ポーランドのECブラック ジャック オンライン事業者、緑茶など日本製品を輸入販売
パッケージデザインなどを現地消費者にアピール

2020年3月11日

近年、ポーランドではオンラインショッピングの利用率(2019年にオンラインショッピングを使用した16~74歳の人数/16~74歳の人口)が上昇傾向にある。ユーロスタットによると、ポーランドでは過去10年間、毎年増加しており、2019年のオンラインショッピングの利用率は54%と、2010年の29%から2倍近くになった。

また現在、ポーランドでは日本食を中心に日本製品の人気が高く、ワルシャワ市だけで200店舗ほどの日本食レストランがあるといわれている。加えて、薬局などでは日本製の化粧品が売られていることも多い。

本記事では、日本製品の輸入販売や、日本製品を主に取り扱う越境電子商取引(EC)ブラック ジャック オンラインを運営する「KOKORO SMAKI JAPONII」(以下、KOKORO)の社長であるサンドラ・ステファニク氏に、ポーランドでの日本製品の売れ行きや評判についてインタビューした(1月27日)。

顧客のほとんどはポーランド人

質問:
会社概要について。
答え:
KOKOROは、日本茶(緑茶、煎茶、番茶、玄米茶など)を中心に様々な日本製品を扱っているオンラインストアである。日本製品を扱う事業を行おうと思ったきっかけは、日本製品や日本のことが好きだったこと、日本の食文化が特別だと感じていたから。2006年に個人事業主として設立し、2008年に有限会社とした。現在の従業員数は5人で、会社所在地はワルシャワ市。小売店やケータリング会社への卸売販売や、BtoC(企業と消費者の取引)のECブラック ジャック オンラインの運営などを行っている。
KOKOROは、製品を日本の生産者と輸出商社を通じて輸入している。設立当初から日本茶を取り扱っており、有限会社になってからは日本茶以外の日本製品も扱うようになった。しかし、冷凍コンテナを持っていないため、輸入しているのはドレッシングやインスタントフード、スイーツ、すしの材料(しょうゆ、ワサビ、コメ)、日本製飲料など、ドライコンテナで扱える製品である。
また、扱っている日本製品は中・高品質のものが多く、値段も高くなるが、それでも購入する顧客は多い。
質問:
ポーランド市場で日本製品を売るためにはどうすればいいか。販売ターゲットは誰になるのか。
答え:
ポーランドには、ドイツにあるような大きな日本人コミュニティーがないので、ターゲットはポーランド人になる。そのため、ポーランド市場で日本製品を販売するのであれば、ポーランド人の好きなものを、ポーランド人パートナーと相談しながら提供していくのが良い。
また、日本人が日本からポーランド人向けのECブラック ジャック オンラインを経営することは難しいと感じる。ポーランド人の好む味やパッケージは、ポーランド人が一番理解しているため、日本人が日本で人気のものをポーランドへ送っても、あまり売れない可能性がある。
質問:
人気商品は何か。
答え:
創業当初から扱っているのは緑茶である。緑茶には創業当初から顧客がついており、売り上げは今も伸びている。ほかにも、日本の菓子(特に抹茶入りのもの)やすし用品も人気が高い。
なお、日本製品を広めるために、試食イベントに参加することや、日本関連のイベントに積極的に参加して、日本製品の知名度を高め、製品を気に入ってもらい、顧客を獲得していった。
質問:
取り扱う商品を選ぶ際の基準は。
答え:
KOKOROはいつも新たな日本製品を探しており、いいものを提供し続けてようと努力しているが、商品を選ぶ際は、価格に見合う質の違いが消費者に納得してもらえる製品を選んでいる。日本では日々さまざまな新製品が生まれているが、それをポーランドでも販売するように心掛けている。
また現在、欧州のトレンドはビーガン、自然志向、ゼロウェイスト(注1)、ショートラベル(注2)である。これらは特に若者の間で人気になっており、今後はこれらのトレンドに適応した製品も取り扱っていきたい。

