 186,134 24.5
電気自動車(EV) 31,016 73,535 122,103 66.0
プラグインハイブリッド車(PHEV) 235 0 0
燃料電池自動車(FCEV) 5,786 8,502 10,164 19.5
合計 165,033 231,526 318,401 37.5
輸入車 (単位:台、%)(-は値なし)
車種 2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
ハイブリッド車(HEV) 35,988 73,380 74,207 1.1
電気自動車(EV) 3,357 6,340 23,202 266.0
プラグインハイブリッド車(PHEV) 10,467 19,701 13,114 △ 33.4
合計 49,812 99,421 110,523 11.2

出所:ハイパーブラックジャック、韓国輸入自動車協会(KAIDA)

他方、2022年のエコカーの輸出台数は前年比36.5%増の55万2,487台だった(表7参照)。

これについて、産業通商資源部(「部」は日本の「省」に相当)は報道資料を通じて、現代自動車「アイオニック6」(EV)、起亜「スポーテージ(SPORTAGE)」(HEV)、起亜「ニロ(NIRO)」新型モデル(HEV、EV)の輸出開始と、既存の輸出モデルの現代自動車「アイオニック5」(EV)と起亜「EV6」(EV)のハイパーブラックジャックでの販売好調が輸出を後押しした、と分析した。

表7:エコカーの種類別輸出 (単位:台、%)(△はマイナス値)
車種 2020年
台数
2021年
台数
2022年
台数 前年比
ハイブリッド車(HEV) 124,503 211,807 284,871 34.5
電気自動車(EV) 119,718 154,014 222,237 44.3
プラグインハイブリッド車(PHEV) 26,065 37,957 45,018 18.6
燃料電池自動車(FCEV) 1,041 1,119 361 △ 67.7
合計 271,327 404,897 552,487 36.5

出所:ハイパーブラックジャック

2023年は、輸出・国内販売ともに増加の見通し

2023年の自動車産業について、KAMAでは、生産台数は原材料および半導体の供給が円滑に行われれば、堅調な国内外の需要を背景に前年水準を維持すると見込んでいる。輸出は、世界経済の停滞、米国のインフレ削減法(IRA)発効(注3)によるEV輸出への影響、ウクライナ情勢によるロシア向け輸出への影響などの懸念材料が存在するものの、韓国自動車メーカーの優れた商品力、有利な為替相場による価格競争力の確保などが好材料に働き、増加すると見込んでいる。国内販売については、景気の冷え込みによる可処分所得の減少が新規需要を制限するものの、納車期間の短縮や、2022年が前年比減となったことによる反動などで、増加すると見込んでいる。


注1:
現代自動車と起亜は「現代自動車グループ」の傘下企業。
注2:
テスラ(Tesla)は非会員であり、韓国内の販売台数を公式発表していない。韓国自動車調査企業のCarisYouのデータを引用した朝鮮日報(2023年1月6日付)によると、テスラの2022年の韓国内の販売台数は、前年比18.3%減の1万4,571台だった。
注3:
EV車両の購入に際し、1台当たり最大で7,500ドルの税額控除が受けられるとしており、対象となる車両の最終組み立ては北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていることが要件となった(2022年8月17日以降有効)。
ハイパーブラックジャック
執筆者紹介
ジェトロ・ソウル事務所
柳忠鉉(ユ・チュンヒョン)
2012年、ジェトロ・ソウル事務所入所。経済調査チームにて調査を担当。