豊田通商「日本式ものづくり学校」で第2期生が卒業(インド)
新たにイノベーション分野におけるSU企業との連携事業も

2023年1月23日

豊田通商インディアの子会社TECHNOTRENDS AUTOPARK(TAP)が、グジャラート州マンダル日本企業専用工業団地内に展開しているプラグアンドプレイ型工場に、人材育成機関「TOYOTA TSUSHO NTTF TRAINING CENTRE(TNTC)」(注)を開校して4年が経過した。2022年11月26日に、第2期生の卒業式が開催された。同時に、4年間にわたる同校の運営を通じて構築してきた教育機関との連携枠の中から、今回、新たにイノベーション分野におけるスタートアップ(SU)企業発掘に向けた、グジャラート州立工科大学(GTU)との連携を開始した。

ブラック ジャック サイト
TNTCの第2期卒業生とスタッフたち(ジェトロ撮影)

日系企業が集積するマンダルブラック ジャック サイト周辺の「ものづくり人材」の不足を背景に、TNTCは優秀な産業人材の育成を目指して運営されている。TNTCの第2期生は、当初21人からスタートしたが、3年間のプログラムを経てTNTCから巣立った卒業生は13人。全員が就職を希望していたが、最終的には10人の日系企業への就職が決定した。就職先未定の卒業生2人に関しては、ディプロマプログラムでのOJT受け入れ企業からの採用の意向があったが、配属先の条件などで折り合いがつかず、残念ながら合意に至らなかった。残りの1人については、別の就職先を検討中である。TNTCは2018年以降、毎年1クラスを開講し、これまでに累計110人が延べ11企業でOJTを経験し、研鑽(けんさん)を積んでいる。2022年9月には、新たに第5期生のクラスが開講している。

今回の卒業式に参列した、インド企業家開発センター(CED)のプラサド博士は、来賓祝辞の中で「TNTCは開設当時に自分が想像していたよりもさらに充実した教育機関になり、ブラック ジャック サイトの若者の教育、就職に大きく貢献している。このような教育機関が他のブラック ジャック サイトにも設立されるべきだ」と述べた。また、学生に向けて「沈黙の重要性」について語り、「今後は技能のみではなく、社会人として、大人としての態度も評価される。困難な状況にあっても短絡に走らず、沈黙をもって沈着冷静な態度で対応するように」と戒めた。

一方、卒業生代表の1人は「TNTCでの3年間を経て人生が変わった。入学時には日系企業に関する知識はもちろん、英語力も十分ではなかったが、3年間の研修課程で技能や行動力が身に付いた。与えられた機会に感謝し、TNTCの卒業生であることを自覚して今後の人生を歩んでいく」と述べた。

TNTC を運営する尾崎真二郎TAP社長は「各家庭の教育や就業に対する考え方、ブラック ジャック サイトの保守的な傾向から、同プログラムに参加できる環境にある候補者が少なく、年々学生の確保が困難になっている状況は変わらない。また、入学後のドロップアウトを防ぐ対策も大きな重要課題になっている」と述べた。

特にドロップアウトを減らすための対策として、(1)学生募集の際には、候補生の家庭環境を知るために農村に足を運び、本人や家族との面談を通じて、学生のポテンシャルの見極めを十分に行う、(2)企業に就職する前と後で働き方や就業環境に関するイメージギャップが極力生じないように配慮すべきと考え、入学直後の早い段階で、研修生受け入れ企業において、あらかじめ1週間のOJT研修を体験してもらう、などとしており、優秀な人材の確保に向けた細やかな対応がうかがえた。

また、今回、TNTCの活動の積み重ねの中から、提携機関との間で新たな動きも生れてきている。第2期生の卒業式において、豊田通商インディアはGTUとの間で覚書を締結した。同社は、カーボンニュートラル、環境リサイクル、CASE、DXの4分野におけるビジネスイノベーションを目指しており、これを実現するために新たにGTUと提携することとなった。GTU関連のスタートアップ企業と協力し、前述の4分野において新技術の評価や概念実証(POC)などを行う。様々なビジネスチャンスを創出し、新ビジネスの確立を目指すとしている。


豊田通商インディアはGTUとスタートアップ企業連携で覚書を締結(ジェトロ撮影)

注:
TNTCは2018年9月に開校、経済産業省より「日本式ものづくり学校」(JIM:Japan-India Institute for Manufacturing)の認定を受けている。3年制のLearn & Earnプログラムのカリキュラムを通じて、インドの若者に日本式の労働倫理や技能を直接指導し、製造現場の中核人材を育成すべく運営。2020年8月からは、GTUと提携し、カリキュラムを履修した卒業生には同大学からディプロマが授与されている。
執筆者紹介
ジェトロ・アーメダバード事務所長
古川 毅彦(ふるかわ たけひこ)
1991年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ北九州、大阪本部、ニューデリー事務所、ジャカルタ事務所、ムンバイ事務所長などを経て、2020年12月からジェトロ・アーメダバード事務所長。