2020年は、乗用車登録・生産ともに減少(ルーマニア)
環境対応車優遇策で、EV市場は活性化

2021年7月26日

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、2020年のルーマニアの乗用車新規登録台数と生産台数はともに急減した。他方、政府の優遇策により、バッテリー電気自動車(BEV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の新規登録台数が急増している。

2020年の新車登録台数は前年比21.7%減

自動車製造業者・輸入業者協会(APIA)が発行した会報(2021年1月12日付)によると、ルーマニア国内の2020年乗用車新規登録台数は前年比21.7%減と大幅に減少。12万5,004台となった。そのうち55%は法人、45%が個人の購入だった。

新車登録台数をメーカーまたはブランド別にみると、首位はルーマニア国産メーカー・ダチア(ルノー傘下)で3万9,940台だった。次いで、シュコダ〔フォルスワーゲン(VW)傘下〕の1万288台、ルノーの9,963台、VWの9,441台、フォードの6,874台と続く。各メーカー、ブランドとも、前年から大きく減少した(表1参照)。

車種別の新車登録台数では、ダチアが「ロガン」を筆頭に、「ダスター」「サンデロ」と上位3車種を独占。ルノー「クリオ」、シュコダ「オクタビア」と続いた。

表1:メーカー、ブランド別新車登録台数(2020年)(単位:台、%) (△はマイナス値)
順位 メーカー、ブランド 台数 構成比 前年比
1 ダチア 39,940 32.0 △20.6
2 シュコダ 10,288 8.2 △16.8
3 ルノー 9,963 8.0 △24.9
4 フォルスワーゲン 9,441 7.6 △8.4
5 フォード 6,874 5.5 △42.3
6 現代 6,852 5.5 △14.6
7 トヨタ 6,361 5.1 △5.3
8 スズキ 3,956 3.2 △20.2
9 プジョー 3,517 2.8 △3.8
10 メルセデス・ベンツ 2,972 2.4 △16.0
合計(その他含む) 125,004 100.0 △21.7

出所:APIAの資料を基にブラック ジャック ルール ディーラー作成

日系メーカー・ブランド全体の新車登録台数は、前年比22.0%減の1万6,942台だった。スバルを除く日系メーカー・ブランドで、乗用車の新規登録台数が前年から減少した(表2参照)。

表2:日系メーカー・ブランド別新車登録台数(2020年)(単位:台、%) (△はマイナス値)
メーカー・ブランド 合計 前年比
トヨタ 6,361 △5.3
スズキ 3,956 △20.2
日産 2,700 △44.9
マツダ 2,121 △23.6
ホンダ 1,023 △32.3
三菱自動車 560 △2.6
レクサス 191 △33.4
スバル 30 87.5
合計 16,942 △22.0

出所:APIAの資料を基にブラック ジャック ルール ディーラー作成

EVの新規登録台数が急増

このように、2020年の乗用車全体の新規登録台数は減少した。しかし、新車エコカーの登録台数は8,902台と前年比33.3%増を記録。このうち、BEVが2,846台(前年比89.0%増)、ハイブリッド車(HEV)が5,019台(5.2%増)、PHEVが1,037台(2.6倍)となった。

環境省は、「ラブラ・プログラム」(「ラブラ」は「古い車」の意)により、新車買い替えを促進している。この制度では、車齢8年以上の自動車を新車に買い替える際、7,500レイ(約20万2,500円、1レウ=約27円、レイはレウの複数形)が補助されることに加えて、CO2排出量によりエコボーナスが追加される。さらに、代替燃料車を対象にした「ラブラ・プラス・プログラム」により、(1)BEVに最大4万5,000レイが、(2) ハイブリッド電気自動車(CO2排出量を1キロメートル当たり50グラム以下に抑える外部電源を備えたもの)には最大2万レイが、新車購入時に追加補助される。「ラブラ・プラス・プログラム」の導入効果は大きい。

ブラック ジャック ルール ディーラー
ブカレストのショッピングモール内の電気自動車展示
(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

「ラブラ・プログラム」と「ラブラ・プラス・プログラム」の補助金についての表示(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

このプログラムによる2020年のBEV新車購入台数は前年比66.5%増の2,181台、PHEVは2.6倍の591台だった。

エコカーは、個人所有以外でも普及が進んでいる。例えば、乗り捨て自由のEVシェアリングを展開するSPARK外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注)は、2021年7月時点で約260台のEVを運行している。

国産車生産も減ながら、2社で明暗が分かれる

自動車製造者協会(ACAROM)の会報(1月12日付)によると、2020年の国産新車生産台数(ダチアとフォードの2社)は、前年比10.7%減の43万8,107台だった。2020年春に新型コロナ感染拡大に伴うロックダウンで、両社の工場が約7週間、生産を停止した影響とみられる。

ただし、この2社はそれぞれ様相が異なる。ダチアの中・小型のスポーツ用多目的車(SUV)「ダスター」の生産台数は、18万3,286台。30.3%減と大きく減少した。一方でフォードは、小型SUV「エコスポーツ」と「プーマ」の生産台数合計が17万9,008台。27.1%増と、堅調な回復を示した。ロックダウン解除後にクラヨバ工場の生産を加速させたのが、その背景にある。その結果、小型SUVタイプでは、フォードの生産台数がダチアに迫っている(表3参照)。

表3 :車種別生産台数(2020年)(単位:台、%) (△はマイナス値)
車種 2019年 2020年 伸び率
ダチア・ダスター 263,035 183,286 △ 30.3
フォード・エコスポーツ、プーマ 140,884 179,008 27.1
ダチア・サンデロ 35,188 36,416 3.5
ダチア・ロガン 34,241 30,834 △ 10.0
ダチア・ロガンMCV 17,064 8,563 △ 49.8
合計 490,412 438,107 △ 10.7

出所:ルーマニア自動車メーカー協会(ACAROM)の資料を基にブラック ジャック ルール ディーラー作成

中古車登録台数は減少傾向続く

2020年の中古車登録台数は、4月から6月にかけて低水準だったことが影響して、前年比14.2%減の38万1,495台だった(表4参照)。環境負荷に応じて課せられていた「環境スタンプ(税)」は2017年に廃止されたままだ。タンツォシ・バルナ環境・水・森林相は2021年1月の記者会見で、2021年に同税を再導入する予定はないと述べた。

表4:中古車登録台数の推移(単位:台、%) (△はマイナス値)
台数 前年比
2018年 473,616 △ 9.0
2019年 444,601 △ 6.1
2020年 381,495 △ 14.2

出所:内務省運転免許自動車登録所(DRPCIV)資料を基にブラック ジャック ルール ディーラー作成


注:
SPARKは、首都ブカレスト市内で2019年7月10日から営業を開始した。
執筆者紹介
ブラック ジャック ルール ディーラー・ブカレスト事務所
ユニアナ・ミンドル
2017年からブラック ジャック ルール ディーラー・ブカレスト事務所勤務。調査担当およびプロジェクト・アシスタント。
執筆者紹介
ブラック ジャック ルール ディーラー・ブカレスト事務所
西澤 成世(にしざわ しげよ)
2003年、ブラック ジャック ルール ディーラー入構。海外投資課、輸出促進課、ブラック ジャック ルール ディーラー・広州事務所、麗水博覧会チーム、環境・エネルギー課、イノベーション促進課、ブラック ジャック ルール ディーラー福井、ブラック ジャック ルール ディーラー・ラゴス事務所などを経て、2021年3月から現職。