バイデン米大統領、半導体補助金法案に署名、中国との技術競争に本腰
(米国、中国)
ニューヨーク発
2022年08月10日
米国のジョー・バイデン大統領は8月9日、連邦議会が可決した「CHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法案(H.R.4346)」に署名した。議会では、7月末に上院と下院で可決されていた(関連ブラック ジャック web)。
成立したCHIPSプラス法は、中国との技術競争に備えた総額約2,800億ドルの法律で、産業界への資金援助を伴う半導体インセンティブ制度CHIPS(注)に充当する予算として527億ドルが含まれている。2022年1月に半導体製造工場をオハイオ州に新設すると発表したインテルが6月に、法案成立の遅れを理由に工場の起工式を延期させるなど、産業界は法案の早期成立を政権と議会に要請していた(2022年6月24日記事、2022年7月11日記事、2022年7月29日記事参照)。米国半導体産業協会(SIA)は、大統領の署名を受けて「今日は米国のイノベーションと競争力のための大きな飛躍で、半導体における米国のリーダーシップを再び示すための出発点となる」との声明を出した。
バイデン政権は「CHIPSおよび科学法はコストを下げ、雇用を創出し、サプライチェーンを強化し、中国に対抗する」と題するファクトシートを発表し、法案の可決を経て、早くも国内の半導体企業による投資の発表が相次いでいることを強調した。例として、マイクロンが今後10年で半導体メモリチップの製造拡大のために400億ドルの投資を発表したことや、クアルコムとグローバルファウンドリーズが新たなパートナーシップを結び、半導体チップの製造施設に42億ドルの拡張投資を行うと発表したことが挙げられている。ファクトシートでは、今回の法律が、連邦資金の受給者に対して中国やその他の懸念国で工場を建設しないよう強力なガードレールを設けている点にも触れられている。バイデン大統領は署名式の演説で、中国の習近平国家主席と以前に対談した際、米国を一言で表すと何かと問われた際に「可能性だ」と言明した経緯を披露した。世界は政治、経済、技術の面で分岐点にあり、民主主義が人々に結果をもたらせるのかを問われているとした上で、「米国は今日、結果をもたらした」と述べ、法案成立の成果を強調した。
(注)Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors(半導体生産の支援インセンティブの創設)の頭文字を取った略称。
(磯部真一)
(米国、中国)
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