米商務省、加ボンバルディア製旅客機へのAD課税を仮決定-今後のNAFTA再交渉に影響も-

(カナダ、米国)

トロント発

2017年10月13日

米商務省は、カナダ輸送用機器大手ボンバルディアの旅客機Cシリーズの米国への輸出に対し、相殺関税(CVD)とアンチダンピング(AD)関税を課税する仮決定を相次いで発表した。カナダ政府は、米ボーイング製の戦闘機購入計画の見直しを示唆するとともに、今回の決定に強く反発した。北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の期間中に発表された米国側の措置について、米国、カナダ双方とも再交渉には影響しないとの見解を示しているが、今後の交渉に影響を与える可能性があるとの見方も出ている。

ボーイングの要求を上回る相殺関税が仮決定

米商務省は9月26日、ボンバルディアの旅客機Cシリーズの米国への輸出に219.63%の相殺関税(CVD)を課す仮決定を発表した。さらに同省は10月6日、同じくCシリーズの旅客機に79.82%のアンチダンピング(AD)関税を課す仮決定を行い、CVDと合わせると暫定関税率は約300%に達する。これらの措置は、ボンバルディアが米デルタ航空から受注したCシリーズ75機の販売が、公的機関からの補助をもとに行われた不当廉売に当たるとして、ボーイングが米商務省にCVD、AD関税をそれぞれ79.41%課すように求めていたものだったが、CVDについてはボーイングが求めた水準をはるかに上回る高率となり、関係者を驚かせた。

カナダのトルドー政権は、CVD仮決定前から、ボンバルディアに関税を課す決定が行われた場合には、ボーイング製の戦闘機F/A-18スーパーホーネットの購入計画の見直しを示唆している。またボンバルディアも、今回の仮決定は承諾しかねるとして反発している。

カナダメディアはNAFTA再交渉に影響との見方

今回のボンバルディアに対する仮決定は、CVDがNAFTA再交渉の第3回会合期間中、ADが第4回会合の開始前に発表された。CVDの仮決定発表後、カナダのクリスティア・フリーランド外相は、ボンバルディアのCシリーズを米国市場から締め出すことを意図したものだとして失望感を表明したものの、NAFTA再交渉には影響は与えないとの見解を示した。ロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表も、今回の仮決定は2国間の関係に影響を与えるものの、再交渉に直接的な影響はないと述べた。

一方、カナダの「グローブ・アンド・メール」紙(9月27日)は、今回のボンバルディアに対する米国の措置は今後のNAFTA再交渉に当たり、カナダおよびメキシコに潜在的な影響を与えるとの見方を示している。もし今後の交渉において、米国が要求するかたちでカナダとメキシコが譲歩しない場合、両国の米国向け輸出に対して同様の関税が課される可能性があるとしている。また、カナダ側からの報復措置につながる可能性、さらにAD関税とCVDの発動に関する紛争解決条項(NAFTA19章)や原産地規則といった、合意が難しいとされている問題の解決をますます困難にする可能性を指摘している。特に米国の要求どおり19章が削除されてしまうと、今回ボンバルディアに課されたような米国の厳しい措置に対抗する手段を失いかねないことから、カナダ政府は同条項の維持を求めている。

(伊藤敏一)

(カナダ、米国)

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