米半導体産業協会、CHIPSプラス法により2,000億ドルの民間投資が発表済みと集計
(米国)
ニューヨーク発
2022年12月15日
米国の半導体産業協会(SIA)は12月14日、2022年8月に成立したCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法、2022年8月10日記事参照)の効果で、既に約2,000億ドルの民間投資が発表されているとの集計結果を公表した。
CHIPSプラス法は、2021年度国防授権法に含まれるかたちで2021年1月に成立した半導体産業向けインセンティブ制度のCHIPS(注)に、5年で527億ドルの予算を充当した法律だ。CHIPSの制度自体は、2020年春に連邦議会から発表されていたため、SIAは2020年5月から2022年12月にかけて発表された投資計画を集計した。投資計画は40以上で、16州にまたがり、4万人の新規雇用を創出する見込みとなっている。
同法の予算面では、390億ドルは国内半導体関連投資を行う企業への資金援助に充てられ、管轄省庁の商務省は2023年2月までに申請の受け付けを開始する予定だ(2022年9月8日記事参照)。そのため、資金援助は正式に公表されていないものの、援助を獲得できると期待して既に建設が進められており、2024年末までに稼働予定のところもあるという。これらは早い段階で発表された、台湾積体電路製造(TSMC、アリゾナ州、2022年12月12日記事参照)、インテル(オハイオ州、2022年9月14日記事参照)、サムスン(テキサス州)の新工場などを指しているとみられる。
米国でこれほど半導体産業の振興が進む背景には、新型コロナウイルスの感染拡大などを受け、世界レベルで半導体供給に混乱が生じたことが大きく影響している。特に自動車産業への影響が大きく、完成車メーカーによってはいまだに生産状況が完全に回復していない。さらに、米国の官民が口をそろえて指摘するのが、半導体製造能力に占める米国のシェアが著しく低下しているという事実だ。SIAのデータによると、米国のシェアは1990年に37%だったが、2021年時点で12%まで低下している。こうした危機感が、米国の半導体投資ブームを喚起しているとみられる。米国半導体大手インテルのパトリック・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は、2022年10月に行われたウォールストリート・ジャーナル紙のインタビューで、「CHIPSプラス法は戦後の産業政策において、最も重要な法律だ」と評価している。同氏は、世界の半導体製造能力に占める米欧とアジアのシェアの比が1990年に80対20だったところ、今日では逆転しているという問題意識を提起し、10年後までに50対50(注2)に戻せたら大きな成果となる、との考えを示している。
(注1)Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors(半導体生産の支援インセンティブの創設)の頭文字を取った略称。
(注2)米欧の内訳については、米国が30、欧州が20。
(磯部真一)
(米国)
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