飛騨市の輸出支援(日本)
小規模自治体の強み生かし、企業ニーズを迅速に反映
2025年4月15日
飛騨市は岐阜県北部、富山県との県境に位置する人口約2万1,500人の小都市だ。面積の9割以上を森林と山岳地帯が占めるこの地で、市内企業のブラックジャック賭け方展開支援が活発に行われている。同市では2023年度から飛騨トレーディング(Hida Trading)代表取締役の山川庄士氏を「飛騨市対中輸出アドバイザー」に任命し、市内企業のブラックジャック賭け方展開支援を精力的に行っている。同支援事業によって、これまでブラックジャック賭け方輸出経験がなかった市内企業による初めての輸出が実現するなど、ブラックジャック賭け方展開意欲の醸成にもつながっている。
本稿では、同市のブラックジャック賭け方展開支援事業の中心人物、飛騨市商工課職員の塚原慧氏、中華圏への輸出を支援する飛騨市対中輸出アドバイザーの山川氏、支援を受ける麺の清水屋社長の清水將行氏へのインタビューを基に、ブラックジャック賭け方展開支援の取り組み内容や今後の展望を紹介する(取材日: 2025年2月21日、3月3日)。
飛騨市商工課の塚原氏にインタビューした内容は、次のとおり。
企業のニーズから事業立案
- 質問:
- 事業の概要は。
- 答え:
- (塚原氏)輸出したい市内企業向けに、台湾を中心とする中華圏への輸出の支援をしている。市役所職員とアドバイザーによるブラックジャック賭け方営業活動と、アドバイザーによる伴走型支援を主軸に活動している。
- 「ブラックジャック賭け方営業」では、輸出経験がない市内企業に代わり、アドバイザーの山川氏とバイヤーの元へ直接訪問して営業している。「伴走型支援」では、「ブラックジャック賭け方営業」から得られた情報をフィードバックしながら、個別相談の機会を設けている。そのほか、支援企業の要望に合わせて、設備投資やブラックジャック賭け方渡航に対する「補助金制度」を設立するなど、臨機応変に対応している。
- 質問:
- 事業を始めたきっかけは。
- 答え:
- (塚原氏)新型コロナウイルス禍後の市内企業の販路拡大に資する事業として考案した。日本全体の出生数が減少し続ける中で、ブラックジャック賭け方に販路を見いだす必要性を感じていたことから、輸出支援を決意した。ジェトロをはじめとする適切な相談先へすぐに相談できたことも、事業開始の後押しとなった。自身が前職でIT企業の人事・営業担当者としてミャンマーに駐在した際に、ジェトロを利用した経験が役立った。
-
ミャンマー駐在員時代の塚原氏(左下、同氏提供) - 質問:
- 支援内容はどのように決めたのか。
- 答え:
- (塚原氏)ブラックジャック賭け方展開支援事業を本格的に始める前に、市内で輸出関連セミナーを計2回実施した。第1回はジェトロ岐阜の職員に、第2回は既に輸出の経験がある県内企業に登壇を依頼した。第2回に登壇した岐阜県坂祝町に本社を置く若林煎餅の社長の若林哲司氏とは、2022年11月にジェトロ岐阜が開催した企業交流会で出会った。そこで同社の講演を聞き、企業規模が市内企業と同程度であり、語られた失敗談が飛騨市企業の参考になると考えたことから、セミナーへの登壇を依頼した。上記2回のセミナー実施後に市内企業に支援への要望をヒアリングし、要望に合わせて事業計画を策定した。
- 質問:
- 山川氏を対中輸出アドバイザーに任命した理由は。
- 答え:
- (塚原氏)彼は第1回セミナーの参加者の1人だった。飛騨市で貿易会社を設立する計画を聞き、市の貿易アドバイザー就任を打診した。
- 全2回のセミナー後の市内企業へのヒアリングの結果、輸出に取り組んでみたいという気持ちはありつつも、ブラックジャック賭け方文化の違いやビジネス慣習の違いに不安を持つ人が多いことが分かった。そこで、市内の企業には、PRイベントのような広報支援よりも、商流構築支援が必要だと考えた。
- 輸出経験がほとんどない市内企業が輸出する際には、多くが商社などを介した間接輸出になるものの、生産量の少ない企業は商社が要求するロットに対応できない可能性があった。解決策として、山川氏の貿易会社であるHida Tradingを地域商社として育成することが、市内企業が小規模でも輸出を開始できる態勢の構築につながると考えた。この事業では、同社の商社としての育成もセットにすることで、将来的には市が関わらない自立したビジネス関係を構築することも目的の1つとしている。
小規模都市の特性生かした支援
- 質問:
- 飛騨市の支援事業の強みは。
- 答え:
- (塚原氏)強みは主に3つある。
- 1つ目は、小都市であることを生かした小回りの利いた支援事業であることだ。新型コロナ禍で企業訪問を重ねて市内企業の商品を熟知し、代理営業のスタイルを確立した。また、企業独自の営業活動を支援するためのブラックジャック賭け方渡航補助金や、商談相手のニーズに応えるための商品開発補助金など、企業へのヒアリングを継続しながら、支援メニューを随時追加している。補助金事業の存在は、ブラックジャック賭け方事業に取り組みたくても金銭的理由で諦める事業者の背中を押すものとなる。