賞味期限が輸入の足かせになることも

質問:
日本製品の魅力を教えてほしい。
答え:
日本製品は、特にパッケージが面白く、その点でほかの国の製品と全く違うといえる。日本のパッケージデザインのレベルは高く、ポーランド人もそれを高く評価している。アニメキャラが描かれているパッケージ、かわいいパッケージ、日本の伝統的なデザインやカリグラフィー(注3)が描かれているパッケージが特に人気だ。
ポーランド人は日本製品を楽しむ際、まず見た目を楽しみ、そのあとに味や香りを楽しむ。しかも、その味は顧客を落胆させることはなく、日本製品を食べることをまるで冒険のようだと思っている。
一方、日本製品はパッケージが変わるのも早く、消費者は同じ製品だと認識できないこともあり、意図せず、獲得した顧客が離れていってしまうこともある。ただし、日本製品はパッケージの変化も含め、変化が早くダイナミックで、常に新しい。これは、常に新しいものを求める若者のニーズに合っている。
質問:
日本製品の課題は何か。
答え:
特に創業当初は、賞味期限の問題で苦労したことが多かった。ポーランドのスーパーマーケットでは陳列の際に、6カ月以上の賞味期限を条件にしていることが多い。しかし、日本製品の賞味期限は短いものが多い。日本からの輸送、通関、陳列を経ると、賞味期限が2~3カ月しか残っていないようなことも多く、そのために販売できないことも多かった。小売店向け、ケータリング向けの商品は、賞味期限の問題のため、大量にストックしておくことができない。
ただし、最近は欧州向けの製品を製造する日本企業は、賞味期限を長く設定しないと流通させることが難しいことを理解するようになってきている。
また、価格が高いことも問題だ。ポーランドで売られているゼリーは、高くても6ズロチ(約168円、1ズロチ=約28円)程度であるにもかかわらず、日本製のゼリーは14ズロチほどする。そのため、ポーランド人はあまり日本のゼリーを買おうとはしない。ただし、日本産のグレープ味のものはポーランド人に好まれるので、多少値段が高くてもよく売れる。
ほかにも、特にコメ製品などは、韓国や中国など、他のアジアの国も類似品を販売しており、日本製品は他国の製品と比べて高価なことが多い。また、日本製品は品質が高いものの、他国の製品の品質も近年上がってきている。ポーランドも経済成長に伴い、高品質な製品に対して高い額を払うことに抵抗がなくなってきているが、もし類似した製品で、品質がほとんど変わらないのであれば、消費者は安い他国産のものを買ってしまうだろう。
質問:
ポーランドへの輸入の際に問題はあるか。
答え:
輸入の際、ポーランドの検疫で問題が起こることが多い。日本から輸入する際に必要な書類や手続きなどについて、ポーランドの検疫所にノウハウがないこともある。さらに、動物性食品を欧州に輸入する際の検疫手続きは煩雑だ。
生産者が発行する証明書は、スムーズな輸入の一助にはなるが、証明書があっても検疫をスムーズに通過しないことがあり、時間を要することもある。また、原材料表などを求められた際、生産者側にとって、それは企業秘密なため、提出を拒否し、その結果、ポーランドに輸入できなかったという事例もある。
質問:
日EU経済連携協定(EPA)がビジネスに与える影響はあるか。
答え:
日EU・EPAのおかげで、多くの品目の関税が減免され、ビジネスがしやすくなった。例えば、ノリなどの一部の商品は価格が下がり、新規顧客も今後見込まれる。
しかし、同EPAの活用で下がるのは関税のみであり、日本からの輸送費や燃料代は安くはならず、同EPAだけでは十分ではないと感じている。加えて、同EPAの活用にあたっては原産地証明などが必要で、日本のサプライヤーから材料の原産性を裏付ける資料を入手する必要がある。
また、同EPAが発効し、関税が撤廃されても、日本製品が今なお高価なことは変わりない。日本製品について、よく知らないポーランド人も多い。ポーランド人の顧客に日本製品を知ってもらい、買ってもらうためには、各種プロモーションイベントなどに参加して、日本製品をよりアピールしていくことが重要だ。

注1:
ごみ、廃棄物をださないこと。
注2:
添加物などが少ない食品。
注3:
西洋や中東などにおける、アルファベットなどの文字を美しく見せるための手法。
ブラック ジャック オンライン
執筆者紹介
ジェトロ・ワルシャワ事務所
楢橋 広基(ならはし ひろき)
2017年4月、ジェトロ入構。ブラック ジャック オンライン調査部中国北アジア課を経て、2019年8月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ワルシャワ事務所
ムロチェク・イヴォナ
1997年からジェトロ・ワルシャワ事務所で勤務。農林水産物・食品に関する事業・調査などを担当。