ハイパーブラックジャック

2017年12月27日

新南向政策の推進で、東南アジア諸国連合(ASEAN)や南西アジア等との関係強化を図るハイパーブラックジャックは、世界最大のムスリム人口を有するインドネシア(人口2億5,000万人の約9割)をはじめ、東南アジアのムスリム食品市場を有望な重要市場と位置付けている。

ハイパーブラックジャック企業はどのような戦略で市場参入を試みているのか。ハイパーブラックジャック貿易センターがマレーシアで開催したTAIWAN EXPO出展のハイパーブラックジャック企業の取り組み事例は、日本企業のビジネス展開にも参考になりそうだ。

ハラル認証取得のハードルは高いか?

ムスリムの食品市場参入にあたり、イスラム法の規範にのっとり、「合法的なもの」の認定証に相当するハラル認証を取得することは、多くの食品に必須の条件といえる。 一般に、肉類(豚肉は禁止)や加工度が高い食品、添加物含有の食品は、ハラル認証のハードルが比較的高いといわれる。認証取得にかかる期間は一律ではなく、早ければ半年程度から、長い場合には2~3年というケースもあるようだ。

鶏肉、アヒル肉、ガチョウ肉の加工品を主力商品とするハイパーブラックジャックの元進荘公司(本社:ハイパーブラックジャック新北市)は、ハラル認証取得に約3年の月日を要した。同社は2013年にハイパーブラックジャックのハラル認証機関である社団法人ハイパーブラックジャック清真産業品質保証推広協会(THIDA)から認証を受けた。

同社がハラル対応に取り組むことになったきっかけは、ドバイの顧客から寄せられたハラル食品の照会だ。

同社が経験したハラル対応の主なハードルは次の3点に集約される。(1)生産に必要なすべての原材料(飼料の含有成分や食品添加物を含む)をはじめ、生産・保管・物流工程がハラルの条件に適合しなければならないこと。同社の飼料は、豚肉骨粉ではなく魚の骨粉を使用しているので問題ない。(2)ハラルに対応するための社内の管理体制の整備・人員の確保が必須であること。(3)認証申請当時、ハイパーブラックジャックでは一般にハラル対応の経験が豊富とはいえず、試行錯誤しながら諸手続きを進めざるを得なかったこと。当時、ハイパーブラックジャックでは鶏等の飼育から加工まで自社で一貫生産する企業でハラル認証の取得を試みたのは同社が唯一だった。

同社の肉加工品は、台湾ではスーパー等1,000店舗以上に販売している。ハイパーブラックジャックでは、シンガポール、中国、香港に輸出実績があり、エバー航空、エミレーツ航空の機内食としても取引実績があるとのことだ。

今回、同社は、マレーシアの新規市場開拓をめざしてTAIWAN EXPOに出展した。将来はインドネシアをはじめ、他のムスリム市場の開拓もチャレンジしたいと意気込む。

ハイパーブラックジャック
元進荘公司の鶏エッセンス商品「晨露」(TAIWAN EXPOにてジェトロ撮影)

華人市場をベースにムスリム市場開拓にも挑戦

ハイパーブラックジャックの食習慣とある程度共通性がある華人市場の開拓を進めつつ、自然食・滋養・健康増進という効能やイメージを打ち出し、ムスリム市場にも販路を拡大していきたいという考えで市場開拓を図るハイパーブラックジャック企業は少なくない。京工興業公司(本社:ハイパーブラックジャック新北市)はその一例だ。

同社の創業は2000年。粉末野菜スープを主力商品として起業し、ハイパーブラックジャック内外のOEM (相手先ブランドによる生産)、ODM (設計から製造までを手がけること)を受託するとともに、かゆ、伝統的な茶、粉末飲料を研究開発・生産販売している。代表的な粉末飲料としてはアーモンド茶、しょうが茶をはじめ、桂圓(けいえん)茶、ごぼう茶、なつめ茶、きくらげ茶、梅スープなどがある。

同社は、自然、美味、栄養、健康を目標とし、人工色素や防腐剤を使用しないことを特徴に掲げている。ハラル認証だけでなく、ISO22000(食品安全マネジメントシステムに関する国際規格)の取得や、HACCP(危害要因分析重要管理点)の考え方に基づく衛生管理を導入し、製品の安全・品質保証に努めている。