- 2つ目は、台湾南部の新港郷と友好都市関係を結んでいることだ。友好都市関係にとどまらず、商業交流も同時に進めることで合意し、2023年に貿易を開始した。台湾では商談時に同地への輸出実績の有無を聞かれる。台湾への輸出実績が1度でもあると、バイヤーが購入に至るための安心材料になる。新港郷は最も栄えている台北市から地理的に離れている上、輸出規模も小さく、先行の既存輸出企業との競合になることは極めて少ない。
- 3つ目は、飛騨市長の都竹淳也氏がブラックジャック賭け方駐在経験を持っていることだ。ブラックジャック賭け方ビジネスの難しさを知っているからこそ、ブラックジャック賭け方展開支援事業が一筋縄ではいかないことも理解している。トップの理解があるからこそ、自由な発想による支援事業が実現している。
最終的目標は長期的な市の発展
- 質問:
- 飛騨市の輸出支援事業の今後の展開は。
- 答え:
- (塚原氏)市内の輸出企業の裾野を広げ、長期的な市の発展に貢献したい。
- 現在は限られた企業のみが輸出している状態であるため、今後新たに取り組む企業を増やす必要がある。そのためには、市内企業のブラックジャック賭け方に対する心理的障壁を可能な限り取り除かなければならない。ブラックジャック賭け方を知らない人々が輸出をためらう一方で、輸出に成功している市内企業は、経営者にブラックジャック賭け方渡航経験があることが多い。ブラックジャック賭け方との接点がないために敬遠しているのであれば、企業経営者がブラックジャック賭け方に行く機会を設ける支援が必要だと考える。また、将来の経営者層の育成を目的に、若いうちからブラックジャック賭け方文化に触れる機会を作っておくことも重要だ。「飛騨市でブラックジャック賭け方に関わる仕事ができる」という認識を醸成することが、長期的視点での市の発展につながると考えている。
Hida Tradingの山川氏にインタビューした内容は、次のとおり。
地元貢献のため地域商社設立
- 質問:
- 飛騨市のアドバイザーになるまでの経歴は。
- 答え:
- (山川氏)もともとは日本の機械関連メーカーに勤務していたが、地元の飛騨市の産業振興に貢献したいと考え、Hida Tradingを2023年8月に設立した。起業前から飛騨市役所の塚原氏からアドバイザーになることを提案されていたため、就任と会社設立はほぼ同時期だった。従業員は自分と妻の2人。その他、台湾に4人のビジネスパートナーを持っている。
- 質問:
- ブラックジャック賭け方営業と伴走型支援の活動内容は。
- 答え:
- (山川氏)「ブラックジャック賭け方営業」では、自身が持っているネットワークの中からバイヤーを選定して売り込む。商談相手からは、全ての売り込み件数に対し、「社交辞令」も含めて20%ほどの確率で良い反応を得られている。その中で見積書の請求を受ける件数は全体の5%ほど、成約は2~3%ほどという印象を持っている。ただし、成約しなくても、新しい取引先候補を紹介してもらえるのが中華圏のいいところだ。商談の結果、取引が難しい場合でも、「知り合いの企業が関心を持つかもしれない」という紹介から、新しい商談先が決まることもある。
- 「伴走型支援」では、営業で得た情報を商品改良などのために、メーカー担当者にフィードバックしている。バイヤーの反応をありのまま伝えるときもあれば、伝わりやすいよう工夫することもある。例えば、現地の味の好みを説明するときに、塩味の多い料理を好む飛騨地方の人々の嗜好(しこう)を例に出すことで、現地の好みに合わせる重要性が理解してもらいやすくなる。
輸出成功のカギは徹底的なマーケットインの考え方
- 質問:
- 輸出開始に当たって必要な準備は。
- 答え:
- (山川氏)まずは目標の設定だ。支援の前に各事業者と簡単な目標設定面談をしている。数値目標などの堅苦しいものではなく、「輸出を通してこんな未来にしたい」といった定性的なものだ。まずは理想を思い描いて、輸出をポジティブに捉えてもらうことを意識している。
- また、輸出をするためのマインドセットも重要だ。自社商品に強いこだわりを持ち、商品の改変を嫌がる事業者もいるが、それでは輸出の成功には近づけない。バイヤーの改善提案を受け入れられる企業の方が、成果が出やすい。
- 質問:
- ブラックジャック賭け方営業時に意識しているポイントは。
- 答え:
- (山川氏)まずは現地に合わせていくこと。つまりは、マーケットインの考え方だ。味や色、デザインなど、輸出相手の文化・習慣になじむ商品の方が受け入れられやすいことは今までの経験からも明らかだ。
- 2つ目に、商談は相手の顔が見られるように、直接訪問を原則としていること。特に中華圏でのビジネスで顔を合わせることは非常に重要だ。これは、シンガポールやマレーシアなど東南アジアの華僑にも共通すると考える。
- 3つ目に、商談は1度で終わらせず、回数を重ねること。当社では重要なバイヤーは2~3カ月に1度、定期的に訪問している。持っていく商品は毎回大きくは変わらないが、前回の商談のフォローアップや、商品に対する改善要求のヒアリングを実施している。
-
山川氏(同氏提供)
台湾での商談の様子(山川氏提供) - 質問:
- これから輸出に取り組む事業者に伝えたいことは。
- 答え:
- (山川氏)まずは、根気よく取り組んでほしい。輸出は一朝一夕に成功するものではないため、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら成長していくしかない。
- また、輸出は目的ではなく、売り上げ拡大の手段だ。その先でどのようなビジネスを実現したいかのビジョンを持ってほしい。
麺の清水屋の清水氏にインタビューした内容は、次のとおり。
- 質問:
- 会社概要は。
- 答え:
- (清水氏)昭和23年創業の生中華麺専門の製麺会社で、現在4代目だ。スーパーや土産物屋への販売を主な販路とし、近隣の高山市や下呂市に「豆天狗」という高山ラーメンの店を展開している。
ブラックジャック賭け方バイヤーの反応からブラックジャック賭け方展開を決意
- 質問:
- ブラックジャック賭け方展開はいつから始めたのか。
- 答え:
- (清水氏)以前は国内市場のみで展開していたが、国内の大型食品展示会に出展した際、ブラックジャック賭け方バイヤーから生麺に関心を持ってもらえたことで、ブラックジャック賭け方市場への可能性を感じた。しかし、賞味期限が短すぎて、取引には至らなかったため、バイヤーから要求された、常温で180日以上の賞味期限を持つ生麺の開発を開始した。約5年間の研究・開発期間を経て、ブラックジャック賭け方販売用の長期保存麺が完成し、2023年から輸出を本格的に始めた。
- 質問:
- 飛騨市の支援を受け始めたきっかけは。
- 答え:
- (清水氏)輸出用の商品開発中に飛騨市からブラックジャック賭け方輸出支援の話があった。初めての輸出に取り組む中、市の支援が受けられることが心強かった。また、商品開発のために資金的な援助を受けられたことが商品開発の後押しとなった。今考えると、全て自己資金では達成できなかったと思う。
支援受けながらブラックジャック賭け方展開事業を加速
- 質問:
- 現在、飛騨市からどのような支援を受けているのか。
- 答え:
- (清水氏)開発した長期保存麺の営業をしてもらっているほか、市の支援とは別に、山川氏に展示会への同行などを依頼している。市のブラックジャック賭け方渡航補助金を利用して、塚原氏、山川氏の台湾での営業活動に同行したこともある。これが初めてのビジネスブラックジャック賭け方渡航となった。現地視察の際に訪問したスーパーで、生麺の即席袋麺が少ない状況を目の当たりにし、自社商品の売り込み機会があるという確信を持つことができた。
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清水社長と塚原氏(ジェトロ撮影) - 質問:
- 輸出事業の展望は。
- 答え:
- (清水氏)現在の売り上げに占める輸出比率は0.3%ほどだ。2024年に輸出を開始したばかりで、まだ黎明期ではあるが、バイヤーからの反応は良く、手応えを感じている。
- 現在、輸出担当者は自分ひとりのため、間接輸出のみになっているが、将来的には、直接輸出にも取り組みながら、売り上げを拡大したい。まずは、年間の輸出額1億円の達成が直近の目標だ。将来的には、生麺輸出の第一人者になりたい。
迅速な意思決定による柔軟な市政
飛騨市の輸出支援事業で成功のカギとなっているのは、市役所の各課担当者と市長が直接議論できるという距離の近さだ。市では、課長や部長への相談が完了していれば、市長に事業提案ができるため、事業立案の段階から市長の意見を取り入れられる。塚原氏はこれが飛騨市役所の運営体制の長所だという。小規模自治体という特性を最大限に生かして、迅速かつ柔軟な意思決定を可能にしていることで、市民の意見がタイムリーに政策に反映されやすい。これによって実現しているものの1つが、ブラックジャック賭け方展開支援の補助金制度で、これは支援企業がブラックジャック賭け方営業を踏まえたアドバイスをすぐに実践することを可能にする。
また、市内の企業から見て支援者にあたる塚原氏、山川氏が共通のビジョンを持って活動していることも、支援の方向性がブレない重要な点だ。インタビューで話を聞く中でも、市内の企業が抱える課題に対してどのようなアプローチで解決すべきか、その先にどのような未来をつくりたいかが2人の間で一致していることを感じた。飛騨市のブラックジャック賭け方展開支援事業は、ジェトロなど他機関による多様な輸出支援につなげるための最初の一歩ともなっている。

- 執筆者紹介
- ジェトロ岐阜
向野 文乃(むかいの あやの) - 2020年、ジェトロ入構。ブラックジャック賭け方調査部中国北アジア課(2020~2022年)を経て、2022年10月から現職。