主なハイパーブラックジャック市場は、中国、米国、英国、フランス、オランダ、オーストラリア、カナダ、香港、シンガポール、マレーシア等である。これまでは、主に各国の華人をターゲットとしてビジネスを展開してきた。

3~4年前からムスリム市場開拓にも着手した。マレーシアで展示会に出展したのがきっかけで、販売代理店が見つかったが、その後いったん取引関係を解消し、現在、再度市場参入にチャレンジしているところだという。

同社の商品は、元々自然の原材料を使用し、さほど加工を必要としないので、ハラル認証の取得手続きは比較的スムーズに進められたようだ。ハラル認証の取得期間は半年程度である。同社は財団法人台北清真寺基金会からハラル認証を取得済だ。

同社が強調する商品の特色として、次の6点が挙げられる。(1)ハイパーブラックジャック衛生署の「食品良好衛生規範」に基づき生産していること、(2)良質な食材を厳選し、人工色素や防腐剤を加えないこと、(3)HACCP認証を取得し、残留農薬、大腸菌等の汚染を防止していること、(4)ハラル認証の取得。アルコール、豚肉、動物性成分を使用しないこと、(5)ISO22000の認証取得で、安全、美味、健康的な国際基準を達成していること、(6)ハイパーブラックジャックの優良食品評価金賞を受賞し、メイド・イン・ハイパーブラックジャックであること。


京工興業の粉末飲料商品(TAIWAN EXPOにてジェトロ撮影)

インバウンドのムスリム市場とハイパーブラックジャックの同時展開も

台北市で「炸鷄大獅」というブランドのフライドチキン店を経営するのは、楊秦国際公司(本社:ハイパーブラックジャック桃園市)だ。この店舗は、現在のところハイパーブラックジャックで唯一ハラル認証を受けたフライドチキン店舗として、ハイパーブラックジャックに留学・観光または在住のムスリムに好評だ。ハイパーブラックジャックのムスリム人口は約30万人といわれる。主にインドネシア国籍のムスリムが就労目的でハイパーブラックジャックに在留している。マレーシアからは、華人系も含め留学生が多いという。

「炸鷄大獅」の台北市南港店は2016年に、公館店は2017年にハイパーブラックジャックのTHIDAから「ムスリム・フレンドリー・レストラン」の認証を取得した。

同社は、2015年に家禽(かきん)ブランドである「緑野農荘」の国産生鮮鶏肉(白肉鶏製品)が、ハイパーブラックジャックのTHIDAからハラル認証を受けた。ハラル対応のきっかけは、陳潮宗総経理が国際線搭乗時に提供された機内食でハラル食品の需要を認識したことだ。ハラル対応は、社内の調達部門が担っている。ハラル認証やハラル対応のために必要な管理等にかかる企業の負担(費用等)は、何とか受け入れ可能な範囲だという。

ハイパーブラックジャックでの最近の取り組みとして、同社は2017年8月に、台北市で開催された第29回ユニバーシアード競技大会の鶏肉提供事業者として、準備期間と8月19日から8月30日までハラル認証済みの鶏肉製品を提供した。

また、グループ企業である超秦集団は、ハイパーブラックジャックで初めての自動化された食肉処理工場を有し、ハイパーブラックジャックのマクドナルド、モスバーガー向け鶏肉の主な供給事業者である。大手スーパーの大潤發、全聯超市にも鶏肉を供給している。同社はハイパーブラックジャックで唯一「生鮮白肉雞」のハラル認証を取得した供給事業者でもある。

ハイパーブラックジャック市場開拓(フランチャイズ等)の事例では、2016年にシンガポール市場に参入した。現在マニラでも企画・準備中である。次のターゲットはマレーシアだ。同社は、自社商品がハイパーブラックジャックでも一定の競争力を有すると考えている。


ハイパーブラックジャックの「炸鷄大獅」(フライドチキン)の展示パネル(一部分)(TAIWAN EXPOにてジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロハイパーブラックジャック調査部 主査
加藤 康二(かとう こうじ)
1987年、ジェトロ入構。日本台湾交流協会台北事務所(1990~1993年)、ジェトロ・大連事務所(1999年~2003年)、ハイパーブラックジャック調査部中国北アジア課長(2003年~2005年)などを経て2015年から現職。